5Gが主流のモバイル技術になるのは2029年からと予測されているが、エンタープライズへの普及には、必要な投資の根拠となる有力なユースケースとエコシステム全体での協力が必要だ。
シンガポールなどの国はすでにいくつかの分野で5Gを試行しているが、2023年にはさらに多くのネットワークが配備されるため、導入が増える見込みだ。
実際、5G接続は今後2年間で倍増し、2023年だけでも30を超える国で新たなネットワークが配備される見込みだ、と業界団体のGSMアソシエーション(GSMA)は述べている。2023年に配備が予定されている新たなネットワークのうち、15のネットワークは5Gスタンドアロンネットワークだと予想される。2023年1月時点では、世界全体で229の商用5Gネットワークが稼働している。現時点で市場に出回っているスマートフォンのモデルも700を超える。
GSMAが公表している年次レポート「Global Mobile Economy」によると、5G通信ネットワークは、2029年に4Gを上回って主流のモバイル技術となり、2030年までに主要な5G市場では普及率が85%を超えると予測されるという。5G接続件数は2023年に15億件に達し、2030年までには50億件に達するとみられている。
2030年には、5Gによって世界経済の規模がほぼ1兆ドル(約136兆円)増加するが、そのうち46%がサービス部門に、33%が製造部門に流れ、この両部門が大きな恩恵を受けるだろう。
また、事業者の大多数は、5G機能の向上が追い風となり、エンタープライズ向け事業の売上高の最大20%をプライベートワイヤレスネットワークが占めると予想している。消費者向けの接続は2022年末までに10億件を超えたとみられ、2023年に15億件、2025年末までに20億件に達する見込みだ。
しかし、事業者にとって成長の源になるのはエンタープライズ市場であり、これが今後10年間の5Gにおける収益増をけん引するだろう、とGSMAは話す。この顧客層は現在、大手事業者の収益全体のうち平均で30%を占めており、この数字は、各企業がデジタル化の取り組みを続ける中で拡大していく可能性が高い。
エッジコンピューティングとIoT(モノのインターネット)も、5Gの機会を広げる要因であり、プライベートワイヤレスの製品やサービスを提供している事業者はすでに12%に上る。GSMAによると、2023年にはIoTの展開がさらに拡大すると見込まれることから、この数字も成長することが予想されるという。
ただし、エンタープライズ市場では5Gのチャンスが多い反面、望んだ結果を出せる事業計画を模索することが大きな課題になっていると、ForresterのアナリストであるGuannan Lu氏は指摘する。多くのメーカーが固定ネットワークを使っているのも、課題の一例だ。
「5Gを活用する基盤を作るためには、ネットワークのアップグレードと統合に対する投資が必要だ。ビジネス上の明確な価値がなければ、そうした投資の合理的な根拠を示すのは難しい」とLu氏。「しかも、ソリューションの提供には標準的なアプローチがないため、ユースケースの再現が困難になっている。5Gベンダー各社は、顧客と協力して、幅広いユースケースのイノベーションを進め、従来の製品サービスを合理化しなければならない」
香港を拠点として、IDCのアジア太平洋リサーチディレクタ―補佐を務めるBill Rojas氏によると、業界のユースケースは、移動体通信事業者のみならず、システムインテグレーターや業界の専門家によっても促進されるという。同氏は、早期の導入が進むのは、製造業、ロジスティクス、運輸、スマートシティ分野としている。
市場に参入している華為技術(ファーウェイ)などの企業は、主要分野としてヘルスケアや海運を挙げており、業界に特化した5G製品およびサービスを提供している。例えば同社は、港湾のデジタルツインを構築し、自動化およびインテリジェント化を推し進めるべく、天津港グループとの協力を進めているところだ。この協業には、自動化された新しいターミナルの建設や、従来のターミナルのアップグレードも含まれている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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