パナソニック アプライアンス社、テレビ事業に大きくメス--売上追わず、利益の質を変える - (page 2)

変化激しいアプライアンス事業、2021年度までに3つの変革完遂へ

 一方で、「投資領域」とする成長分野のくらしインフラ事業は、業務用空調、ヒートポンプ式温水暖房機の売上げ成⾧などにより、2021年度の EBITDAを、2018年度比で1.6倍に拡大。さらに、⾧期的には3倍以上に拡大する方針を打ち出した。

 「空調市場は、快適性のレギュレーション化や、空質への消費者関心の高まりなどを背景に、業界全体では年平均成長率が約5%という高い成⾧をみせている。そのなかでパナソニックは、これまでの『安いコストで冷やす』という、価値提供の軸を変える。今後は、快適性や健康面などのユーザー視点で、空気の価値を提供することを勝ち筋と捉え、設計から施工、サービスまでのバリューチェーンの強み、デジタル技術やIoTソリューションなどの強みを活かし、高収益モデルを目指す」とした。

 日本、中国、アジアの業務用空調では、パナソニック ライフソリューションズ社とのグループシナジーを生かして、10%以上の成⾧を目指すほか、日本における電材事業とのパッケージ提案、アジアではセイバーとの協業や換気商材の強化などを進める。

 「ライフソリューションズ社との連携では、中国において、空調、空質のチームが一体となり、富裕層をターゲットにした新たな商材開発を行っている。商品投入のスピードを重視し、顧客に近いところで成果を出していく」とした。

 欧州の業務用空調は、機器制御の強みを生かして、空調、換気、チラーなどの機器をクラウド連携させることで、付加価値の高いソリューションを展開するという。ここでは、システムエアーとの戦略的提携で商材や販路を補完。10%以上の成⾧を目指す。そして、欧州向けヒートポンプ式温水暖房機(A2W)では、脱炭素化によるボイラー置き換え需要を追い風に、IoTサービスの拡大などによって、10%超の成⾧を目指すとした。

 「欧州のA2W市場におけるパナソニックのシェアは、一桁後半で、5、6位であるが、日本のメーカーが中心であり、トップでも17%程度のシェア。勝者が決まっているわけではない。トップ3に入れる余地はある。積極的にヒト、モノ、カネの投資を行っていく」と述べた。

 また、食品流通については、ポートフォリオの入り替えを積極化する考えを示し、「これまでは、冷蔵ショーケースがメジャーな商材であったが、国内では過当競争になっており、収益性が落ちている。今後は、業務用厨房機器、飲料ディスペンサーなどの非ショーケース分野を強化し、リカーリングビジネスをしっかりと伸ばしていく。また、ハスマンは、北米市場での顧客の掌握力や顧客からの信頼には強いものがある」とした。

 白物家電などのくらしアプライアンス事業は、「ハードウェアによる本質的価値の追求」、「ソフトウェアによるUXの実現」、「共創による事業強化」の3点から変革を行うという。

 「ハードウェアによる本質的価値の追求」では、「改めて、本質的な価値とは何かを追求した商品を2021年度に発売する」と宣言。培ったくらしのインサイトと要素技術をかけあわせ、商品が持つ本質的な価値をハードウェアで追求するとした。すでに提供している具体的な事例として、ヘアドライヤーでは、髪を乾かすだけでなく、髪をきれいにするという本質的価値を提案。洗濯機では洗剤の自動投入により、洗濯時の所作を短縮する価値を提供していることなどをあげた。

 「ソフトウェアによるUXの実現」では、顧客の嗜好や行動に合わせて、カスタマイズやパーソナライズされた快適なUXを実現することを示し、現在、食の分野において、ユーザーの嗜好にあわせたレシピ提案、食配などのサービスをパートナーとともに提供している事例をあげた。今後、ほかの分野にもこうしたサービス事業を拡大していくという。

 また、「共創による事業強化」では、パナソニック 中国・北東アジア(CNA)社との共創による原価力の強化と、グローバル共通プラットフォームを通じて、冷蔵庫、洗濯機などのメジャー白物家電を中心にした競争力の高い商品を、アジアやインドに展開していくことを示した。

 「テレビ以外のくらしアプライアンス事業も相当変化が激しいなかにある。急いで変革をしなくてはならない。2021年度までに3つの変革は完遂しなくてはならない」とした。

 品田社長は、くらしアプライアンス事業において、多様な商品ラインアップなどの強みに加えて、IoTやソフトウェアの強化を進めることで、商品が持つポテンシャルをハードウェアとソフトウェアの両面で引き出し、一人ひとりにふさわしい快適な体験を提供するとともに、心と体の健やかさを実現することを目指すとも語った。

 日本では、B2CおよびB2B2Cの新たな収益構造を構築。商品を基軸として顧客に寄り添い、そこで得た顧客理解をもとに、新たな販路の拡大や届け方の変革にも取り組むという。「日本の新築住宅の着工件数は、2030年には6掛け程度にまで減少する。今後は、住宅のストック市場に対してどんなアプローチしていくかが鍵になる。パートナーとともに、ここに新たな商流を作りたい」とした。

 くらしアプライアンス事業では、2021年度に、2018年度比で3.2ポイントのROICの向上を目指し、将来的には、10.4ポイントの向上を目指す。

 一方、品田社長は、新たにアプライアンス社が⾧期的に目指す姿として、「いつまでも、お客様に『心と体の健やかさ』をお届けし、しあわせを実現すること」をあげた。

 「これまでアプライアンス社は、家電を通じて、人々の豊かな暮らしの実現にお役立ちをしてきた。この経験とお客様からの信頼を踏まえ、これからの時代における『くらし』へのお役立ちが次の成⾧の柱になると考えている。人生100年時代において、より⾧く、豊かに生きるための本質的な価値が求められるなかで、いつまでも、お客様に心と体の健やかさを届けし、しあわせを実現することを目指す」などと述べた。

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