日立GLS、月額3300円で家電のサブスクを開始--香りのデジタル化も初公開

 日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)は、11月中旬から、家電製品のレンタルサービスを開始する。その内容について、日立GLS 常務取締役 COOの伊藤芳子氏は、日立グループ最大規模のイベントである「Hitachi Social Innovation Forum 2022 JAPAN」の「持続可能なライフソリューションの創出に向けて」と題した講演のなかで説明した。

日立GLS 常務取締役 COOの伊藤芳子氏
日立GLS 常務取締役 COOの伊藤芳子氏

 家電品レンタルサービスは、日立の家電品オンラインストアで提供するもので、コードレス スティッククリーナー「ラクかるスティック PV-BL3J」、ロボットクリーナー「minimaru(ミニマル)RV-X10J」、過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシーシェフMRO-W10A」、IHジャー炊飯器「ふっくら御膳 RZ-W100FM」の4製品を対象に実施する。

 9980円で対象となる家電を30日間試用できる「お試しプラン」と、月額3300円で利用できる「月額プラン」の2種類を用意。両プランとも、製品が気に入った場合などには、レンタルから買い取りに切り替えることも可能だ。

日立の家電品レンタル
日立の家電品レンタル
家電品レンタルサービスで提供する、コードレス スティッククリーナー「ラクかるスティック PV-BL3J」、ロボットクリーナー「minimaru(ミニマル)RV-X10J」、過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシーシェフMRO-W10A」、IHジャー炊飯器「ふっくら御膳 RZ-W100FM」の4製品
家電品レンタルサービスで提供する、コードレス スティッククリーナー「ラクかるスティック PV-BL3J」、ロボットクリーナー「minimaru(ミニマル)RV-X10J」、過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシーシェフMRO-W10A」、IHジャー炊飯器「ふっくら御膳 RZ-W100FM」の4製品

 月額プランの最低利用期間は、コードレススティッククリーナーとジャー炊飯器が6カ月間、ロボットクリーナーと過熱水蒸気オープンレンジは12カ月間となっている。 

 常に最新の家電品を継続して利用したいというニーズに応えるとともに、単身赴任や大学生のひとり暮らしなど、期間が限定される場合などにも、日立の家電品を気軽に利用できるようになる。レンタル期間が終了した家電品は日立GLSに返却できるため、不要になった家電品を処分する手間も省ける。

 伊藤氏は、「購入から利用へというお客様の意識の変化も取り込んだサービスである。また、レンタル期間が終了した家電品は、日立GLSに返却してもらい、資源循環型社会に貢献できるように再利用することになる」と述べた。

 一方、講演では、家電事業におけるカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みについても触れた。

 伊藤氏は、「日立製作所の中期経営計画に沿った形で、省エネルギーや資源循環対応などに取り組んでいる。サステナブルな社会と人々のQoL向上の実現に貢献する」とし、いくつかの取り組みを紹介した。

 たとえば、スティッククリーナーでは、製品のデザイン性と再生プラスチックの利用を両立。製品本体のハンドルカバーなどの外観部分や、スタンド式充電台などの付属品に使用しているプラスチック素材のうち、再生プラスチックを質量比で40%以上採用。製品のリサイクルを考えて、クリーナーのヘッド部分に印刷していた日立のロゴマークを、成形による刻印仕上げに変更するといった配慮も行っているという。

外部部品や付属品に再生プラスチックを使用
外部部品や付属品に再生プラスチックを使用

 また、カメラ付き冷蔵庫が注目を集めていることに触れ、「冷蔵庫のドアを開けると、冷蔵室内とドアポケット部を撮影し、ネットワークを介してサーバーに保存し、スマホのアプリでいつでも、どこでも画像を確認できる。買い物前になにがあったのかがわかり、外出先でも確認できる。いつも常備している卵やミルクなどの二重購入をなくし、フードロス削減に貢献できる」という。

カメラ付き冷蔵庫
カメラ付き冷蔵庫

 循環型社会の実現に向けた取り組みとしては、製造した家電を家庭で利用し、回収したあとに、グループ会社である関東エコリサイクルで、家電を分解、解体作業を行い、再資源化を行っていることを説明。廃棄となった素材やプラスチックは、グループ会社の日立アプライアンステクノサービスでリサイクル再生材へと再生。再び家電の製造に利用しているという。

 たとえば、ガラスドア冷蔵庫は、構造上、ガラス部分の分離が難しかったが、日立製作所と共同で4年をかけて、冷蔵庫ガラスドア分離装置を開発。ガラス部分を分離できるようにしたという。

 「ガラスドアは、清潔で、手入れがしやすく、見た目が美しい点が受けているが、ガラス部分がドアにしっかりと貼りついているため、リサイクル時には分離ができにくいという課題があった。そのため、従来は再資源化できずにドア部を廃棄していた。分離装置を開発したことで再資源化率を高めることができた」という。

