小国からユニコーン企業が次々に誕生--エストニア流の取り組み方 - (page 2)

Kalev Aasmae (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2021年05月13日 07時30分

 2020年にはエストニアのGDPが2.9%減少したにもかかわらず、エストニアのスタートアップの総売上高は43%増加し、従業員数も1.2%増加して6072人になった。

 政府のイニシアチブであるStartup Estoniaの責任者を務めるEve Peeterson氏は、スタートアップおよびテクノロジー業界がエストニアのGDPに占める割合を15%まで増やすことが目標だとしており、新型コロナウイルスによって、そのような意欲的な目標が変わることはない、と述べている。

 2020年、エストニアのスタートアップエコシステムは、ほかにも重要なマイルストーンを達成している。CRMプラットフォームのPipedriveは、Vista Equity Partnersから過半数の投資を受けたことにより、エストニアのスタートアップで評価額が10億ドルを突破した5つ目の企業となった。他の4社は、Skype、Playtech、Bolt、Wise(旧称Transferwise)だ。

 実際のところ、エストニアのスタートアップの定義によっては、同国はすでに6つ目のユニコーン企業を有しているといえるかもしれない。2021年3月、ロンドンを拠点とする保険スタートアップのZegoは1億5000万ドルの投資ラウンドを発表し、同社の評価額は11億ドルを超えた。Zegoの共同創設者兼CEOはエストニア人のSten Saar氏だが、同社はロンドンで創設され、エストニアに子会社やオフィスはない。

 それでも、人口約130万人の国で、このところほぼ1年おきのペースで新しいユニコーン企業が誕生し続けているのはなぜなのだろうか、という疑問が残る。

 グローバルなエクイティーファンディングおよびトレーディングプラットフォームを手がけるスタートアップFunderbeamのCEOであるKaidi Ruusalepp氏は、「ローマの哲学者セネカが言ったように、『幸運とは、準備と機会が出会ったときに生まれるもの』である」と話す。

 高度なデジタル社会と豊富な人材を有していることとともに重要なのは、資本や人的ネットワークへのアクセスが洗練されていることだとRuusalepp氏は主張する。

 「スタートアップがシリーズBやシリーズCの投資ラウンドで資金調達を求めるだけの成熟度を備えている場合、自身も早い段階で特定の企業にすでに投資してきたエストニアのスーパー創設者たちは、そのスタートアップをロンドンやシリコンバレーの巨大ベンチャーキャピタルに橋渡しするためのコネクションを豊富に持っている」(同氏)

 VeriffのCEOであるKotkas氏は、エストニアではスタートアップ創設者がすでに数世代に及んでおり、そうした創設者たちは、自身の事業からうまく撤退し、現在は、可能性を秘めたエストニアの新しいスタートアップやプロジェクトを探していると指摘する。

 その様相は、Startup Estoniaがまとめた統計データとも一致している。2020年にスタートアップに提供された資金のうち、約3100万ユーロはエストニアの投資家によって提供されたものであり、その投資家の多くは国内のユニコーン企業に関与した経歴を持っている。

 そして、彼らの支援は金銭的なものだけにとどまらない。

 エストニアは、スタートアップの創設者たちがFounders Societyと呼ばれる結束の固い協会を設立した唯一の国かもしれない、とRuusalepp氏は主張する。エストニアのスタートアップ界における行動規範は、創設者同士が助け合うことだという。

 「私は、他の何十人ものエストニアの創設者たちに助けを求めることができる。彼らは時間を見つけて、私の話に耳を傾け、相談に乗っててくれる。逆に、彼らにそうされることもある」(同氏)

 強い一体感を持つことで、スタートアップの創設者たちは経験を共有できるだけでなく、政府やエストニア内外の他の業界に対して、団結したパートナーとなることもできる、というのが同氏の考えだ。

 「創設者は、すでに同様の課題を乗り越えてきた経験を持つ他の創設者たちから学ぶことができる。エンジニアが他の優秀なエンジニアから学び、ビジネス開発者が他の優秀なビジネス開発者から学んできたように」(Ruusalepp氏)

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]