KDDIの一般アプリ解禁がもたらすもの

 10月10日、KDDIからauの携帯電話端末上でJavaアプリをオープンアプリとして利用できるようにするという、衝撃的な発表があった。このJava復活の発表の意味をケータイアプリ事業者の立場から詳しく探ってみる。

過去のKDDI Java(Phase3)を振り返る

 KDDI向けのケータイアプリには2つの仕様がある。EZアプリ(BREW)とEZアプリ(Java)である。ただし、EZアプリ(Java)の対応端末は、2004年6月のA5407CAを最後に発売されていない。CDMA 1X WINのW11シリーズにも搭載された、KDDI Javaの最後の規格であるPhase3は、プログラムサイズ150Kバイト、データ保存サイズ210Kバイト、QVGA対応となっており、現行機種であるNTTドコモの902iシリーズ、ソフトバンクモバイルの3Gシリーズと並び、今でもjigブラウザの最新版が使えるほどの性能を持っていた。

 KDDIがBREWをサポートすると発表したとき、Javaと対立するものとして受け取れるような記事が散見されたが、本来BREWとJavaは、OSとアプリケーションプラットフォームという関係にあり、比べる次元が違う話である。BREWと比べられるべきものは、Symbian OS、Linuxなどであり、OS上で動作するアプリケーションであるJavaではない。KDDIはBREW採用の理由として、自由度の高さ、処理の高速性を挙げたが、Javaを打ち切る理由は明確には示されなかった。

Javaと共に失ったもの

 BREWアプリは、PtoPに対応し、ネットワークをプロトコルレベルで制御できるほか、電話帳などの個人情報へのアクセスができるなど自由度が高い。ただ自由度が高くなるほどパソコンのようにウイルスなど悪意あるソフトウェアによる被害の可能性が出てくる。このリスクをKDDIは作者とソフトウェアを審査、認定することによって回避した。つまり、一般アプリの廃止である。

 例えば、スパイシーソフトが運営するケータイアプリの配布サイト「アプリ★ゲット」にはドコモ向け一般アプリが4000以上、KDDI向けでも700以上登録されており、一般アプリ作者の意欲は非常に高いが、ほとんどのKDDIの携帯電話ではこれらを動かすことができない。

 auでは一般Javaアプリの代わりにFlash Liteを使った一般アプリが登場している。Flash Liteはプログラムによる制御をサポートしており、機能は限定的ながらゲームを作ることはできる。ただし、描画方法に制限があり、左右カーソルキー・ソフトキーを自由に使えないなど不自由な点が多く、開発環境も有償であることも影響してか、アプリ★ゲットでの登録は400件弱と、Javaほどの広がりには至っていない。また、携帯電話端末へのデータ保存ができないため、ツールアプリケーション、ビジネスアプリケーションの分野での利用はほとんどされておらず、Javaの代用にはなっていないのが現状である。

 我々ケータイアプリ事業者としては、対応機種は広ければ広いほどいい。また、広く一般の利用者を相手にする事業者との提携では、3キャリア対応が必ずといってもいいほど出てくるキーワードになっている。できる限り、速やかに低コストで提供するためには、開発プラットフォームをできるだけ統一したいので、KDDIがJava非対応な点が非常につらかった。また、BREWを使って対応するにも審査完了までの期間が読めず、開発工数も膨らむことがネックになる。このような理由からKDDIに対応できないことで、企画自体が流れてしまうこともあり、Javaの復活を待望していた事業者は多いことだろう。

オープンアプリを検証する

 ついに復活したオープンアプリ(KDDI Java)の仕様を詳しく見てみる。仕様としては、以前のKDDI Javaやソフトバンクモバイルでも採用しているMIDP 2.0準拠で、拡張APIはないシンプルなもの。アプリックス製のJava VMがBREWアプリケーションとしてプリインストールされる。

 プログラムサイズは300Kバイトと余裕があり、ソフトラベルの部分も使った描画も可能で、クリアキーやなんと発信キーまで使えるなど、快適な操作性も十分実現できそうだ。ただし、データ保存領域は32KバイトとPhase3の210Kバイトから大きく減っている。また、ネットワーク通信は送信5Kバイト、受信32Kバイト(ヘッダ含む)と小さく、また必ずユーザーに対し通信確認を行い、1日の総通信量が3Mバイトまでと制限は厳しい。ドコモやソフトバンクモバイルとの比較を下記表に示す。

3キャリアのJavaアプリ比較
KDDI ドコモ ソフトバンクモバイル
オープンアプリ Java Phase3 iアプリ 902i iアプリ 903i S!アプリ 3G
アプリ容量 360Kバイト 332Kバイト 500Kバイト 1024Kバイト 1024Kバイト
プログラム容量 300Kバイト 150Kバイト 100Kバイト 1024Kバイト 1024Kバイト
データ容量 32Kバイト 210Kバイト 400Kバイト 1024Kバイト 512Kバイト
送信容量 5Kバイト 40Kバイト 80Kバイト 80Kバイト※2 300Kバイト※1
受信容量 32Kバイト 96Kバイト※1 150Kバイト 150Kバイト※2 300Kバイト※1
通信量制限 3Mバイト/日 3Mバイト/日 無制限 無制限 無制限
クリアキー ×
発話キー × × × ×
※1 jig.jp調べ
※2 未発表のため推測

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