今年の末までには、インターネットユーザーが非常に簡単にポルノグラフィーを見つけられるようになるかもしれない。.xxxという新しいトップレベルドメインを新設する提案が出されたからだ。
41歳の起業家でフロリダ州ジュピターに住むStuart Lawley は、ネット上の赤線地区を思いがけず勝ち取った人物だ。英国人のLawleyは、自分自身はポルノ販売業者ではないと言っていて、「アダルト業界には、今も昔も、いかなる形のつながりもない」と主張する。
それは真実のようだ。Lawleyは、1990年代にOneview.netという英国のビジネスインターネットプロバイダーを設立し、ドットコムブーム絶頂期の2000年3月に同社を売却した。数カ月前の英ガーディアン紙では、彼の純財産は数千万ドルになると書かれている。
バハマでの引退生活は短く陽気なもので、Lawleyはゴルフややりを使った魚の採り方を覚えた。その後彼はフロリダに移り、再びインターネットに関わりたいという熱意を持つようになった。
「セックスはインターネット上の非常に大きな領域だ」とLawleyは言う。「我々の調査結果には驚かされた。セックス関連コンテンツがいかに流行しているか、またいかに多くのサイト数やユーザー数があるかという実際の統計を、私は信じることが出来なかった」(Lawley)
ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)に先週提出されたLawleyの提案では、.xxxのドメイン名はひとつ70〜75ドルで販売される。児童ポルノは法律で禁止されるが、それ以外の大抵のものが許されるだろう、とLawleyは語っている。「完全に違法である児童ポルノは別として、我々はコンテンツの監視をしたいわけではない」(Lawley)
Lawleyとパートナーたちの仕事は利益を出すことだ。Reuters Business Insightが出した2003年2月報告によれば、セックス関連コンテンツは2001年の全オンラインコンテンツ収入の3分の2に相当し、その後、25億ドル産業へと膨らんだという。Lawleyの試算でも、インターネット上の検索語の25%はセックスに関するもので、百万以上の成人向けドメイン名が存在する。そして彼の結論は、.xxxを切り売りする権利を持つことは、ネット上でのエロチシズムや下品なジョークなどへの顧客の飽くなき欲望を金に変える完璧な手段となるだろうというものだった。
表現の自由を侵す規制が生まれる懸念も
彼が提案する.xxxドメイン名の登録システムは2階層からなる。まず、Lawleyの所有する企業ICM Registryが.xxxの成人向けサイトのマスターデータベース管理の技術的な対応を行う。そのための費用として、同社はドメイン名ごとに60ドルを請求し、おそらくレジストラにもドメイン名ごとに10〜15ドルの利益の上乗せを許す。
第2に、非営利組織であるInternational Foundation For Online Responsibilityが.xxx用のルール作りの責任を負う。この組織には7人の役員がいて、児童擁護の支持者が1名、表現の自由の強力な支持者が1名、また当然のことながらアダルトエンターテインメント業界からも最低1名が含まれる。ICM Registryの社長兼会長として、Lawleyも役員会で1票を投じる。
この組織の設立綱領は、意識的に言論の自由の保護を強調している。その目的は「ネット上のアダルトエンターテインメントの商品およびサービスに同意している成人顧客のプライバシーとセキュリティを保護する」ことだ。また、参考文献として国連の世界人権宣言の「表現の自由の原則」部分を引用している。
.travelや.jobsなどの害のないトップレベルドメイン名と違って、.xxxに関する提案はインターネットを米国の政治の渦中に投げ込むものだ。その政治的懸念はすでに相当高まっており、米連邦通信委員会は最近、「わいせつな」ラジオ放送への罰則を討議している。さらに、米司法長官John Ashcroftも公序良俗に反するウェブサイトの取り締まりが間もなく実施されると発言している。
この問題を言い換えると、.xxxのドメインが立ち上がると、米議会の保守派議員がセックス関連のウェブサイトにこのドメイン名を取得するよう義務づける規制を強く要求し始めるだろうということだ。それは、強硬派のポルノ専門業者にとっては大きな問題ではないかもしれない。彼らはこの名前空間を好ましく思っている。しかし、あからさまな画像を含んでいてもフィルタリングソフトでブロックされたくはないと思っている性教育サイトはどうだろうか。また、トップレスの女性の画像を集めたSalon.comや、米国の企業経営者の価値あるインタビュー記事を発表しているPlayboy.comは、どこに行くべきなのだろうか。
児童保護の観点から.xxxを求める声も
これは、単なる理論上の懸念ではない。Lawleyが社長として参加する前の2000年に、ICM Registryは.xxxのドメイン名管理を申請した。しかし、ICANNはその提案を退けた。
それから議会が関わるようになるまで長くはかからなかった。2001年2月の聴聞会では、Fred Upton下院議員(共和党、ミシガン州選出)が、時にネット上で流布しているあまりにひどく不潔なコンテンツから子供たちを保護する手段として、なぜICANNは.xxxを承認しないのかを知りたいと迫った。また、Joseph Lieberman上院議員(民主党、コネチカット州選出)が、ある連邦委員に対し、.xxxは成人向けサイトのウェブマスターを成人向け映画館の所有者と同じ基準に従わせるために必要だ、と不平を言った。
Lawleyは、自分の名義で「ドメイン名制度の自発的性格を維持するため」に25万ドルの法的防御基金を提供すると約束している。彼はまた、Robert Corn-Revereという、米最高裁判所でPlayboy Entertainment Groupの代理人を務めたことがある、Davis Wright Tremaineでもトップクラスの弁護士を雇い、議会がセックス関連のウェブサイトに対しアドレスの最後に.xxxを貼り付けるよう要求するのを避けられるかどうかを調べさせた。Corn-Revereの結論は、.xxx推進派は、「政府が.xxxドメインへの登録を求めるためのいかなる策を講じても、すべての訴訟に勝てるはずだ」というものだった。
米国自由人権協会(ACLU)のテクノロジー・アンド・リバティ・プログラムのリーダーBarry Steinhardtは、決して楽観的ではない。これまでの米国憲法修正第一条の先例を鑑みると「我々が勝てるかどうか、あまり確信は持てない」とSteinhardtは言う。
しかし、この提案に関するACLUの本当の懸念は海外にある。「必ずやウェブサイトを.xxx(トップレベルドメイン)に押し込もうとする国や、このドメインに属する彼らが有害と見るウェブサイトをブロックしようとする国が世界中に存在する」とSteinhardtは言った。「このドメイン名空間を作った人たちがこの問題を十分考慮したとは思えない。このドメインは、インターネット向けの世界規模の赤線地区となり、表現の自由の権利を有し、大衆と接点を持てるはずの発言者を押し込む場所となるだろう」(Steinhardt)
ひょっとしたら、米国の政治家はこの4年間で成熟したかもしれない。裁判所も正しいことをする、つまり憲法修正第一条が保障する表現の自由を支持すると信じてもよいかもしれない。しかし、ほんの3週間前に、下院が「不敬な」放送番組への罰則を18対1の比率で支持したことを考えると、本来的には自発的なものだった.xxx地区が一方通行路と化す可能性はある。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス