サッカー選手の本⽥圭佑氏、元ネスレ⽇本代表取締役社⻑兼CEO ⾼岡浩三氏、元FiNC Technologies代表取締役CEO 溝⼝勇児氏は、5月28日にオンライン記者発表会を開き、3者が共同ファウンダーとなって「WEIN 挑戦者FUND」を設⽴することを発表した。
WEIN(ウェイン)とは、Well-Being(ウェルビーイング)の造語だという。溝口氏は冒頭、WEIN挑戦者FUNDについて、「21世紀の課題に挑む挑戦者を支援し、自らも事業を行い課題解決に向け挑戦するファンド」であると説明。(1)スタートアップ投資、(2)自社事業の創造、(3)共同事業の展開という3つの軸で活動するとしている。
投資だけではなく、⼈的リソース、成⻑資⾦戦略、 マーケティングなどのノウハウを、プロフェッショナルがハイレベルで体系的にサポートするという。対象は、Well-Beingの領域で、21世紀の課題解決に向かう全てのスタートアップ企業だ。
また、スタートアップのエコシステムという観点とWell-Beingの領域で、⾃社事業も創造する。そして、大企業やスタートアップとの共同事業で、サービスを広げていくという。
「20世紀の課題は、『戦争・貧困・病気』だった。日本は、世界で最も寿命が長く、貧困も少なく戦争もない。21世紀の課題は、『孤独・退屈・不安』である。寿命が伸び、オンラインの活用などで生産性が向上して時間が余っていくなかで、これらの感情に苛まれる人が増えるのではないかと考えている。」(溝口氏)
溝口氏は、「Well-Beingこそ21世紀の課題を解決する鍵になる」と話し、Well-Being領域の市場規模は大きく、市場規模成長率も高いことや、日本の起業率が欧米諸国と比べて2倍以上の差があることにも言及。
そのうえで、「挑戦する人は少しずつ増えているかもしれないけれど、夢や志が社会に向く挑戦者はまだまだ少ない」と、共同ファウンダーである本田圭佑氏の言葉を借りて指摘しつつ、WEIN 挑戦者FUND設立の想いをこう語った。
「挑戦している間や、挑戦に関わっている時は、『孤独・退屈・不安』からは無縁なのではないだろうか。日本に、挑戦をする・挑戦に関わる人のための、国内No.1の挑戦者エコシステムを創りたい」(溝口氏)
続いて登壇したのは、3月にネスレ⽇本CEOを退任した高岡氏。現在は、個人で立ち上げた会社で、日本企業7社のイノベーション創出やDX(デジタルトランスフォーメーション)の支援をしているという。WEIN挑戦者FUNDへの参画決意について、こう話した。
「セカンドキャリアで果たしたい志と、WEIN挑戦者FUNDの志とが一致した。大企業に身をおきながら、本当の意味でのイノベーションを起こすという難題に、長年取り組んできた経験を生かしたい」(高岡氏)。
そして、日本でイノベーションが進まない4つの理由を明示した。最初に指摘したのは、「イノベーションとは何か」「真の社会課題とは何か」の定義が曖昧である点だ。
「顧客の問題解決から新しい価値を作り出す作業こそマーケティング。顧客が問題と認識していない、あるいは諦めているような問題を見つけて、これを解決するのがイノベーションであり、それ以外はリノベーションである。このような視点を持って、事業開発や投資を行わなければ、オープンイノベーションは成功しない」(高岡氏)
また、日本におけるベンチャー投資額が、米中と比較して圧倒的に少ないこと、スタートアップにおける人材・ノウハウの不足、イグジット機会の不足についても言及。投資額は、中国は日本の14倍、米国は53倍にもなる。また、日本ではIPOが主流だが、米国ではM&Aが圧倒的に多い。
高岡氏は「米国型へと切り替わっていく過程のなかで、WEIN挑戦者ファンドの役割は重要になってくる。大企業は、自社の将来のビジネスモデルの変革やイノベーションに通ずるスタートアップ企業を見つけて、一緒に事業を育てていくという姿勢が重要」だと話し、両者のつなぎ役として体系的にサポートしていく構えを見せた。
最後に登壇した本田氏は、自らの投資活動へのジレンマから、WEIN挑戦者FUNDの構想に至ったことを明かした。「世界の貧困をスタートアップへの投資を通じて解決できれば、という思いから始まった投資活動だった。起業家たちは出資してもらってからが本当の挑戦になるのに、僕はサッカー選手として活動していることもあり、お金を出した後は何にもサポートできていないというジレンマがすごくあった」(本田氏)
また、「世界を本気で目指そうという起業家には、なかなか巡り合わない」と、日本における課題を指摘。しかし本田氏は、「それは、起業家のせいではない」と断言する。
「たとえばシリコンバレーでは、挑戦する側、支える側の文化が成熟している。挑戦する側はミスが許容されるのでリスクが取れる、出資する側も投資先が世界にはばたくことで成功した時の利益が得られる、というエコシステムがうまく回っている。WEIN挑戦者 FUNDを通じて、日本の起業家が直面するリソース不足などの困難をサポートしていきたい」(本田氏)
本田氏は今後、米国ではドリーマーズファンド、日本ではWEIN挑戦者FUNDを主な投資元として、それ以外の国では引き続きKSK ANGEL FUNDを通じて、投資活動を行なっていくという。
今後、0号ファンドでは、3者が持ち合わせない知見を持つ起業家や投資家から最大20億円の創業支援を募る。1号ファンドでは、Well-Beingや「孤独・退屈・不安」というテーマに関心を寄せる大企業を中心に、100億円規模を目指すという。
また、0期創業支援メンバー/クローズドコミュニティの募集も、公式サイトで開始した。「アイディアや夢や志を、内包している人ばかりではない。そういう人たちに関わりたい、手伝いたいという人はいっぱいいると思う。そういう方達を巻き込んで、一緒に成長していきたい」(本田氏)
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