——ADDressのビジネスモデルは民泊との区別がつきづらいとの声もあります。
宿泊業ではなくて、賃貸借契約をしている住居になります。住まいかつ賃貸契約にこだわってビジネスモデルを組み立てていて、観光客を誘致したいわけではありません。
観光客の増加は観光業にはプラスに働きますが、波及効果は限定的です。一部の観光地では、許容範囲を超える観光客が押し寄せてしまうオーバーツーリズム問題が起きていますし、コペンハーゲンが観光終了宣言をするなど、観光に対するあり方が変化してきています。
短期滞在の人にたくさん来て欲しいと考えている地域ばかりではなく、暮らしを一緒に楽しんだり、何かを作ってくれる人を求めているんですね。地域に住んでいる人と触れ合ったり、仕事をしたり、一時的な市民を増やすことに重きを置いている地域もあります。
ADDressはこのコンセプトに大変近い。旅行に来て、短い滞在で去ってしまうのではなく、地域の人と交流し、プロジェクトを作ったり、イベントに参加したり、地域の担い手につながるような人を増やしたい。旅ではなく、地域で一緒に何かを作る人を増やしたいのです。
——実際にどうやって一緒に暮らし、地域に密着した人を増やすのでしょうか。
すでに自治体でも、旅行以上定住未満の「関係人口」を増やすために観光案内所ではなく、関係案内所を作っているところもあります。大事なのはそこに住んでいるユニークな人を紹介することですね。観光案内所が店舗や観光スポットの紹介だとしたら、関係案内所は地域の人の魅力を伝えることが大事。その人と出会うことで「また、あの人に会いに行きたい」となる人の魅力が、その土地との継続的なリピート関係を築くことになります。
ADDressは、ハードとして住まいだけでなく、地域とのコミュニケーションとなるソフトも提供していきます。地域の人が気軽に訪れる住まいを提供することで、会員はコミュニケーションをとりやすくなる。ハードプラスソフトの発想です。
定額制を採用しているのは、行けば行くほど割安になり、リピートしやすくなるから。そのため拠点もメジャーでなくても、面白い人に出会える地域であれば作っています。ADDressの会員になることで、知らない場所に行き、面白い人に出会える。そんな偶然を楽しんでもらいたいですね。
——面白い人がいる地域を探すのは大変そうですね。
拠点の運営管理を担う「家守(やもり)」の方に紹介してもらうことが多いですね。ADDressを運営していて、一番大変なのはこの家守を見つけることで、拠点を開設するかしないかは家守がみつかるかどうかが選択基準です。現時点では紹介いただくケースが一番多く、市役所や商店街の方にお願いしたりしています。ただ、ありがたいことに家守希望者は多く、現在でも200人以上の方にエントリーしていただいています。
家守の方は年齢も職業もさまざまで20~60代がメイン。実際81歳の方もいらっしゃいます。家守の方がいるおかげで、旅行では得られない関係づくりをサポートできます
——拠点となる物件はどうやって探しているのでしょうか。
同様に地域の方に物件オーナーの方をご紹介いただくケースが多いですね。一部を除いてサブリースで運営しています。日本の空き家は状態がいいケースが多く、水回りなど部分的な修繕で使えるようになります。
各拠点では家具、家電付きで、着替えだけあれば生活できる環境を整えています。アメニティグッズや家具などを提供する企業パートナーと提携しているので、品質の良いマットレスなど、住み心地も重視しています。
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