創業100年の老舗に学ぶAI活用の極意 リアル店舗の経営をコグニティブで科学する ~伊勢の老舗店「ゑびや」の挑戦~

画像解析で売上増の本当の理由が見える意義


大きな効果を出したゑびやの店舗ディスプレイ、サイダータワー

 同社では、「サイダータワー」を店頭ディスプレイとして展開し、想定以上の売上増進を達成した。そのときの画像を解析した結果、サイダータワーの施策に反応し、入店した多くが男性客で、そうした男性客が複数の商品を購入したことで、売上が大きく押し上げられたことが判明したという。

 「そもそも、この店頭ディスプレイは特に男性客を狙ったものではありません。ですから、画像解析データがなければ施策成功の本当の理由がわからず、『要は、夏場で暑かったせいだろう』といった、曖昧な結論で物事をかたづけてしまう可能性もありました。ですが、今なら明確な根拠を持って売上増の理由が説明できます。販促施策の精度を高めるうえで、その意義は非常に大きいのです」(小田島氏)。

 一方、商店内の定点カメラは、店内の中央棚の商品を眺める顧客の表情をとらえることもできる。「ですから、中央棚にどんな商品を置くと、顧客の笑顔度・幸福度が最も高くなるかを計測し、配置する商品を最適化して売上の最大化につなげていくことが可能ですし、新開発の商品や企画商品を中央棚に配置し、顧客の表情から商品の可能性を計測するというテストマーケティング的な展開も構想しています」と、小田島氏は言う。

 さらに同氏は、和食店の店外カメラで通行者数を測定し、通行者数に応じて出すメニューを変える効果も検証している。

 「仮に、通行者数が1万人のときに、Aメニューを出すと80万円の売上で、より単価の高いBメニューを出した場合には100万円を売り上げたとしても、通行者数が1万3,000人になると、回転率の高いAメニューのほうが、結果的に売上が大きくなる可能性があります。画像解析データと売上データの照合で、その辺りの相関関係を突き止めれば、メニューの最適化が図れると考えています」

 小田島氏によると、ゑびやでは現在、画像解析のデータを含めて1日約125項目のデータを取っているという。

 「今後も、それらデータの相関分析を徹底的に行っていくつもりです。なかでも画像解析データと他データとの相関分析は、来客予測式の精度を高めるカギと見なしています」と、小田島氏は付け加える。


※クリックすると拡大画像が見られます

老舗ベンチャーとしてデータ活用の道を突き進む

 来客予測式の話からも分かるとおり、ゑびやでは、画像解析のシステムを導入する以前から、データ活用による経営判断の精緻化や業務生産性の向上に取り組み、ITによる業務プロセスの効率化も推し進めてきた。そのため、社内にはR言語の使い手や、Azure上で提供されているBIツール「Power BI」の使い手が複数存在し、「アルバイト時代から、Power BIでデータを分析させたり、口コミ系サイトからデータを収集させたりして、データ勘を鍛え、社員にした人間もいます」(小田島氏)。

 こうしたデータ活用・IT活用が、結果として生産性の向上につながり、「5年前から当社の従業員数に変化はありませんが、売上を4倍、利益率を10倍に膨らませています」と、小田島氏は言う。しかも、2013年以降は完全週休2日制を敷き、就労時間も午前9:00~午後5時45の残業なし。特別休暇は最大15日で有給消化率も80%と、“超”が付く“ホワイト企業”ぶりを誇る。もちろん平均給与も5年前から20%以上アップさせている。

 そんな数字を示しながら、小田島氏は以下のように話を締めくくる。

 「当社は老舗ですが、組織の規模も、精神もベンチャーそのものです。そんな“老舗ベンチャー”として、今後もデータ活用や革新ITの活用を軸に新しいことにチャレンジし、改革を推し進めていくつもりです。また、アロバビューコーロの例でも分かるとおり、今日の技術/サービスを使えば、これまで、中小の会社ではとても実現できなかったような仕組みが手に入ります。ですから、他の会社にも、どんどんこうしたITを使って変革を推し進めていただきたいですし、その際に私たちの取り組みが少しでも参考になれば嬉しい限りです」


Cognitive Servicesを利用したアロバビューコーロが、ゑびやの“挑戦”を支える
提供:日本マイクロソフト株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2018年6月30日

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