先日、旧友からメールが届いた。シリコンバレーで働くと言って彼がコロラドを離れたのは3年前のことだ。
シリコンバレーで最初に勤めた会社は1年ほど前に解雇されたものの、彼は次の仕事を見つけたと言っていた。それなのに、コロラドに戻ることを考えていると言う。今の会社がソフトウェア開発の仕事をインドに、ハードウェアの生産を中国に委託するようになったからだ。
金を稼いでポルシェを買うという彼の夢はどこに消えたのか。彼は言われた通りの道を歩んできたはずだ。「高校を卒業したら大学に進み、コンピュータの学位を取りなさい」――われわれはそう言われて育った。少なくとも20世紀の最後の20年間は、それが必勝の人生計画だったはずだ。
しかし、このレールはもはや成功を保証してはくれない。米国電子工業会(AEA)の調べによると、米国のハイテク業界では2002年に54万人が解雇されている。ソフトウェア市場でもはじめて雇用が減少し、14万6000人が職を失った。2002年はコロラド州だけで2万7000人のハイテク労働者が職を失い、私の暮らすエルパソ郡のレイオフ人口は約3000人にのぼる。
この3000人の平均年収は6万9277ドルだった。つまり、1年で2億700万ドル以上の所得が失われたことになる。人口42万人の地元経済が受けた打撃は大きい。
IT関連の仕事が減少した背景にはさまざまな要因がある。
第1の要因は、米国政府が自由貿易を推進したことだ。自由貿易は市場の開放と、資本、モノ、サービスの自由な移動を意味する。自由貿易のもとで国家の行動は改善され、グローバル経済における米国の利益は促進される。消費者と貿易にとってはいい話だが、国内の産業基盤がこうむる損害は壊滅的だ。
第2の要因は、深刻な景気後退である。この痛みは私にとっても人ごとではない。ここになってようやく米国経済にも復活の兆しが見えてきた。
第3の要因は、Adam Smithの言う「見えざる手」、つまり市場原理だ。市場は高値を嫌う。米国でハイテク労働者の賃金水準が高騰した結果、企業は対抗策として外国人労働者を雇用するようになった。そして最近では賃金水準の低い国々にホワイトカラーの仕事が輸出されるようになっている。通信費が安くなり、大規模なインフラを整備しなくても知識労働が可能になったことで、10年前には考えられないほど安価なコストで仕事ができるようになった。
1990年代は労働者のITスキルに高い値がついた。私のチームにも時給35ドルで働く20歳の若者がいた。大学には1年しか通っておらず、何の資格や経験も持っていなかったが、超過勤務手当を含めると年収は8万ドルを超えた。ランチに出たら2時間は帰ってこない者、「朝は9時過ぎでお願いします」と言う者もごろごろいた。当然、経営陣はコスト削減の方法を模索しはじめ、オフショア企業は魅力的なソリューションを差し出した。
もっとも、これは米国にとってはじめての経験ではない。鉄鋼、自動車、繊維、化学といった産業ではすでにグローバル化が進んでいる。こうした産業では復活を遂げた企業もあれば、低迷を続けている企業もある。ホンダはオハイオで、日産はテネシーで、BMWはサウスカロライナで自動車を生産している。米国の賃金水準が高すぎることを問題視する意見もあるが、最近は米国内での労働力も安価で柔軟になっており、米国産業の高い競争力に支えられ、仕事は徐々に増えはじめている。
いずれ企業はコスト分析を迫られることになるだろう。しかし現状では、ハイテク関連の仕事は賃金水準の低い国々に流出している。コスト削減という大命題の前では、質、経験、柔軟性、コミュニケーション能力といった資質は後回しにならざるをえない。
IT業界を離れる者もいるだろう。残るとしても、ほとんどの人は今とは違う仕事につくことになるはずだ。未来を見据え、変化に適応していく者だけが成功を手にする。生き残るための方法を見つけよう。時代が何を求めているかを見極めるのだ。あるいは、もっと積極的な道を選んでもいい。そう、自分の手でキャリアと人生を切り開くのだ。
チームワークを学ぼう。企業は対話のできる人間、他人の気持ちを理解できる人間、コミュニケーション能力を備えた人間を求めている。新しいスキルを学び、積極的にトレーニングに参加すること。ITの成長分野に飛び込むこと。必要ならば、別の都市に移住してもよい。自分の価値を実証し、プロジェクトの成果を証明するのだ。常に誰かが自分の仕事を狙っていることを忘れてはならない。ハングリー精神を貫こう。
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