5月8日に発表されたソフトバンクの2019年3月期決算は、売上高が前年度比4.6%増の3兆7463億円、営業利益が前年度比12.8%増の7195億円の増収増益となった。ソフトバンク上場後初の通期決算となったが、順調な業績となったようだ。業績の伸びは通信事業の拡大が影響しているようで、ソフトバンク、ワイモバイル、LINEモバイルの3つを合わせた、スマートフォン契約数は前年度比10%増の195万件に達したという。
ソフトバンクについても注目されたのは、やはり今期ではなく来期の業績に関してだ。ソフトバンクは今回の決算で3つの発表をしている。1つ目はフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行を促進するための新しい料金プラン「スマホデビュープラン」である。
2つ目は、QRコード決済の「PayPay」に関してだ。PayPayは利用者に100億円を還元するキャンペーンを2度実施するなど、積極的な投資で顧客獲得を推し進めているが、QRコード決済を巡っては参入事業者が大幅に増え、競争激化が著しい状況だ。
そうしたことからソフトバンクの代表取締役社長 執行役員 兼 CEOの宮内謙氏は、一層の競争力強化に備えてソフトバンクグループからの投資を仰いだとのこと。その結果、ソフトバンクグループが460億円を出資して資本金を倍増するとともにPayPayの筆頭株主となった。それゆえPayPayは、今後も大胆なキャンペーンを展開する可能性が高まったといえる。
そして3つ目の発表となったのが、同じソフトバンクグループ傘下で兄弟会社の関係にあるヤフーを連結子会社化することだ。これによってソフトバンクの2020年3月期業績予想にはヤフーの業績も含まれることとなり、売上高はヤフーの業績を含めた当期比で9900億円増の4.8兆円、営業利益は300億円増の8900億円を見込むとしている。
ソフトバンクはヤフーの連結化で非通信分野の事業拡大を目指すとしている。そこで気になるのは、同社はこれまでソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先企業との合弁による新規事業に成長を見出そうとしていたことだ。にも関わらず、ヤフーを連結化する必要に迫られたのには、やはり主力の国内通信事業が、行政からの強い値下げ圧力を受けており、それに伴って競争が激化している影響が大きいのではないかと見ている。
ソフトバンクはすでに「ウルトラギガモンスター+」などで分離プランを導入済みであることに加え、ドコモの新料金プランに関してもサプライズが少なかったことから、「微調整をする可能性はある」としながらも、現在の料金プランで対抗できると宮内氏は話す。ただ、ソフトバンクの決算発表後となる5月13日に、KDDIが通信量無制限の新料金プラン「auデータMAXプラン」を投入していることから、対抗策が求められるのは必至だろう。
それに加えて10月には、Eコマースなどでヤフーと競合している楽天が携帯電話事業に参入する予定だ。そうした厳しい競争環境下で、合弁による新ビジネスの成長を待つには時間が足りず、ヤフーを傘下に収めて連携を強化することに活路を見出すことになったといえそうだ。
とはいえ、ヤフーの子会社化のスキームを見ると、実質的にヤフーを通じてソフトバンクから現在の親会社となるソフトバンクグループへ資金を融通しているようにも見えなくもない。5月9日にソフトバンクグループが開催した決算説明会で、同社の代表取締役会長 兼 社長である孫正義氏は、宮内氏からの打診があった時に否定的な対応をしたと話すなどして、資金繰り目的であることを否定している。
そうした疑念を払しょくするには、やはりソフトバンクとヤフーによる明確な連携の成果が求められる所かもしれない。
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