11月12日と13日の両日、「プロダクトマネージャーカンファレンス 2019」が都内で開催された。
主にITサービスを提供するベンダーのプロダクトマネジメントに関わる人々が自らの取り組みを語るなかで、初日のキーノートセッションに、ビデオコミュニケーションプラットフォームを提供するZoom Video Communications Chief Information Officer(CIO)のHarry D. Moseley氏が登場。Zoomのプロダクトマネジメントについて語った。
プロダクトマネージャーとは自社開発するプロダクトについて責任を持つ存在であり、ビジネスの成功やマーケティングまでを考えるポジションである。
日本ではかつて、システム開発プロジェクトの破綻が続いたこともあってプロジェクトマネジメントの概念が普及し、プロジェクトマネージャーという職種は定着しているが、プロジェクトマネージャーがどのようにして作るかを考えるのに対し、プロダクトマネージャーは何を何のために作るのかということを考える。どちらもPMと略されるなかで、海外ではむしろPMといえばプロダクトマネージャーと認識される率が高いといわれる重要な存在である。
Zoomは2011年に設立、当時すでに市場にはビデオ会議、ウェブ会議システムは様々な製品があったが、ビジネスシーンでの使い勝手やユーザビリティを追及した圧倒的なプロダクト力をもってデファクトツールのポジションを獲得した。
「Zoomに切り替えたユーザーの92%がパフォーマンスの向上、82%が信頼性の向上、91%がエンゲージメントの向上を示すなど、高い評価を得ている」(Moseley氏)という。他のクラウドベンダーとの連携も進め、年間での機能追加数は200件以上、2019年には月間の総ミーティング使用分数は80億分を超えている状況だ。
Moseley氏は2018年3月にZoomに入社。前職ではKPMGのCIOを務め、そのほかにもCredit Suisseをはじめ複数の企業でCIOを務めてきた。CIO Magagineで殿堂入りし、Computureworldの「世界のCIO 100人」の1人に選出され、「年間Wall Street 50の1人」としてIrish Magazineに表彰されるなど、実績とネームバリューを兼ね備えた人物だ。現在Zoomでは、CIOとしてビジネス価値を創出するための責任を負っている。
Zoomのプロダクトマネジメントでは、プロダクトに責任を持つポジションとしてトップにChief Product Officer(CPO)が存在し、Oded Gal氏がその職を務めている。さらにその下に、「Meetings & Webinars」「Rooms」「Chat」「Audio」「Data」「Marketplace」「Phone」というZoomを構成するプロダクトごとのプロダクトマネージャーが存在している。
Moseley氏によると、Zoomのプロダクトマネージャーに求められているのは、「業界の専門知識、Zoomカルチャーへの適応性、チームとの協調性、情熱」であるという。
「プロダクトマネジメントについては業界の専門知識を持つことはもちろん、チームで働くためにエゴを捨てて協調性を持つことが重要。カルチャーへ適応するために企業を理解して、企業の役に立つことは何かを考える。例えばCEOのEric Yuanは、朝起きて何か問題が生じて職場に来てもハッピーでないなら休んで問題を解決した方がいいと言っている。そして熱意をもって企業や製品、サービス、人々に対応する。自分の役割は何であれ、情熱を持つことが大切だ」(Moseley氏)。
またMoseley氏は、自らの体験を踏まえてプロダクト開発における重要な要素として、ユーザーが何を必要としているかを知ることを挙げる。「金融業界時代は、『何が欲しいのか』を『何が必要なのか』に変換させて成功を生んできた。ユーザーの声に耳を傾ける、それ以上に大切なものはない」と語る。
ユーザーの声に耳を傾けるための仕組みとして、「クライアントアドバイザリーボード」の活用を紹介した。それによって、「ボードメンバーは規制やセキュリティの観点からアドバイスをくれる。クライアントはオープンで、色々なことを教えてくれる。私は彼らを顧客でなくパートナーと思っている。Zoomの活用によるパートナーの成功を考えると我々も成功できる」(Moseley氏)という形になる。
働き方に対する自身の見解としては、決められたことをこなす規律主義から脱却し、自らを開発して楽しんで仕事ができるようになることを訴え、「自分の好きな会社で自分の好きな人たちと自分の好きなサービスや製品を作るといったように、楽しんで働けるようにすることがなにより大切」とメッセージを送った。
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