KDDIは2月2日、2023年3月期第3四半期決算を発表。売上高は前年同期比4.2%増の4兆1829億円、営業利益は前年同期比3.6%減の8434億円と、前四半期に続いて増収減益の決算となった。
同日に実施された決算説明会に登壇したKDDI 代表取締役社長の高橋誠氏によると、減益の主な要因は燃料費高騰による所が大きいとのことで、2022年7月に発生した通信障害の影響も含めると238億円の影響が出ているという。加えて「auでんき」などのエネルギー事業も前年同期比で74億円利益が減少しており、燃料費の高騰が業績に大きな影響を与えているようだ。
ただそれ以外の事業は順調で、法人事業の成長領域と位置付けるデジタルトランスフォーメーション関連の「NEXTコア事業」、そして金融事業などは順調に成長しているとのこと。高橋氏は、NEXTコア事業は第4四半期に積み上げた案件の利益上乗せが期待されることから、期初予想は達成できると話している。
また楽天モバイルからのローミング収入に関して、楽天モバイル側のローミング終了が「当初想定していたより遅いスピード」(高橋氏)とのこと。それゆえ今年度はローミング収入が500億円くらい減少すると見ていたが、それよりは少なくなることが予想され、業績にポジティブな要素になると説明。注力領域の拡大やコスト効率化などによって、今年度の増益化を引き続き目指すとしている。
主力の通信事業に関しては、モバイル通信「通信ARPU」と、決済やコンテンツなど通信以外の「付加価値ARPU」を合わせた「マルチブランド総合ARPU」が順調に伸びているとのこと。伸びをけん引しているのは付加価値ARPUだが、通信ARPU収入は前年も前四半期と比べ10円上昇しており、再増加傾向にあるという。
マルチブランドの通信ARPU収入も2021年度の第4四半期を底に改善傾向にあり、政府主導による通信料金引き下げの影響は徐々に緩和しつつある。その理由として高橋氏は、5Gの浸透によるデータ通信利用の増加を上げている。実際「au」ブランドの5G端末購入者のうち、6割超が使い放題プランを選択しているそうで、その伸びは前年同期比20%に達するとのこと。
一方で小容量の段階制プラン「ピタットプラン」契約者は前年同期比で17%減少しているほか、サブブランドの「UQ mobile」の新規契約に占める、auの利用者の比率も減少傾向にあり、使い放題プランを選んで継続利用する人が増えている様子をうかがわせる。
そうしたことから高橋氏は、中期的な成長に向けてさらにARPUを上昇させるべく、大容量プランの魅力の向上を目指すとのこと。auだけでなくUQ mobileに関しても、18歳以下の利用者と家族を対象に、中、大容量プランの利用が1年間割り引かれる「UQ親子応援割」を提供するなどして、より大容量のプランへの移行を促していきたいとしている。
一方で、auでは2023年2月から、ピタットプランに代わる新しい段階制プラン「スマホミニプラン」の提供を開始している。こちらはピタットプランと料金は大きく変わらないものの、データ通信量の上限が7GBから4GBに減少していることから、実質的な値上げと指摘する声も多い。
スマホミニプランを提供した経緯について高橋氏は、「ピタットプランの利用状況を見ると、4GB以下が凄く多かった」と話し、ターゲットに向けた特徴を明確にすることが提供の狙いだと説明。ただそれだけでは「魅力が落ちたように見えると困る」(高橋氏)ことから、2023年4月以降は4GB超過後の通信速度を128kbpsから、300kbpsに上昇させる予定だとしている。
高橋氏はさらに、現在の顧客が映像サービスを利用するなどして大容量プランを求める人と、コスト重視の人とに「少し二極化している感じがある」と分析。2つのブランドで双方の顧客に対してメリハリのあるサービスを提供することが今後の方針としており、ピタットプランで4GBを超えて利用している人に対しても使い放題MAXなどへの移行を促す方針のようだ。
その大容量通信を担う基盤の5Gネットワーク整備に関して、高橋氏は「若干遅れていたが、なんとか(2023年の)2月、3月に人口カバー率90%を達成して対応していきたい」と答えている。現状は4Gから転用した周波数を活用してエリアを広げているが、より高速な通信ができる「サブ6」と呼ばれる周波数帯の整備に関しても「開設計画の関係もあり、これから広げていくので期待頂きたい」と話すが、面的なカバーよりもトラフィックの多い生活動線にこだわった整備を重視する方針は崩していないようだ。
もう1つ、今回の決算で言及がなされたのが「デュアルSIMサービス」に関してである。KDDIは決算発表と同日に、通信障害や災害時の備えとして他社回線を利用できる通信サービスを、ソフトバンクと提供すると発表。スマートフォンで2枚のSIMを同時利用できる「デュアルSIM」の仕組みを活用し、auとソフトバンクの契約者が非常時に利用できる、他社回線を用いた予備回線のSIMを提供するとしている。
これは2022年7月にKDDIが発生させた大規模通信障害を受けて提供するに至ったもので、以前の決算会見でも高橋氏がその実現に向けて他社と協議を進めていたことを明らかにしていた。
当初は担当者ベースで話し合いが進められたが、時間がかかることから高橋氏が自ら他社に声掛けをするに至り、ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOである宮川潤一氏が「ぜひやろう」と即諾したことで、同社とのサービス提供に至ったという。
サービス開始時期は2022年度内を予定しており、料金は「できるだけたくさんの人に使ってほしい」(高橋氏)ことから月額料金は数百円程度を想定しており、非常時に利用する時には別途従量の料金がかかる仕組みとなるようだ。提供形態としてはeSIMと物理SIMの両方に対応し、相互に回線を卸して顧客にワンストップで提供する形となるようだ。
なおソフトバンク以外の携帯電話会社の対応について、NTTドコモとは現在も協議しているが、実施時期はまだ明確になっていないとのこと。楽天モバイルに関しては、KDDIがローミングを提供して広域をカバーしており、KDDIが通信障害を起こすと楽天モバイルもその影響を受けることから「エリアの関係から難しいと思って声掛けはしていない。エリアが広がったら同じことを実現できると思うので、時期を見ながら(協議したい)」と高橋氏は答えている。
また、従来このようなサービスが存在しなかったことを問われた高橋氏は、「日本は今まで、全ての通信会社が自分だけで完結するというのが常識だった気がする」と回答。「これからは互いに、協力できるところは協力していくのが大事」と話し、通信障害への対応だけでなく、基地局整備などにおいても協力できる領域では競合他社と協力していきたいとの考えを示している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス