9年前、私が大手新聞社での安定した職を捨てて、CNETのオンラインニュースサイトの立ち上げに参加したとき、周囲の人間は私を変人扱いした。
彼らに言わせると「リスクが大きく、信頼性もなく、(大手新聞社のように)読者のブランドへの忠誠心もないオンラインニュースサイトに移るなんてどうかしている」というわけだ。しかし、私には問題ないように思われた。15年間、複数の大手新聞社と雑誌社でキャリアを積んだ私は、ニュース好きということもあり、リアルタイムでスクープ記事を書ける絶好の機会を喜んで受け入れた。
MBAならニュースサイトのビジネスモデルはとても簡単だというだろう。特ダネを仕入れて、インターネット上で出来る限り早く公開する。印刷所もなければ、印刷機もない。新聞販売店も必要ない。読者には喜ばれるが、紙媒体メディアには嫌われる。結果として、ニュースサイトという新しい媒体は、「記者発表前の情報」や「解禁日」などによってニュースをコントロールしようとする企業の広報担当者たちにとっても厄介な存在となったが、これについては別の機会に書くことにする。
また、長年ビジネス分野のニュースを扱ってきた私が、インターネットジャーナリズムに関して興味深いと思ったのは、このビジネスの利幅である。都市の大手新聞社はほとんど独占状態で、利幅は通常2桁台の前半である。それに対し、インターネット企業は、少なくとも全盛期にはその倍の利幅を見込んでいた。
インターネット企業の幹部にこの話をすると、彼らの多くは決まって、例の「それがどうした」という目でこちらを見た。彼らは、新聞社や石油会社が達成している程度の利幅などハナから問題にしていなかった。自分たちのほうが、はるかにうまくやれると思っていたのである。
インターネットバブルがはじけ、悲惨な結末になって、若いインターネット起業家のほとんどは現実世界から教訓を学んだ。しかし、一部にはまだ、インクや紙だけでなく、ジャーナリストやブロガーさえも使わずに、コンピュータプログラムだけでニュースを発行するという夢を見ている者もいる。せいぜい頑張ってもらいたい。
その間、多くの大手新聞社の幹部たちは、ほとんどインターネットを無視していた。彼らは、ちょうどW.C. Fieldsが子供を毛嫌いして追い払うように、明らかにインターネットなどなくなってしまえばよいと望んでいたようだ。
自分たちのビジネスの利益を向上させる機会であるにもかかわらず、新聞社のお偉いさんたちは、自分たちのビジネスモデルが食い荒らされることだけを心配していた。多くの企業がインターネットに投資したが、ただしあくまで添え物と捉えていたのは明らかだ(「自分はオンライン版ではなく印刷版のほうで記事を書いています」というのが多くのベテランジャーナリストたちの決まり文句だった)。
ところが、最近になって大手新聞社のネットに対する態度が変わってきた。といっても、積極的ではなく防御的な理由からではあるが。業績が停滞し、株主からの圧力を受けて、彼らはようやくインターネットの世界に飛び込む決心をしたようだ。
最新の例では、New York TimesがPrimediaのオンライン情報ポータルサイト、About.comを4億1000万ドルで買収した。
New York TimesのCEO、Janet Robinsonは「われわれはこの買収に大いに期待している。これで、全国の読者に複数のメディアを介してニュースと情報を配信するという我々の戦略を推し進めることができる」と語った。
さらに、次のような例もある。
今年は、インターネットニュースサイトと従来型の紙媒体の合併が間違いなく激化するだろう。夢見がちなインターネット企業も現実に立ち返り、従来型メディア企業と共存する道を選ぶことになるだろう。だが、大手の従来型メディア企業はもちろん何も気にしていない。彼らにとってはあくまで紙メディアが主体なのだから。
筆者略歴
Jeff Pelline
CNET News.comの編集者で、San Francisco Chronicle紙で11年間働いた
経験を持つ。20年以上も前にTime誌にいたときには、後に有名なベンチャー投資家となったMichael Moritzと一緒に働いたこともある。
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