ANAが、羽田空港の制限区域内において「大型自動運転バス実用化」に向けた、自動運転レベル3相当の実証実験を実施する。実施期間は、2020年1月22日から31日。初日には自動運転バスお披露目の式典および試乗会を開催し、2020年内に羽田空港の利用客および従業員の空港内移動手段として試験運用を目指すことを発表した。
ANAは近年、自動運転技術の活用に積極的だ。2018年2月には、走る、停まる、曲がる、というベーシックな自動運転技術を検証し、2019年1月には、航空機や特殊車両も走る環境でのレベル3の実証実験を実施した。
そして2020年は遂に、「実用化」を見据えた羽田空港内における自動運転の試験運用を目指す。今回のポイントは3つ。建屋沿いの定点間ルートの走行。輸送能力の高い大型バスサイズの採用。そして、電気バス採用によるCO2排出量削減への貢献だ。
前回の使用車両は、やや小型な日野ポンチョ(ディーゼル)で、定員は28名。今回採用した中国BYD製の電気バス「K9RA」は、定員57名で約2倍の輸送能力となった。バッテリーは、リン酸鉄リチウムイオン電池で、容量324kWh、航続距離は250km以上。
式典に登壇した全日本空輸代表取締役専務執行役員の清水信三氏は、「BYDはグローバルで大型電気バスの運用実績を持つ」と採用した理由を説明。ビーワイディジャパン代表取締役社長の劉学亮氏も、「BYDの車両は、50の国と地域、300都市で走行し、日本でも京都、沖縄、福島などでスマートなまちづくりに貢献している。今後、日本向けバスの販売予定もある」と明かし、日本市場への意欲を示した。
K9RAをベースに、自動運転車両への改造を担ったのは、先進モビリティ。前回の実証実験では自動運転技術に磁気マーカーを用いたが、今回はSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を採用した。
SLAMとは、自己位置推定と周囲環境地図作成を同時に行う技術で、GPS受信が不安定になる建屋沿いの走行に備えた。実証実験開始前に、予定ルートを約1ヶ月弱、繰り返し走行して基準マップを作成。それに沿ってSLAMを活用し、自動運転を実現している。
先進モビリティ代表取締役社長の青木啓二氏は、「SLAMは、道路にマーカーを設置するなどのインフラ工事が不要で、設備投資全体で見るとコストを抑えられる反面、暗所や周囲に何もない場所では信頼性に課題がある。将来的には、GPS、磁気マーカー、SLAMなど複数の技術を組み合わせて信頼性向上を図りたい」と語った。
自動運転バスの遠隔監視を担ったのは、前回の実証実験と同じくSBドライブ。自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」とバスを連携させ、車内や走行状況の見守り、危険時の乗客への注意喚起、扉の開閉などを行なった。
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