 関東エコリサイクルでは、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビを対象に、2021年実績で862kt、3万3800台のリサイクル処理を行っており、処理重量は2016年と比較して約1.4倍に増加しているという。

 「家電製品の資源循環をすべて自社グループ内で行えるのは日立GLSの強みのひとつである。また、このデジタル基盤としてLumadaを活用しているのも特徴である。家電製品のリサイクル率、再資源化率をさらに高める環境開発を続けていく」と述べた。

資源循環社会への貢献
資源循環社会への貢献
Lumada活用による資源循環基盤を構築
Lumada活用による資源循環基盤を構築

生産拠点にPPAモデル導入、創エネ、省エネ積極的に

 また、開発拠点や製造拠点における再生可能エネルギーの活用についても触れた。冷蔵庫やエコキュートなどを生産している栃木事業所では、7月から建屋の屋上に太陽光発電パネルを設置し、PPA(電力販売契約)モデルで運用。初期投資や設備の維持費、管理コストを削減しながら設置、運用が可能になったという。また、洗濯機やクリーナーの生産を行っている多賀事業所では、製造ラインの成形機にセンサーを設置し、電力消費の状況を可視化。稼働状況をもとに電力の無駄を排除し省エネを実現しているという。

 開発した製品の省エネ化の事例として冷蔵庫をあげた。冷却器とファンは、冷蔵室専用と冷凍、野菜室専用の2つを配置。「冷蔵室を独立させることで、冷蔵室専用の冷却器の温度を高くでき、結果として、エネルギー消費を抑えることができるという効果がある」という。

 また、素材や部品における化学物質による生態系への影響を抑える取り組みも実施。「家電製品に組み込まれる材料、部品、製造工程における油脂類など、生産に関わるすべての購入部材について調査を行っている。有化学物質管理システムにより、環境情報の登録、検索を行い、製品に含まれる物質を、サプライヤーとお客様に情報を開示できる体制を確立している」という。

 さらに、同社の業務用空調機器における取り組みでは、空調IoTソリューションである「exiida遠隔監視・予兆診断」を通じて、故障によるフロン類の漏洩抑制など環境面からの対策を実施しているほか、8月からのフロン排出抑制法の改正に伴って義務づけられた3カ月に一度の簡易点検の代替にも同サービスを利用できるため、管理者の作業負担軽減にもつながるという。

 講演で伊藤氏は、「日立GLSは、持続可能なライフソリューションの創出に向けて、カーボンニュートラルへの取り組みや、環境配慮型製品の拡大、リカーリングビジネスの成長、リサイクルにおける再資源化率の向上に取り組み、サステナブルな社会の実現に貢献する」と締めくくった。

再生可能エネルギーやデジタルの活用
再生可能エネルギーやデジタルの活用
製品の省エネ性能向上、化学物質管理の徹底
製品の省エネ性能向上、化学物質管理の徹底

香りのデジタル化技術を初公開

 なお、Hitachi Social Innovation Forum 2022 JAPANでは、オンライン展示において、「香りのデジタル化技術による製造DXソリューション」を初めて公開した。

 独自に開発した光音響センサーを活用することで、香りの分子に特殊な光を当てて発生する振動を音波として捉え、分子ごとに異なる周波数と強度から香りの成分や濃度を特定することができるという。また、照射する光の特性をソフトウェアで変更し、計算処理することで、複数の香り成分をひとつのセンサーで計測することもできる。従来の半導体式センサーによる計測では、物理的に計測特性が固定され、香りごとに専用のセンサーが必要であったが、日立GLSの技術ではひとつのセンサーで、複数の香り成分を計測できる。

香りをデジタル化する「光音響技術」
香りをデジタル化する「光音響技術」
香りセンシングソリューション構想
香りセンシングソリューション構想

 複数の香り成分が混在する現場への導入が可能であるほか、香りの濃度をオンタイムで検出できる特徴を持つのが特徴だ。また、香り成分をキャッチする吸着薄膜である感応膜を使用していないため、長寿命でメンテナンス性が高い。

 同社では、「嗅覚に相当するセンシング技術を開発したことで、誰にとっても扱いやすい香りのデジタル化を実現する。独自技術により、ガスの成分と濃度を定量化し、データを活用することで、品質管理、原料管理、開発支援、環境保全、異常検知などに活用できる」としている。

 家電への応用は現時点では想定されていないが、ワインの醸造工程での発酵状態の管理、工場周辺のにおい濃度検知による周辺地域への対策などでの活用を想定しているという。

ひとつのセンサーで複数の香り成分を計測できる
ひとつのセンサーで複数の香り成分を計測できる

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