「ChatGPT」をはじめとするAIシステムは、IT業界における長年の夢である汎用人工知能(AGI)と、「シンギュラリティー」(技術的特異点)と呼ばれる抜本的変革に向けて、私たちをさらに高速に導いていると、シリコンバレーのチップ業界レジェンドで、スタンフォード大学元教授のJohn Hennessy氏は確信している。
「AI革命が私たちに訪れようとしている。素晴らしいことだ」と、Hennessy氏は米国時間2月13日、TechSurgeカンファレンスで述べた。「それがシンギュラリティーかもしれないという感覚が、すべての人々の中に芽生えている(中略)コンピューターが人間よりも本当に有能になるその転換点は、私たちが考えているよりも近い」(同氏)
Hennessy氏は、エネルギー効率の高いスマートフォンチップを可能にしたコンピューティングアーキテクチャーの開発で、コンピューティング分野の最高の賞であるチューリング賞を、同僚のDave Patterson氏とともに受賞している。そのアーキテクチャーは現在、ほぼすべての主要なプロセッサーの基盤となっている。同氏は、Googleの親会社であるAlphabetの会長でもある。
AIはまさにコンピューティングに変革をもたらしており、人間の脳を模倣したニューラルネットワーク処理手法によって、パターン検出における新たな問題や、より最近では新しいテキストや画像の生成に利用されている。AIは何年も前からコンピューティング業界全体に広がっており、音声認識を主流へと押し上げ、顔認証でスマートフォンのロックを解除できるようにした。しかし、2022年にOpenAIの「ChatGPT」が登場したことで、AIに対する期待が急騰している。ChatGPTは、幅広い範囲の質問に答え、アドバイスを与え、米医師免許試験の合格水準に達し、会話を交わし、プログラムや詩を記述することができる。
Microsoftは、ChatGPTを支える技術を利用して検索エンジン「Bing」の新しいバージョンを構築し、「Word」「PowerPoint」「Excel」といった他のツールにおいて、さらに広くこれを利用することを計画している。AIのパイオニアであるGoogleは2月に入り、競合するAIツール「Bard」を発表した。
比較的狭い範囲のタスクを対象にトレーニングされた今日のAIが、人間の脳の汎用性に匹敵するまでに、今後どれだけ成長するかは不明だが、Hennessy氏は楽観的だ。
「一部の人々は、汎用人工知能が実現するのは40年か50年先だと考えていた。すべての人々の水平線が、おそらく10年か20年近づいたと私は考えている」とHennessy氏は語り、「これらのモデルは、ますます大きくなり続けており、モデルのサイズが大きく増加する度に、新しいタスクが実行できるようになるようだ。どこでその成長が頭打ちになるかは、まだわからない」とした。
ChatGPTなどの生成AIをめぐる問題の1つは、人々をミスリードする可能性があることだ。現時点では事実と、そうでないがもっともらしく見える情報を区別するのは難しい。Googleもこの問題を懸念しており、ChatGPTが大きな注目を集めるようになるまでBardを発表しなかったのはそのためだ。
「Googleはこれを製品化することに消極的だった。製品にするには時期尚早と考えていたからだ。しかし、私はこれをデモンストレーションの道具としては素晴らしい技術だと考えている」とHennessyは語った。
このカンファレンスはCelesta Capitalが主催し、カリフォルニア州マウンテンビューにあるコンピューター歴史博物館で開かれた。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」