パナソニックは、2022年3月期上期(4~9月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比15.5%増の3兆5335億円、営業利益は108.2%増の2012億円、税引前利益は120.8%増の2058億円、当期純利益は213.2%増の1530億円となった。また、調整後営業利益は124.2%増の1998億円となった。
パナソニック 取締役専務執行役員兼CFOの梅田博和氏は、「第2四半期は、売上高は情報通信向け事業や車載電池が増販となり、家電や車載機器の減収をカバーした。調整後営業利益は、情報通信向け等は販売の伸⻑により増益となっているが、家電がコロナ禍での国内総需要の減速やアジア工場のロックダウンなどの影響があったほか、自動車の減産による車載機器の減販影響が大きい。銅などの原材料高騰の影響もあった。フリーキャッシュフローは、Blue Yonderの買収完了や在庫増などによりマイナスになった」と総括した。
9月に買収が完了したBlue Yonderについては、2020年7月の20%の株式取得時の873億円と、今回の80%の追加株式取得の7760億円をあわせて、合計8633億円となったことを報告。今年度下期から加わる売上高は約600億円、無形資産の償却費は約160億円と想定。また、第2四半期のその他損益において、既存の持分に対する再評価益583億円を計上したほか、今回計上されるのれん・無形資産等の金額は約9600億円を想定しているという。
なお、Blue Yonderの買収資金は、手元金の3760億円のほか、4000億円のブリッジローンを実行して調達。10月に発行した劣後債によって、借換済としたことも報告した。
一方で、原材料の高騰および半導体不足などの影響によって、第1四半期は200億円強、第2四半期は300億円強のマイナスが発生しているとし、「当初は年間500億円の影響を見込んでいたが、年間では1000億円を超えるレベルで影響があると見込んでいる」と述べた。
2021年度上期のセグメント別業績では、アプライアンスの売上高が前年同期比7%増の1兆2735億円、営業利益は11%減の455億円となった。「中国での家電は堅調に推移したが、国内では、前年同期に特別定額給付金による需要があった反動や、2021年は冷夏であった影響によりエアコン、冷蔵庫を中心に、家電の総需要が減速。また、アジアでのコロナ再拡大に伴う工場ロックダウンの影響があった」としたほか、「半導体不足は家電事業にも影響が出ている。ドラム式洗濯機は、6月後半からの約2カ月間は部品調達の問題と工場稼働の問題があり、供給することができなかった。だが、家電の品不足により、販売促進費用などは削減できるといった動きも出ている。11月には洗濯機の新製品を発売することになるが、旧製品が市場にない状況での投入になる」などと述べた。
ライフソリューションズは、前年同期比4%増の7278億円、営業利益は19%増の253億円となった。「アジアの工場ロックダウンや、半導体調達課題による減販、原材料価格高騰といった課題があったが、国内のハウジング事業は堅調に推移した」と述べた。
コネクティッドソリューションズの売上高は前年同期比13%増の4255億円、営業利益は前年同期の172億円の赤字から、522億円の黒字に転換した。「情報通信関連の需要増により、実装機が好調に推移。プロジェクターの増販も業績をけん引したほか、アビオニクスの収益が改善した」という。だが、ノートPCは半導体不足の影響を受けて、需要に対応した出荷ができていない状況が生まれているとした。
オートモーティブの売上高は前年同期比28%増の7313億円、営業利益は前年の44億円の赤字から、71億円の黒字に転換。「車載機器は、自動車生産減少の影響を受け、減収となったが、車載電池は円筒形電池の旺盛な需要に対応して増収になった」という。
インダストリアルソリューションズは、売上高が前年同期比18%増の7010億円、営業利益は同142%増の652億円となった。「原材料価格高騰の影響があったものの、車載や工場省人化、5G基地局やサーバーなどの需要、情報通信インフラ向けのコンデンサ、リレー、産業用モーターなどの販売が好調に推移した」としている。
一方、2022年3月期(2021年4~2022年3月)連結業績見通しを上方修正した。売上高は7月公表値から3000億円増の前年比9.0%増の7兆3000億円、営業利益は400億円増の同43.1%増の3700億円、調整後営業利益は100億円増の30.2%増の4000億円、税引前利益は400億円増の同41.9%増の3700億円、当期純利益は300億円増となる同45.4%増の2400億円とした。
「売上高、利益のいずれも、年初公表値から上方修正する。売上高では、上期までの為替のプラス影響に加えて、インダストリアルソリューションズなどの販売増を反映。調整後営業利益は、原材料価格高騰などのマイナス影響を、増販益や合理化、コスト削減などでカバーする」としたほか、「上期は47~48%、下期に52~53%という構成比が通常。上期の調整後営業利益は2000億円まで来ている。原材料高騰などの一時的な悪化要因はあるが、あと2000億円をしっかりとやっていく」と述べた。
さらに、赤字事業の撲滅への取り組みについては、液晶パネル事業やソーラー事業、半導体事業は黒字化しているとし、残るテレビ事業については、「少し上下しているが、年間でゼロにしてきたい」と述べた。
