一般ユーザーが自由に投稿できるUGC(User Generated Contents)は、コンテンツの良し悪しを主体的に判断するディレクターやプロデュサーがいない。それゆえに、UGCコンテンツは質が悪いと言われてきた。ところが、今回のDigital Hollywood Fall 2008には、新たなコンテンツ発掘のプラットフォームとして、UGCの考え方を取り入れ成功しているプロデューサーや企業が集まっていた。
たとえば、YouTube上で1500万回以上も視聴された「lonelygirl15」を制作、その後イギリスのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「bebo」でも「Kate Modern」をヒットさせたグレッグ・グットフライド氏や、タイム・ワーナー傘下のケーブルテレビ局Home Box Office(HBO)から出資を受けた「Funny or Die」である。彼らの共通点は、既存の映像ビジネスと同じ広告手法や、ビジネス人脈を利用し、成功している点にある。そこで、UGCビジネスの成功モデルを「誰が主体性を持って成功に導いたのか」という点に注目して分類、整理した。
まず、クリエイターが自己表現として、3分弱の短尺映像を制作したタイプが挙げられる。グッドフライド氏は、「lonelygirl15の成功は、テクノロジー、シナリオ、そしてタイミング」と話し、成功の要因は複雑だと話す。
グッドフライト氏は映像制作会社「EQAL」を設立し、MySpaceをはじめとするソーシャルネットワーキングサービス(SNS)へのライセンス、フォーマット販売など、既存の映像ビジネスの枠組を使ってビジネスを拡大している。「テレビドラマ化はしない。作品がもつインターネット文化の雰囲気を壊したくない。LG15 Universeというコンセプトで番組ファンのコミュニティもオンライン上に形成している」と語り、インターネット上での映像ビジネスに特化する考えを示している。
次に、ハリウッドの著名人が、ビジネスとしてインターネット動画に進出するタイプ。著名なコメディアンであるウィル・フェレル氏とベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタルが設立したUGC配信サイトのFunny or Dieは、コメディに特化した点が特徴だ。CEOのディック・グローバー氏は、ウォルト・ディズニーのスポーツチャンネル「ESPN」や全米ストックカーレース協会(NASCAR)などで勤務した経験を持ち、メディア業界では著名な人物だ。同社の経営陣も既存メディアの出身者が多い。こうした人脈をバックに、Funny or DieはHBOからも出資を受けた。
グローバー氏は、「HBOからの出資は、コンテンツポートフォリオを充実させるという話ではない。純粋に収益をあげる話だ」と語る。Funny or Dieはこの夏、パリス・ヒルトンの大統領戦を揶揄した動画で800万以上の視聴を集め注目されたほか、ハリウッド女優であるナタリー・ポートマンのコミカルな動画などを制作した。テレビとも、他UGCサイトとも差別化できるコンテンツを制作、配信しているのだ。Funny or Dieはインターネットで収益をあげるために、ハリウッドのコンテンツ制作の経験を生かしている。
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