シリコンバレーのベンチャー企業、Arevoは7月14日、自社の3Dプリンターを活用したオーダーメイドユニボディカーボンファイバー製スポーツバイク「Superstrata(スーパーストラータ)」の予約キャンペーンをクラウドファンディングサイト「Indiegogo」にて全世界同時にスタートした。
Indiegogoでの展開に先駆け、ティザーサイトを公開した。Arevo 日本ゼネラルマネージャーの田中大祐氏によれば、最新情報が得られるメール配信の登録者数は全世界で2万3000人にのぼり、うち約10%が日本人の登録だったという。日本でも早くから注目されていた製品といえる。
カーボンファイバー製のスポーツバイク自体は古くから存在するが、“世界初”をうたうSuperstrataはなにがすごいのか。
「まず、体型と身長、体重、ライディングスタイル、自転車の経験などにあわせて、約50万通り以上からカスタムメイドできること。3Dプリンタでフレームを一人一人に合わせてプリントする、テイラーメイドスーツのようなスポーツバイク。いままではそうした技術が存在しなかった」(田中氏)と説明する。
また従来のカーボンファイバー製のスポーツバイクは高価で、安くても50万円、高ければ200万円に近い。そうした中、オーダーメイドながら価格は従来のものより大幅に抑えている。
ユニボディのフレームに11段の変速機を搭載した、シートチューブのない軽量で頑丈なスポーツバイクの「Superstrata Terra(スーパーストラータ テラ)」が2799ドルで、キャンペーン価格は53%オフの1299ドル(日本円で約13万9333円)。Terraより若干太いフレームの中にバッテリーを搭載したE-Bikeの「Superstrata Ion(スーパーストラータ イオン)」が3999ドルで、キャンペーン価格は55%オフの1799ドル(同:約19万2964円)だ。なお、Superstrata Ionは、2時間の充電で約90kmの走行が可能。ほか、ホイールのみの提供もある。
IndigogoにてSuperstrataキャンペーン終了後に専用サイトから身長(身長140cm〜2mまで対応)、体重、腕や脚の長さなどの体型情報、ライディングポジション、好みのオプションを入力することで約50万通り以上の組み合わせから自身に合った自転車にカスタマイズできる。また、ハンドルや色を選ぶことにより、さらに個性的なバイクに仕上げられる。2020年12月から先着順で出荷が開始される予定だ。
安くできる理由は、Arevo製3Dプリンター「AQUA(アクア)」の活用にある。従来のカーボン加工は“職人技”に頼る部分が大きいが、プリントヘッドも含め自社開発した3Dプリンタにより、コストがかかる要因となっていた部分をソフトウェアでシミュレーションするなどして解決したほか、仕上げ作業などもロボットを活用することにより低価格を実現したという。
また、カーボンバイクならではの軽さはそのままに耐衝撃性を備えているのもSuperstrataの特徴の一つだ。一般的に、カーボンファイバーは軽くて強度が高いと言われるが、一点集中の力には弱い側面も持っているため、落車した場合や事故で接触したりすると割れる恐れがあり、気軽に使える自転車ではなかった。
それを解決したのが、鉄の60倍以上の強度対重量比を持つCFRP(カーボンファイバー複合素材)とArevo独自のDED(Direct Energy Deposition)技術だ。「これまでは、炭素繊維をみじん切りにして溶かしてつくるのが一般的。みじん切りにすると(繊維の)方向がバラバラになるので強度が弱くなる。連続炭素繊維フィラメントにレーザを照射し、上からローラーをかけることで上と下が同じもののようにくっついて、剥がれない」(田中氏)と強度を保てる理由を説明した。
なお、安さにはもう一つ理由があるという。今回のSuperstrataは、Arevoの3Dプリンティング技術の認知拡大を目指したもので、Indiegogoの価格は「ほとんど原価」(田中氏)という。Arevoは、大型で複雑な連続CFRP複合材製品の設計と製造を自動化する3Dプリンターを開発・販売しており、自動車、重工業、建設、航空宇宙などさまざまな分野の顧客に対して最先端のソリューションを提供している。
軽く強固な素材を生み出せることで、航空機パーツの軽量化による燃費改善や、より大きくより固いタービンが作れることによるエネルギー業界への貢献など、Arevoの3Dプリンティング技術にはさまざまな可能性がある。
Superstrataを皮切りとし、“世界中のものをより軽くする”と意気込む。得意なものは大きなもので、苦手なものは出力ヘッドの大きさから「バスケットボールより小さいもの。得意なことを生かし、無限に大きいものをつくることを目指している。オープンな環境で使える技術で、クリーンルームも必要がない。将来的には、ジャンボジェットそのものも手がけたい」(田中氏)と語った。
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