それは2002年の米SF映画「マイノリティ・リポート」と全く同じではなかったが、Bill Gates氏が米国時間5月14日にMicrosoftのCEO Summitで実演したテクノロジデモは、今から数年後にはキーボードとマウスの時代の終焉を予告する前触れとして記憶されているかもしれない。それは今日のことではないし、たぶん明日のことでもない。しかし、近い将来のことである(ここで英国のチャーチル元首相の発言を引用すると「今は終わりではない。これは終わりの始まりでもない。しかし、ひょっとすると始まりの終わりかもしれない」)
Gates氏が「TouchWall」という名称の4フィート(約1.2m)×6フィート(約1.8m)のプロトタイプを実演した様子は、「マイノリティ・リポート」でTom Cruise氏が簡単な身ぶりで3Dスクリーンを操作しながらデータを自由自在に操って見せた未来的なシーンとはほとんど似ていなかった。Microsoftの大物が集まるこの恒例の秘密会議にGates氏が司会として登場するのはこれが最後になる可能性が高いが、Gates氏はこのデモを利用してある予測を提示した。
Gates氏は、将来、すべての壁面に「安価なスクリーンディスプレイ機能やソフトウェアが組み込まれるようになり、その壁面はあなたがしていることをずっと見ており、それによって完全な対話性が実現される」と述べた。
筆者は1985年以来、Gates氏がこのような発表をするのを見てきたが、同氏の予測は話半分に聞いておくのが賢明である。Microsoftに関しては、ベイパーウェアという概念と全く無縁ではない。それでも筆者は、Microsoftが「Windows 7」で何を開発しているかを念頭にこのテーマを考えると、このデモは興味深いと思った。実際にGates氏は数カ月前、「Windows Vista」の後継OSでは将来的にタッチ式のジェスチャー認識、音声認識をサポートするかもしれないとほのめかしていた。
「われわれはハードウェアメーカーと緊密に協力しているので、特定のフォームファクタではタッチ操作が非常に早く主流になる可能性が高い」とGates氏は筆者の同僚であるIna Fried氏に語った。
筆者はこのアイデアに夢中になってしまう前に、まずMicrosoftの製品ロードマップがどのように進化していくのかをじっくりと見守りたいと思う。計画されていたOSの機能がさまざまな理由のために最終的な製品に組み込まれないことはよくある。一方、Gates氏自身はこれこそが機械と人間の関係を示す将来の方向性であると自信を持っているようだ。Gates氏は入念に練習を繰り返したTouchWallの売り口上で、最終的には家庭とオフィスの壁面がコンピュータになるときっぱりとした口調で予測した。
もちろん、そのためには投影技術とともにタッチ操作のパターンを感知する多数の赤外線カメラが必要になるだろう。そして、コストもかさむはずだ(近い将来には、タッチ感応式の壁面が金持ちのおもちゃになっているだろう。2007年のクリスマスに高級百貨店チェーンNeiman MarcusはJeff Han氏が開発した「Interactive Touch Media Wall」を10万ドルで売り出した)
一方、この種のテクノロジは時々思い出したようにメインストリームへと移行している。Vistaではタッチ感応機能をある程度サポートしており、数百万人いる「iPhone」の所有者はマルチタッチディスプレイを当然のものとして受け止めている。実を言うと、われわれはこれまで最も重要なものと考えてきたキーボードやマウスといった入力デバイスの枠を飛び越えようとしているのだ。マウスは誕生してから40年以上になるし、QWERTY配列のキーボードのアイデアははるか昔の南北戦争時代にC. L. Sholes氏によって考案された。読者はどうかわからないが、筆者自身は変化への準備ができている。
著者紹介
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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