うつろいやすきものよ、汝の名はブログなり。
昨年夏にGoogleが株式を公開した際、創業者のSergey BrinとLarry Pageは企業の型を打ち破る行動に出て賞賛を浴びた。彼らは、公の文書のなかで「邪悪なことはしない」という誓いを立てて有名になった。しかし、あれから1年も経たないうちにこの賞賛は幻滅へと変わり、同社に批判的な人間たちはGoogleをなんとMicrosoftになぞらえている。
インターネットに生息するオピニオンリーダーらは移り気なことで有名だ。しかし、その点を差し引いても、この評価の変貌ぶりには目を見張るものがある。しかもその原因が、Googleの検索ツールバーに付いているAutoLinkという小さなアイコンだというのだから、ますます驚いてしまう。
いまのところ、この問題をめぐる議論はまったくの平行線をたどっている。Google側はAutoLinkについて、これはあくまでユーザー向けの機能であると主張しているが、しかし批判的な立場の人々はこの言い分を一切受け付けていない。彼らは、Googleが双眼鏡を逆さにして世界を見ている(極めて重大なことを軽く扱い過ぎている)として同社を批判している。AutoLinkはインターネットの透明性を規定している倫理的な原則に違反するというのが彼らの主張だ。そして、どんな議論でもそうだが、どちらの主張にもいくらか真実を突いているところがある。
AutoLink機能はユーザーを他のサイトに誘導するものだが、ただしその際にリンク先のサイトから許可を得ずに勝手にリンクを張ってしまう。そして、書籍のISBNはAmazon.comにリンクし、自動車の車輌登録番号はCarfax.comへのリンクとなり、また荷物の追跡番号には自動的に荷主のサイトへリンクが張られてしまう。
この機能を発表したのが小さな新興企業だったとしたら、これほどの大騒ぎにはならなかっただろう。しかし、Googleは業界で最も注目を集める企業であり、間違いなくインターネット検索分野のリーダーである。だから、その一挙手一投足は大きな意味を持つ。
それに、今回の件はGoogleの自業自得である。Googleの広報部隊は、株式公開前でさえ、BrinとPageを新しいタイプのテクノロジー企業を率いる模範的な存在として必至に売り込んでいた。このために、世間はGoogleが何か特別な存在であるかのような間違ったイメージを持ってしまった(経営の一翼を担うはずのEric Schmidtは、Dick Cheney副大統領と同じくらい影が薄かった)。
ところが現実には、Googleも営利を目的とする公開企業の1社に過ぎない。同社はただ、さまざまなアイデアを試してみて何がうまいくか見極めているだけだ。それを邪悪だと非難するわけにはいかない。それどころか、同社は有料検索市場から広告を分離するという賞賛すべき仕事を成し遂げた。さらに、お偉方は株主の利益を最大化しろという。それは、考え得るすべてのものを金に変えることを意味する。
政治的に正しい言い方をすれば、今回のGoogleのとんでもない行為は有罪であり、糾弾されるべきであるということになる。なかには、 MicrosoftがSmart Tagを導入する計画を断念させられたのに、Googleには自由にやらせるというのは偽善だという人までいる。Smart Tagは、Microsoftが事前に選択したコンテンツにハイパーリンクをつかってユーザーを誘導する技術だった。
AutoLinkはSmart Tagと同じではない。Microsoftはユーザーに選択の余地を与えなかった。MicrosoftはSmart TagをIEに統合する計画だった。つまり、Microsoftはユーザーの画面に表示されるコンテンツをコントロールしようとしていたわけだが、それに対してAutoLinkが作成するリンクは、ユーザーがそれをクリックしなければ何も起こらない。
Googleが自らを高い倫理感を持つ気高い頭脳集団であるというようなことを言ったとき、私はまゆつばものだと感じたものだが、もし最初から彼らの言葉を真に受けていたら、今回の件にももっと腹が立ったかもしれない。現在AutoLinkをめぐって、聖職者の説教みたいなブログがあふれているが、 Googleはまだ略奪的な独占企業に堕したわけではない。誰も、GoogleのツールバーをダウンロードしてAutoLinkを使用することを強制されたわけでないのだ。
実際には、この機能があまりに難解なので、ネタが尽きていた記者たちがそれに飛びつき、どうでもいいような細かいことを突いているだけなのかもしれない。ユーザーは今までどおり、ウェブを検索して好きなコンテンツを見ることができる。無理矢理見たくもないものを見せられるようなことはない。それに、もしかしたら、なかにはAutoLinkを有益な機能だと思っている人もいるかもしれな い。
筆者略歴
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者
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