新型コロナウイルス感染拡大防止策として、リモートワークが急速に広がっている。その流れは、対面接客が基本とされる不動産業界でも同様だ。来店、内見、契約とあらゆるシーンに対面、紙書類といったオフラインでの作業が伴う不動産会社のリモートワークは実現しているのだろうか。
WealthPark、スペースリー、イタンジの不動産テック3社が、不動産会社のリモートワークについてオンラインセミナー「ロックダウンへの備え 不動産会社のリモートワークについて」を開催。通常業務からリモートワークへと切り替えた各社のやり方とオンラインで実践するユーザーのやりとりについて話した。今回は「不動産会社の現状と課題感、および管理対応について」をテーマにしたWealthParkについて紹介する。
WealthParkは、海外投資家が持つ日本不動産のアセットマネジメント、プロパティマネジメントを請け負うほか、不動産オーナーと管理会社をつなぐデジタルプラットフォーム「WealthParkビジネス」、不動産オーナー向けモバイルアプリ「WealthPark」などを提供する不動産会社。約90名いる社員の半分が外国籍で、東京都渋谷区にある本社のほか、上海、台北、ニューヨークにもオフィスを構える。
WealthPark SaaS事業部営業部長の石村裕樹氏は、前職のコールセンターで、東日本大震災や熊本地震といった災害を経験し、有事の際の管理会社における大変さを目の当たりにしてきたという。新型コロナウイルスについては、2月初旬から危機感を持って対応をしており、2月下旬にはリモートワーク推奨へと勤務形態を変更。すでに1カ月以上のリモートワーク経験を持つ。
石村氏は「テレワークという言葉もよく使われているが『テレ』とは離れたという意味。遠隔という意味を持つリモートはテレとほとんど同じ意味合いだが、あえて、チームで働くという意味も込めてリモートワークとしている」と前置きした。1カ月のリモートワークにおける実態を踏まえ、すでに改善にも取り組んでいるという。
リモートワークは、BCP(災害時などの事業継続)対策、コスト削減、ワークライフバランスの向上、優秀な人材の確保、業務生産性の向上などの目的を持つ新たな働き方。「災害時だけではなく、海外にスタッフがいる場合や、産休育休を経て働きたい人など、自由度の高い働き方ができるため離職率が低くなり、その結果業務の生産性が向上する」(石村氏)と、現状にとどまらず推進すべき働き方だという。
しかし不動産管理、仲介業務でのリモートワークには、さまざまな課題が存在する。石村氏は、リモートワークの課題として「システムの活用」「マネジメント」「業務の見直し」「その他」の4つを挙げ、「今回のように急遽リモートワークに切り換えて出てきたのは、社内システムの構築と入居者、オーナーの方の情報におけるセキュリティ対策、自宅にいる社員がどう基幹ソフトにアクセスするのか、という点だった」と話す。
WealthParkでは、基幹システム、ノートPC、FAX、電話というオフィスでの環境を、ノートPC、スマートフォン、モバイルWi-Fiで構築。ノートPCからVPN接続で基幹システムにアクセスできる環境を整えた。石村氏は「情報の抜き取りが心配とよく言われるが、VPN接続後、個人認証のプラットフォームを使うことで、セキュリティを上げられる」と説明した。
電話でのやりとりには、会社貸与のスマートフォンを活用。さらに「Amazon Connect」を使って顧客窓口をセルフサービスで構築する。「Amazon Connectはイニシャルコストが不要で、回線数を意識せず、必要なときだけPCを増やせるなどが採用理由。加えて重要だったがのが回線の割り振りができる点。社員のスキルによって、電話回答できるかどうかわからないため、だれから、どんな要件で電話がかかってきたのか、自動応答で対応し、それぞれの担当につなげている」(石村氏)とする。
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