パナソニックでは、2022年4月からの持ち株会社制へと移行するのを前に、10月から、新たなグループ体制へと移行。セグメント別の通期見通しは、新たなセグメントで公表した。下期以降は、このセグメントで業績を開示することになる。
くらし事業は、売上高は前年比3%増の3兆6400億円、調整後営業利益は126億円減の1730億円、営業利益が269億円減の1400億円。そのうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年比3%増の9410億円、調整後営業利益は124億円減の670億円、営業利益が125億円減の670億円。空質空調社の売上高は前年比5%増の7190億円、調整後営業利益は56億円減の400億円、営業利益が62億円減の390億円。コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年比13%増の2880億円、調整後営業利益は65億円増の45億円、営業利益が65億円増の35億円。エレクトリックワークス社の売上高は前年比3%増の1兆160億円、調整後営業利益は14億円増の480億円、営業利益が7億円増の310億円とした。
また、オートモーティブの売上高は前年比7%増の1兆870億円、調整後営業利益は213億円増の120億円、営業利益が218億円増の100億円。コネクトの売上高は前年比13%増の9250億円、調整後営業利益は163億円増の200億円、営業利益が750億円増の550億円。インダストリーの売上高は前年比12%増の1兆1000億円、調整後営業利益は327億円増の770億円、営業利益が333億円増の740億円。エナジーの売上高は前年比25%増の7480億円、調整後営業利益は272億円増の650億円、営業利益が275億円増の610億円とした。
通期見通しの修正要因については、従来のセグメントで説明した。アプライアンスは、日本やアジアにおける総需要の減少で実質販売減となるが、為替の影響によって売上高は上方修正。調整後営業利益は、原材料高騰に加えて、国内総需要の減退やアジアでのロックダウンなどによる販売減が影響するという。ライフソリューションズは、売上高は、為替影響などにより上方修正したが、調整後営業利益は、原材料価格の高騰や半導体の調達難が影響し、わずかに下方修正する。コネクティッドソリューションズは、ノートPCや、航空機向けのインフライトエンターテインメントが減収となるが、実装機の増販やBlue Yonderの連結などにより、全体では上方修正。だが、調整後営業利益ではノートPCなどの減販損が大きく、下方修正する。オートモーティブは、車載機器の売上高は、自動車の減産によって下方修正。調整後営業利益も部材高騰や輸送費の増加などにより下方修正。車載電池は、円筒形電池の需要増により売上高、調整後営業利益ともに上方修正する。インダストリアルソリューションズは、工場省人化や情報通信インフラ向けの伸長によって売上高、調整後営業利益ともに上方修正する。
今回の決算会見では、コロナ禍での事業環境の変化に対する取り組みについても説明した。梅田CFOは、「現在の事業環境として、銅の価格が1トンあたり1万円前後で高止まりするなど、原材料価格高騰の長期化が懸念されるほか、工場などのロックダウンや車両生産の減少など、一時的な悪化要因が発生している。合理化などの原価力強化や、販売の増減に応じた適切なコストコントロール、在庫削減による資金改善など、オペレーション力を徹底的に強化することで対応する。BtoB分野では、原材料価格の高騰にあわせて、第2四半期から第3四半期にかけて、値上げ対応している部分もある」などとした。
「半導体は需給環境が改善してくるとみられるなかで、最先端の半導体や部品をしっかりと採用し、中長期的に変化への耐性力を高めていきたいと考えている。さらに、Blue Yonderをはじめとしたソリューション事業の拡大や、EVも半導体は直接関係しないといったように、こうした領域の事業を拡大することも、半導体不足への対応に貢献できる」と語る一方、「情報通信インフラや工場省人化への投資需要の拡大や、EV需要の拡大、サプライチェーンマネジメントに関する改善ニーズの高まり、ライフスタイルの変化など、新たな事業機会も生まれている。それぞれの事業において、拡大する需要を着実に取り込んでいく」とした。
また、「インダストリーでは、コンデンサや産業用モーターなどの重点商品の増販に取り組んでいる。エナジーでは、北米工場の新たな生産ラインの稼働により、日米合計で50GWh相当の生産能力まで増強し、拡大するEV需要に対応する。さらに、テスラと進めている4680セルについても、試作設備を2021年度中に導入する予定であり、開発を加速する」と発言。「コネクトでは、サプライチェーンマネジメントの分野で、Blue Yonderを中心としたグローバルでの経営課題の解決を提案。くらし事業においては、IoTの搭載で、一人ひとりの生活様式に合わせて、必要な機能を追加、選択できるマイスペック家電を発表した。今後も、くらしの変化に向き合った商品やサービスを展開し、さらに、省エネやフードロスの削減など、社会課題解決にも貢献していく」などと語った。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス