タクシー事業者などに向けた配車ソフトウェア、システムなどを展開する、みんなのタクシーが協業を加速する。11月5日、KDDI、NTTドコモを含む4社と資本業務提携を発表したほか、JR東日本との事業提携やソニーとの連携強化策を明らかにした。
みんなのタクシーは、都内タクシー会社であるグリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブの5社と、ソニー、ソニーペイメントサービスの合弁会社。2018年5月に設立し、タクシー配車アプリ「S.RIDE」を展開している。
みんなのタクシー 代表取締役社長の西浦賢治氏は「設立から半年が経過したが、S.RIDEの利用平均単価は2755円。競合他社の利用単価は知らないが、この金額は相当高いと感じている。1日あたりのアプリ配車と実車件数も公開時に比べ9月は約18倍、10月は22倍にまで伸びてきている」と現状を説明した。
S.RIDE以外にも、10月18日には位置特定サービスを提供するwhat3wordsと提携し、住所を入力する代わりに、3つの単語を入力するだけで目的地の設定を実現。10月25日には、乗車前に乗車予定地と目的地を入力すると、地図上の走行距離を踏まえて自動計算で運賃が表示され、確定する事前確定運賃サービスを開始。すでに国際自動車と大和自動車交通が保有するタクシー車両2052台に導入している。
ソニーとの連携強化では、大和自動車交通が保有するタクシーに搭載されているドライバー用タブレットに、ソニーのAI技術で開発した需要予測アプリを搭載し、商用サービスを開始したことを発表。需要予測のほか、乗車点予測、長時間乗車率、空車動態表示、おすすめルート表示、特需発生表示などの機能を備え、タクシー会社の稼働率と売り上げ向上に貢献するとしている。グリーンキャブ、寿交通、チェッカーキャブについても順次対応する予定だ。
安全運転支援への取り組み強化策として、8つのセンサーとLiDARを搭載した試験車両を用意。実際に走行し、センシングデータの収集やアクセル、ブレーキ、ハンドル操作などの運転操作記録を収集、解析し、危険予測データベースの構築を推進すると発表した。
データの取得により、安全・安心スコアを算出、熟練ドライバーとの差分評価などを実施。危険検知をもとにドライバーへの警告や注意を喚起する安全運転支援ツールを構築し、実際のタクシーに搭載して検証を開始するという。
ソニー 執行役員AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏は「都内におけるタクシーの平均距離は240kmと言われている。都内タクシー会社5社の車両における1年間の総走行距離は約6億km。タクシー車両は都内の複雑な交通状況の中、24時間高密度で走行している。タクシードライバーが都内で運転して得られる走行データは安全運転の支援において有効かつ価値のあるもの。センサーデバイスなどを適宜追加して、データ取得やセンサーの配置最適化など、安全運転支援の評価、検証を進める」とした。
一方、東日本旅客鉄道(JR東日本)とは、MaaS領域での事業提携を開始する。JR東日本が展開する、交通系スマートフォンアプリ「Ringo Pass」とみんなのタクシーの配車アプリのS.RIDEを連携し、両社のネットワークとアセットを活用することで、それぞれの事業拡大を目指す。2019年度中に、国際自動車、大和自動車交通、チェッカーキャブが有する約9000台のタクシー車両に設置されている後部座席のタブレットを、Ringo Passのサービス対応にするとした。
KDDI、NTTドコモ、ゼンリンデータコム、帝都自動車交通の4社とは資本業務提携を開始。金額については明らかにしなかったが、KDDIとは、MaaSの普及に向けたプラットフォームの共同構築やタクシーの新たなサービスの共同開発と商用化、ビッグデータを活用した新たなビジネスの共同検討等を推進していく。一方、ドコモとは、ドコモのdアカウントやdポイントクラブ会員基盤とS.RIDEの連携により、移動の支援やタクシー車内におけるd払いでのQRコード決済などの協業を進める考えを示した。
みんなのタクシーは、現在、東京都内23区と武蔵野市、三鷹市で展開しているが、2019年度内に多摩、横浜を始めとした関東地域のタクシー事業者と連携してS.RIDE配車サービスを導入する予定。西浦氏は「現在の実績が、競合サービスとの差別化ポイント。実績を積み、地方に展開していきたい」と今後について話した。
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