Appleが999ドル(日本では税別10万4800円)からの新しい「MacBook Air」に「Magic Keyboard」を採用することにしたのは朗報だ。同社は2019年秋に発売した16インチの「MacBook Pro」で初めて採用したこのキーボードを、13インチのMacBook Proのアップグレードで採用するだけだったかもしれないのだ。MacBook Airはこのシリーズの中で最も売れているコンピューターであるため、キーボードの改善はより多くの人々に届く。性能とストレージの向上も歓迎すべきものだ。だが、Appleは簡単にできたはずのあるアップグレードを省略した。世界的な新型コロナウイルスへの懸念のため、多数の人々が在宅で仕事をしている今、この省略は少なからず影響を与えそうだ。
私が言っているのは、AppleがMacBook Air(とMacBook Pro)のカメラをいまだにアップデートしないことだ。MacBookシリーズのカメラは「720p FaceTime HDカメラ」で、その解像度は120万画素(1280×720ピクセル)と、一般的なスマートフォンのインカメラよりかなり解像度が低い。例えば「iPhone 11」のインカメラは1200万画素(4000×3000ピクセル)の広角だ。サムスンの「Galaxy S20 Ultra」のインカメラは4000万画素だ。Appleが新MacBook Airと同時に発表した新しい「iPad Pro」のインカメラでさえ、700万画素で、1080pの動画を60fpsで撮影できる。
世界中の人々が自宅で働き、ビデオ会議に参加する中、ノートPCのインカメラの有用性はスマートフォンやタブレットで自撮りする価値にはるかに勝る。Appleが最新のMacでこのような時代遅れな技術を選んだのは残念だ。
720p FaceTime HDカメラは2011年に提供開始したものなので、それからほぼ10年が経つ。Appleは2017年の「iMac Pro」では1080pのウェブカメラを採用した。つまり、他のMacを改善するための技術もパーツもあるということだ。Appleは、数ドルのコストを削減するために、最新技術を採用しない選択をした。この選択は、ビデオ会議に参加する顧客に不便を強いる過ちだ。
実際、新型コロナウイルス感染症の大流行が始まってから、米国のAmazonではウェブカメラが売れている。人気製品のほとんどは売り切れで、数週間再入荷待ちの状態だ。これらの製品のほとんどの解像度は1080p以上ということは、そのうちの幾つかはMacBook AirかProに設置されるとみていいだろう。Logitech(日本ではロジクール)は自社の人気ウェブカメラ「ロジクールC920s Pro」の宣伝写真でMacBook Airを使っており、同社のウェブカメラがMacBookシリーズのカメラよりも鮮明で広角なため、本体のウェブカメラの代替として最適であることを示している。
Appleの720p FaceTime HDカメラの問題は、解像度の低さだけではない。ホワイトバランスが貧弱で、映像の色を変えてしまう印象だ(例えばわが家の書斎の青い壁は紫に見えることが多い)。さらに悪いことに、低照度性能が低いとみられ、映像が粗くなり、明るい日中以外はそれほど使いやすくはない。iMac Proの1080pウェブカメラは改善されている。つまり、何度も言うようだが、Appleにはこの問題を修正するための部品はあるのだ。
公平を期すために書いておくと、この問題を抱えているのはAppleだけではない。レノボやHPを含むほとんどの主要PCメーカー製ノートPCのウェブカメラは、低価格スマートフォンのインカメラより粗末で時代遅れな720pだ。2019年発売のMotorolaの「Moto G7」は300ドルもしないが、インカメラは800万画素で、4K動画の撮影までできる。Appleや他のノートPCメーカーにとって恥ずかしいことだ。例外はMicrosoftの「Surface」シリーズだ。いずれも1080pの動画撮影が可能な500万画素のウェブカメラを搭載する。
かつて「iSight」シリーズのウェブカメラでPCによるビデオ会議を推進していたAppleにとって、かなりの後退だ。Appleがやろうと思えば簡単にMacBook Airに1080pカメラを搭載できたことが分かっているので、それ以外の点では堅実なアップグレードであっただけに、大きな失望だ。この製品は新型コロナウイルスの大流行よりかなり前に開発されたものとはいえ、世界中の人々が数週間あるいは数カ月間自宅で仕事をしなければならないと考えている今発売され、ビデオ会議に参加するためには別途ウェブカメラを購入しなければならないとすれば、残念なことだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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