Voicy緒方氏が語る過熱する「音声SNS競争」の行く先--Clubhouse公開インタビュー - (page 2)

「楕円アイコン」から滲み出るこだわり

——roomで表示されるのもほぼアイコンだけなので、人によっては文字を入れたりもうアイコン芸ですよね。アイコンでどうやって見せていくかっていうところもこのサービスの肝になっていくのかなって。

 まだアイコンに文字を入れてる人、あまりいないですね。これから増えてくるんだろうなとは思いますけれど。あと、アイコンに関して言いたいことが、顔の丸が楕円ってことです。サービス設計者目線になってしまうんですけど、Voicyでは、人を表すときは丸にしようと思ってアイコンを丸にしたんですね。当時、TwitterとかFacebookも全部四角だったんですよ。それで、すごいバカにされて。

 「みんな写真を四角に撮るんだから、丸だと端が切れてしまう」ってめっちゃ言われたんです。丸って中に文字を入れにくいんですよね。でも、僕らは、人の温かみ表せる形は丸で、コンテンツが四角の方が面白いって思ってました。

 結局、そのうちTwitterもFacebookも全部顔のアイコンが丸くなったんです。でも、いざそうなったら輪郭のデコレーションぐらいしかできなくなって、やっぱり書くところが少ない問題はそのまま。この限りなく四角に近いのに温かみの丸を残したっていうのは、めっちゃうまいですよね。

Clubhouse急伸は「コラボのしやすさ」にあり?

——Voicyのユーザー層やパーソナリティの層とも違うと思うのですが、ぶっちゃけClubhouseはVoicyにとって脅威になるのでしょうか。

 超絶にウェルカムでして、めちゃくちゃいいタッグが組めると思います。Clubhouseって、本当に音声SNSと言うべきなのか怪しいんですよね。どちらかと言えば「集会場サービス」という感じ。アメリカでよくある「タウンホールミーティング(対話集会)」というか、それをこのコロナのタイミングでもできるように削ぎ落としまくったような印象です。イベントを小さくしたっていう風にも言えるのかなと思っていますね。

 一方で、Voicyはアーカイブして音声コンテンツを残して繰り返し聴いたりとか、ナレッジとして残したりとか、ヒューマニティやヒストリーなど、その資産が残っていく設計になっているんですよね。こちらは人とのつながりを、喋りで表現した感覚です。VoicyはあまりSNSじゃないですからね。

——この1年でZoomも一気に普及しましたけど、顔を出したくないときもありますよね。Clubhouseなら声だけなのでお風呂上がりのパジャマ姿でも参加できるので、ステイホームとの相性がいいですよね。

 日本も緊急事態宣言中で多くの人が家にいるタイミングで流行りましたからね。信じられないくらい忙しい人たちが、みんなすごい時間をClubhouseに使っているから、びっくりしますよね

——みんな多分、大事な仕事をそっちのけで、いまClubhouseしていますからね(笑)

 僕なら「コメントとか欲しいな」と思ってしまいますが、その機能を作らなかったのがすごいですよね。たしかに、ギャラリーの反応が見えすぎると、喋る内容って変わってくるので。これ、room内にはギャラリーの人数も出ないじゃないですか。room一覧に戻らないと今何人いるのかわからないんですよね。

 だから喋っている最中でも、「みんな減ってきたからテンション下がる」とか、「みんなどう考えてるかな」とか全く気にする必要がなくて、スピーカーだけでどう世界を作っていくかを考えているのが新しいですよね。今までのSNSって「1対N」の配信に意味がありましたが、Clubhouseは違うんですよね。1人で講演してる人もほとんどいないと思うので、人と人とがマッチしながらSNS感を出している。

 YouTubeがグロースするのも、コラボが一番の主戦場になっていますし、コラボをしやすいように作っていけばいいじゃないって考えることも1つあり得るなと。今後、動画でも同じように、コラボすることがメインのサービスが出てくる可能性はありますよね。

緒方氏が考えるClubhouseの「マネタイズ」

——Clubhouseはこれからどうマネタイズしていくと思いますか。

  Clubhouseが宣言しているのは、チケット制や投げ銭の可能性ですよね。ただ、世の中のSNSって言われるものに、課金を前提に大きくなったものってあまりないんです。Twitter、Instagaram、YouTubeなんかもそうです。爆発的に大きくしていったら、あるレベルを超えたときにそのインパクトがお金に変わるって言うモデルも結構あります。その手前ですぐマネタイズする必要ってあるのかなとは思いますね。

