2019年、楽天は傘下の楽天モバイルを通じて新規参入した携帯電話事業で、インフラ整備の遅れやサービス開始後のトラブルが相次ぎ、信頼を低下させている。また、ヤフーとLINEの経営統合によって、国内のインターネット事業でも大きな脅威にさらされようとしている。モバイルを中心とした楽天の2019年を振り返るとともに、同社が抱えている課題を改めて確認したい。
楽天の2019年を振り返る上で、非常に大きなポイントとなるのは、やはり新規参入を果たした楽天モバイルの携帯電話事業であろう。楽天は2018年に4G向けの周波数帯免許を獲得して以降、2019年の参入直前まで、携帯電話事業に関しては非常に強気の姿勢を打ち出していた。
それを象徴するのがネットワークの優位性アピールだ。楽天モバイルはゼロからの参入という立ち位置を生かし、携帯電話のネットワーク機器を汎用のハードウェアとソフトウェアで実現する「ネットワーク仮想化(NFV)技術」を、世界で初めて全面的に採用すると表明。2019年2月にはスペイン・バルセロナで開催された「MWC 2019」に出展し、楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏が、その取り組みを携帯電話業界における「アポロ計画」と宣言するなど、先進性を強く訴えていた。
その一方で、楽天モバイルは完全な新規参入となることから、全国をくまなくエリア整備するには時間がかかる。そのため、2018年にKDDIと提携し、2026年までエリア外の地域などをKDDIとのローミングでカバーする方針が示されていたが、基地局を敷設するための場所やノウハウを持っていないことに対する懸念の声は少なくなかった。
そして2019年8月9日、不安は的中することとなる。同日に開催された決算説明会において、三木谷氏が楽天モバイルのサービスを「ホップ・ステップ・ジャンプでやっていこうと考えている」と話し、サービス開始当初から大々的に契約を募るのではなく、当初は小規模でサービスを始め、徐々に利用を広げていく方針を打ち出したのだ。
三木谷氏はその理由について、NFVを全面的に導入した世界初のネットワークであり、慎重に検証したいためと説明していた。しかしその後、楽天モバイルは基地局の設置を順調に進めることができず、総務省から2019年3月、7月、8月と3度にわたって指導を受けている。基地局整備の遅れが、サービス開始遅れの主因となっていることが見えてきたのだ。
しかも、楽天モバイルが商用サービスの内容を発表したのは、2019年10月のサービス開始から1カ月を切った2019年9月6日。そこで発表された内容も、2020年3月までは5000人の「無料サポータープログラム」会員を募り、その会員に対してのみ無料でサービスを提供するという、実質的な試験サービスというべき内容であったことから、多くの失望の声を呼んだ。
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