水中ドローンに関するイベント「水中ドローン未来予想図2020」が1月22日に開催された。主催は一般社団法人日本水中ドローン協会。CES 2020ドローンブースに出展した水中ドローンメーカー各社への現地インタビューなど視察報告のほか、CES 2020でお披露目された注目の新製品「CHASING M2」、筑波大発ベンチャーFullDepthの「Dive Unit300」などが展示された。
水中ドローン市場は、2022年には52億ドル規模に達するといわれている。地球の約7割を占める海洋をはじめ、河川・ダムや養殖場での産業利用から、旅行やダイビングなどのレジャー用途も見込まれる。CES 2020を現地視察した、日本水中ドローン協会代表理事の小林康宏氏によると、ドローンブースに出展した水中ドローンメーカーは7社で、全て中国企業だったという。
水中ドローンのほかにも、ドローン事業を幅広く手がける小林氏は、ここ数年欠かさずCESを視察し経年変化を見てきた。「2020年は、ROBOSEA、Sublueなどの大手メーカーが展示スペースを大きく陣取り、大型の水槽を設置するなど豪華な装飾が目立った。水中ドローンの勢いを感じた」という。
同イベントでは、CES 2020出展各社に現地インタビューを実施して比較表を作成するなど、水中ドローンメーカーの最新動向が分かりやすく報告された。これによると中国の水中ドローンメーカーは、北京など大都市発の大手系と、深セン発のベンチャー系に大別される。
「2020年は、撮影だけでなく、物を掴むなど作業をできる拡張性が目立った。コストダウンも進みつつある印象。この7社以外にも水中ドローンメーカーは中国勢が多いが、海底調査など海洋ビジネスで用いられるROV開発を手がける企業は、アメリカやヨーロッパにも数多くある。海洋の9割以上が未開だ。水中ドローンビジネスは、より一層面白くなる」(小林氏)。
「水中ドローン未来予想図2020」では、CES2020でお披露目された新製品「CHASING M2」や、筑波大発ベンチャーFullDepthが2019年秋に発表した「Dive Unit300」の説明や展示も実施された。
CES2020視察にも同行したスペースワンの植木美佳氏は、日本でもファンの多い水中ドローン「グラディウスミニ」が2018年に世界に先駆けて日本で発表され、2019年9月には世界最小水中ドローン「Dory」が発表されるなど、CHASING社の歩みを振り返った上で、「CHASING M2」の特徴を分かりやすく説明。全方向移動可能、交換可能なバッテリー、水面からの自動帰還可能など、“現場力”の高さを強調した。
FullDepthの吉賀智司氏からは、「非GPS環境下でありカメラの視界が悪い水中でも、音響装置を活用して自己位置を推定できる」と中国勢に対して「Dive Unit300」の優位性が紹介された。自己位置を推定し、自律制御で動く水中のロボットを国産の技術で開発している点は、中国リスクが叫ばれるいま注目ポイントとなりそうだ。
ちなみに、音響装置を活用すると大容量データ通信が必要になるが、光ファイバーケーブルの先端に光信号を電気信号に変換する構造を自社開発し特許を取得している。群雄割拠の水中ドローングローバル市場での活躍に期待したい。
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