ソフトウェア開発者、生成AIに警戒感も

Joe McKendrick (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2023年07月24日 12時07分

 人工知能(AI)、特に生成AIは、ソフトウェア開発者やその他のITプロフェッショナルの役割と仕事を変えると期待されている。しかし、そのすべてが比較的未成熟であり、専門家たちは熱意と警戒心の両方を持って取り組みを進めている。

PCを操作する人
提供:Aja Koska/Getty Images

 エンジニアのためのQ&Aサイトを手がけるStack Overflowが開発者約9万人を対象に実施した最新の調査(6月公開)によると、回答者の44%は開発業務でAIツールを利用しており、さらに25%は近い将来AIを利用することに前向きであることが分かった。とはいえ、AIによって得られるものを信頼するかどうかについては、意見が分かれている。AIによるアウトプットを「非常に信頼している」のはわずか3%で、39%は「やや信頼している」と、慎重な姿勢を示した。4人に1人を超える28%は、AIを信頼していない。

 つまり、AIは素晴らしいものかもしれないが、注意を要するということだ。

 SASのAIおよびアナリティクス担当シニアマネージャーLuis Flynn氏は次のように述べている。「現在の生成AIは、生バンドが登場する大学の本格的なパーティーというよりは、中学校のダンス(パーティー)のようなものだ」「開発者は当然ながら慎重に進めている。現在、『ChatGPT』のユーザーはコードや構文について迅速かつ気軽に質問できるため、ほんの少しやり取りするだけで、すぐにアプリケーションのプロトタイプ作成に着手できる。このようなデジタルの押しボタンには、感嘆させられると同時に恐ろしさも感じる」

 同氏はさらに、現状について次のように述べた。「AIは、人類がインターネットを使って何を学んできたかを映すデジタルミラーだ。それが示すのは、人類には本質的に欠陥があるということだ。無分別かつ性急にChatGPTを利用することで、コードを悪用したり、少なくとも業務の中にエラーを紛れ込ませたりすることもできる」

 しかし、経験豊富な開発者が責任を持って検証すれば、「生成AIの可能性はとてつもなく大きい」という。「野心のあるデータサイエンティスト、データエンジニア、ビジネスアナリストは、自身の生産性を新たなレベルに引き上げる仕組みを手にする。ただし、われわれはまだその段階に至っていない」とFlynn氏は述べた。

 AIは、開発者の仕事をより良いものにする上で役立つとともに、顧客や従業員のために開発するソリューションに取り込まれていくはずだ。Flynn氏は、AIの活用が進みつつある世界でITプロフェッショナルが学び、かつ重きを置くべきスキルについての見識を有している。同氏は「自らの組織が抱えているデータと、そのデータが業務プロセスのどこにフィットするのかを深く理解しておくことが鍵となる」と述べ、「データが持つ力に、野望と柔軟な対応、問題解決に向けた知的好奇心を組み合わせることができれば、物事はあるべきところに向かっていくだろう」と続けた。

 これはまた、人と人とが協力して働く方法も変化していくことを意味している。AIはテクノロジー分野の人間だけが関与するものではなく、さまざまな分野の多くのプロフェッショナルが関与すべきものでもある。AIの活用が進んだ世界では、「特定分野の専門家と、開発者やデータサイエンティスト、特定の業界向けにAIをチューニングすることの力を理解しているビジネスアナリストなどを連携させる、組織横断的なチームが必要となる」とFlynn氏は指摘し、「そうしたメンバーとは、『機械による集合知』を導いていく方法を理解しつつ、余計な部分を削ぎ落とし、特定業界における特定業務の望ましい成果に向けてより少ないデータセットで訓練していける人材だ」と述べた。

 ITプロフェッショナルは、アプリの開発やデプロイの自動化が高度化するにつれ、どういった役割を担うようになるのだろうか。Flynn氏は「アプリの開発やデプロイの効率化が進むとともに、ITプロフェッショナルはさまざまな役割を担うようになるだろう」と述べた上で、「しかし、コンプライアンスを強制し、AIの透明かつ倫理的な利用を維持するための人間が常に必要となる。また、プライバシーや倫理が侵害されるという恐れに取り組むだけでなく、パワーユーザーのエクスペリエンスを重視し、デザインを進めていく必要もある。ChatGPTのシンプルさは、最も素晴らしい特長の1つだ」と述べた。

 重要なのは、AIの民主化を促進し、あらゆるユーザーによって安全かつ有用に使えるようにするという仕事が、開発者やITプロフェッショナルに与えられるところにある。

 Flynn氏は、メタバースが登場した時の状況を考えてみてほしいと述べ、「仮想現実(VR)用のヘッドセットを購入してもらうことが障壁になっていた。これはデスティネーションウェディング(海外など遠い場所での挙式)を敢行するようなものだ。赴くのが難しい場所を選んだ場合、招待客が限られてしまう。どのような新興テクノロジーにおいても人的要因を理解している人物が必要となる」と続けた。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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