LINE Fukuokaは11月14日、スマートシティに関する初のカンファレンス「LINE SMART CITY DAY FUKUOKA 2019」を開催し、その中で台北市との情報提供を開始する構想を発表した。台北市は世界有数のスマートシティとして知られており、福岡同様LINEの公式アカウントを通した行政サービスを提供している。
この取り組みは、福岡市のLINE公式アカウントに登録するだけで、台北市を訪れた際に、台北の観光情報や天気などの情報が受け取れるようになる。逆に台北市のLINEアカウントに登録したユーザーが福岡市に訪れると、福岡の情報を受け取ることができる。構想の実現は2020年の春を予定しており、実現すれば世界初の国境を超えた行政のLINE公式アカウント活用となる。
カンファレンスでは、台北スマートシティプロジェクトのマネージャーを務めるダミアン・チン氏が台北のスマートシティの事例を紹介した。一つは先述したLINEの公式アカウントについてだ。台北市の公式アカウントに登録すると、一人ひとりにパーソナライズされた情報が提供される。ユーザー自身で欲しい情報を選択できるため、不要な情報を受け取らずに済むのだ。
例えば、公共トイレの場所やバスの到着時間など、日々の生活で必要な情報を選択可能。特に求められているのが洪水に関する情報だ。台北は台風が多く頻繁に洪水が発生する。災害時に限り駐車できるスペースが開放されることも、LINEで通知を受け取ることができる。
他にも交通に関する事例が紹介された。台北氏ではバイクや自転車のレンタルサービスが普及しており、いたるところにステーションが配置されている。それらの乗り物をLINEの公式アカウントを使い、電子マネーによる支払いで利用できるのだ。駐車場シェアサービスなども含め、こうしたサービスは民間企業が提供しているが、行政が規制緩和を進めたからこそ実現が可能になった。
規制緩和を行政に訴えかけ、実現させたのがダミアン氏が所属する「Taipei Computer Association」だ。同組織は、台湾のコンピューターメーカーで組成された社団法人。市役所の様々な部署と協力しあいながら、いかによりよい行政サービスを提供できるかサポートしている他、民間企業が行政に交渉する際のチャネルの役割も果たしている。
台北が世界有数のスマートシティになれた要因について、ダミアン氏は「高い技術力」と「実証実験による公務員の意識改革」だと答えた。台北氏は小さな国土の中にたくさんのIT企業と大学が存在し、高い技術力の基盤を築いている。そのため、スマートシティ化のアイディアが生まれた時には、スピーディーにそれらの技術力が集結しプロトタイプを完成させることができてしまう言うのだ。
しかし、高い技術力だけがあってもスマートシティは実現しないとも語る。これまでもテクノロジーを先行した街づくりを目指した結果、スマートシティ化に失敗してきた都市を見てきたという。テクノロジーと並んで重要なのが全市民、特に行政で働く公務員のマインドセットを変えることだと語った。公務員は新しい取り組みをして失敗することに、大きな恐怖を感じており、そのマインドセットを変えるために行ったのが「PoC(実証実験)」。新しいアイディアを小さな予算で実験してみるのだ。
民間企業の資金を使い公務員が安全な環境でPoCを繰り返すと、イノベーションが積み重なっていく。それに伴い、最初は及び腰だった公務員たちも段々と積極的になってきたと話す。イノベーションにはリスクがつきものだが、PoCにより大きな失敗を避けられるとダミアン氏は語った。
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