「iPhone」の進化の鍵を握る2つの技術--LiDARとAI

Lisa Eadicicco (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年07月07日 07時30分

 英国在住の盲目のジャーナリストで、アナウンサーの顔も持つLucy Edwards氏は、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた頃、街中でソーシャルディスタンスを守ることに苦労していた。そこでEdwards氏は、「iPhone」の「人の検出」機能を試してみることにした。LiDARセンサーを使って周囲の人を検出する、「iPhone 12 Pro」と「iPhone 13 Pro」の機能だ。

iPhone

 Edwards氏は、同氏の経験を追った2020年のBBC番組の中で、「慣れは必要だが、また一人で行動できる可能性が見えたことに興奮している」と語っている。

 LiDARは、「light detection and ranging(光による検知と測距)」の略で、この15年でiPhoneに搭載された革新的なテクノロジーのひとつだ。2007年6月29日に発売された初代iPhoneの画面は、現在の標準的なモデルからすると極小とも言える3.5インチ(8.9cm)で、搭載しているカメラも200万画素のものが1つだけだった。現在のiPhoneは、ハイエンド機種ともなれば映画を撮影できるほど高性能な背面カメラを3つも持ち、Edwards氏のような人々が街を自由に歩くための各種センサーや、何十億ものトランジスタが集積された強力なチップを搭載している。

 デジタルアシスタントの「Siri」、モバイル決済、ワイヤレス充電――こうした新技術は、iPhoneの中から私たちのモバイルライフを進化させてきた。しかし、今後iPhoneの肝になるのは、iPhoneの中ではなく、iPhoneの外に広がるテクノロジーかもしれない。そう予測するのは、モバイル業界のトレンドやAppleの戦略を観察してきたアナリストたちだ。

 短期的には、カメラの高画質化や画面の大型化といった改良が少しずつ進むだろう。しかし今後10年を見据えると、iPhoneはむしろスマートグラスなどのデバイス類の「ハブ」として進化していく可能性がある。「AirPods」、「Apple Watch」、「CarPlay」対応の自動車などは、その始まりに過ぎないのかもしれない。ディスプレイや充電システムといったiPhoneのコアな要素も大幅に強化される見込みだ。

 「スマートフォンの次の挑戦は、新たな接続先を考えることだ」と、市場調査会社Canalysのアナリスト、Runar Bjorhovde氏は言う。「スマートフォンにはまだ伸びしろがあるが、デバイス単体としては、進化の限界に近づきつつあるのではないか」

iPhoneを中心とした世界

 スマートフォンの次に来るものについては、さまざまな憶測が飛び交っている。しかしMeta、Snap、Googleがこぞってハイテクメガネの開発に取り組んでいることを考えると、多くの企業がスマートグラスを1つの答えと見ていることは間違いなさそうだ。

 Appleも例外ではない。Bloombergの報道によると、Appleは2022年か2023年に、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の技術を取り入れた複合現実(MR)ヘッドセットを発売する可能性があるという。記事によれば、ARスマートグラスは2020年代後半に登場する見込みだ。

 では、これがiPhoneとどう関係するのか。おそらく「あらゆる点で」だ。Appleのヘッドセットは単体でも機能すると見られているが、利用できるアプリやサービスはiPhone由来のものになるだろう。

 Apple Watchを思い浮かべてほしい。Apple Watchは近くにiPhoneがなくても動作するが、Appleのスマートフォンと密接に連携できる点が大きな魅力となっている。Apple Watchが出す通知も、iPhoneで設定したアカウントやアプリと連動していることが多い。

 それがスマートヘッドセットだろうと、Apple Watch、AirPods、あるいは「HomeKit」対応家電だろうと、すべての中心は今後もiPhoneになるとアナリストらはみている。

眼鏡越しにあるAirPodsとAppleWatch
提供:Scott Stein/CNET

 「スマートフォンは要になる」と言うのは、技術系投資会社Loup Venturesのマネージングパートナーで、Appleのアナリストとしても知られるGene Munster氏だ。

 しかし、Appleが目指しているのは接続できるガジェットを増やすことだけではない。Appleは少しずつiPhoneを財布の代用品とすることで、私たちの生活のデジタル化されていない部分に確実に入り込もうとしている。

 Appleはこの1年間、同分野で多くの進歩を成し遂げてきた。「Apple Wallet」でのデジタルIDや、「Tap to Pay」のような新機能はその一例といえる。Tap to Payは、店舗が特別なハードウェアを用意しなくてもiPhoneを非接触型の決済端末として利用できる機能だ。また、Apple Payで購入した商品の代金を6週間かけて4回払いにできる後払いサービス「Apple Pay Later」も発表した。

 「金融サービスの分野で、Appleが勢いづいていることは間違いない。今後もさらなる進化が期待できる」と、Juniper Researchの調査部門を率いるNick Maynard氏は言う。

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