KPMGコンサルティングは7月7日、宇宙システムにおけるサイバー脅威を巡る動向と、レジリエンス強化に向けた課題を題材に勉強会を開催した。5月に開催した勉強会の続編と言える。
同社執行役員 テクノロジーリスクサービス パートナー 内山公雄氏は、日本政府の2022年度の宇宙関連予算について「前年度比で30.8%増。各省庁の宇宙関連予算は5219億円だが、3分の1にあたる1769億円が安全保障に充てられている。日本に限らず世界全体の流れだ」と現状を解説した。宇宙ビジネスに対する民間企業の参入に伴い、宇宙セキュリティ対策や業務回復力が求められていると主張した。
勉強会では、米金融機関Morgan Stanleyの調査レポート「Space: Investing in the Final Frontier」を引用し、世界の宇宙ビジネス市場は年平均成長率5.1%で推移し、市場規模は2040年までに1兆ドル(約135兆円)を突破すると指摘。今後20年間で約3倍の市場拡大になるものと期待されている。
同社テクノロジーリスクサービス マネジャー 倉澤秀人氏によると、米政府の宇宙関連予算は「全体的に横ばいながらも、防衛にかかる宇宙関連予算は増加傾向。2021年に前年比31.4%増加し、2023年の要求額ベースは前年比27.7%増が見込まれている」
対する日本も2022年度の宇宙関係予算は、内閣官房と防衛省の合算値(狭義の安全保障)が1769億円、各省庁の予算を計上すると5219億円におよぶ(2022年度当初予算+2021年度補正予算)。倉澤氏は「どこまで安全保障にかかる宇宙関係予算と判断するのは難しい」と述べながらも、世界各国政府の宇宙関連予算が増加する傾向にあると指し示した。
宇宙ビジネスを取り巻く環境について、倉澤氏は「民間企業による宇宙空間の商業利用が急速に進みつつある」と分析する。
民間企業が提供する民生品(Commercial Off-The-Shelf:COTS)やオープンソースソフトウェア(OSS)を活用することで衛星やロケット、地上局などの小型化や低廉化によるリードタイムの短縮が加速し、民間投資による資金投入も拡大しているところだという。Space Capitalのレポート「Space Investment Quarterly」では、世界全体の投資額は145億ドル(約2兆円)だと試算している。
さらにロケット製造に代表されるハードウェアインフラとともに、衛星データを活用するソフトウェアやサービスの領域が注視され、プレーヤーとして「企業や新興国が増加」(倉澤氏)しているという。
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