 たとえば、TwitterやInstagramは一定規模に到達してから広告を入れる形になりました。ただし、音声広告でそのモデルは難しいと思います。喋っている最中に突然CMが流れて、実はスピーカーがまだ喋っているとかなると、めちゃくちゃイラつきますよね。きっとYouTubeのCM以上にイラつくのでは。そうなったときには、YouTube Premium以上に課金率の高いものになることもあり得なくはないんですね。

 日本のSNSで考えると、ちょっと海外とは事情が違っています。日本の場合は、企業案件を取ってくるのが王道的に必要。 だから日本で投資家を集めている僕たちは、企業案件をきっちりやらないと形になりません。

 でも、アメリカでこんなに簡単にバンバンユーザーを集めているサービスは、企業は1番最後でいいと思っている。「こんなに大きくなっているサービスにまだ関わらせてくれないんですか」と指をくわえている企業たちを放っておいてどんどんグロースさせていく。ああいう暴力的なグロースは、全起業家が夢見るんじゃないかなと思いますね。日本でもこれができたらいいのになぁと。

 さらにSNSの話で言うと。……藤井さんこの話って面白いですか?

——めっちゃ面白いですよ。(音声だけなので)顔が見えないんですけどね(笑)。めっちゃニヤニヤしています。

Clubhouseは「チャンネルをちょこちょこ回す感覚」

 よかった。僕、もう1つSNSで考えていたことがあって、海外の方がSNSの伸びが高いというかうまいですよね。日本は全然できない。なんでだろうって、ずっと思っていたんですよね。日本って良い商品を作って安く売るっていうのはとても得意なんですよね。良い車を作ってリーズナブルに売って、そりゃみんな買うと。でも、日本は売り方で工夫していないんですよね。一方、アメリカは壊れやすいアメ車なのにそれをなんとか売らなければならないんですよ。そしたらブランディングとマーケティングが上手くなるわけですよね。

 それと同じで、SNSの世界で海外由来のものって、ブランド付けが上手いと思っています。使っている人がダサイとかちょっとオタクっていう感じの空気がないんですよ。新しいしスタイリッシュだねっていう感じでデザインだったり世界観だったりをしっかり作ってくる。

 一方、日本のサービスは、「2ちゃんねる」とか「ニコ動」とか、「ああいうのが好きな、そっち系の人がやってるんだよね」という雰囲気があって、スタンダードなスタイリッシュなところになかなか行けない。そこをちゃんと作り込まないと、どんどんグロースしていって友達にも紹介したくなるようなツールにはなっていきづらいと思うんですよね。

 もちろん海外のSNSもブランディングが下手なところもたくさんあると思うんですが、ことこのClubhouseは非常にスタイリッシュだと思います。ただ参加して話を聴くだけでも、デザインとか悪かったらなんとなく惨めになる可能性もあったと思うんですよ。でも、何か聴いているだけでちょっとスタイリッシュで「俺も聴いてるよ」って言えるような感覚がありますよね。

——ClubhouseのUIで面白いなと感じたのが、リスナーもアイコン一覧で確認できることですよね。そこで知り合いを見つけたらフォローしたりとか、ライブ会場でたまたま遭遇した知り合いに声をかけるみたいなノリがありますよね。このリスナーも置いていかない感じが良いですよね。

 置いていかないとは言っても、何もないんですけどね(笑)。「この放送面白いよ」っていう話はどこにもできないんですが、シェアのさせ方はこれまでのTwitterやInstagramなどと違いますね。Clubhouseは自サービス内ではなく、他のサービスを使ってシェアさせている感じがする。今までとは違うぞというのをすごく考えてるなぁと。

 あと、TikTokで1番強いのが「レコメンド」機能と言われていますが、音声のレコメンドって難しいんですよ。Voicyをやっていてもすごく辛いところです。1人の好きなパーソナリティがいる人に、2人目、3人目の提案ってなかなかしづらい。

 音声だと、新しいものを探しに行くってなかなかしないんです。全然関係ないものを何かのコンテンツが終わった後に流したら「こんなもん流すな」ってクレームがたくさん来ます。なので、出会いをとにかく簡単にさせて、とにかくぶつけてパーソナライズしてレコメンドっていうところが、動画と全く違うんですよね。

 Clubhouseは、roomをすぐ移動できるようにして、フェスというか「あっちでもこっちでもやってる」感を作ったことがすごい。たとえば、SHOWROOMだと、自分の好きなアイドルに対して「ダルマ」を投げられるんですが、他のルームに行けば「ダルマ」がもらえるみたいな仕組みを採用しています。でも、これではちょっと北風感がある。 Clubhouseは、チャンネルをちょこちょこ回していくような感覚で、部屋を移動させているのがすごい。すごいところは、ほかにもたくさんあるんですけども、これが世界初と言えるくらいすごいところだと思います。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]