Fordは2018年5月、全盲者や視覚障害者が世界を「見える」よう支援する車窓用の点字デバイスを発表した。「Feel the View」は車窓の振動を利用して、外に何が見えるのかを伝える。
このプロトタイプ技術は、内蔵の外向きカメラで撮影した画像をグレースケールのイメージに変換する。グレーの濃淡が、さまざまな強度の振動に変換される。人が窓に触れると、その振動を点字のように感じることができる。
Feel the Viewには、音声アシスタントとAIも組み込まれており、画像の関連情報を提供することができる。
ロチェスター工科大学のKristen Shinohara助教授によると、アプリが進歩し続けても、スマートフォン自体にまだ問題があるという。Shinohara氏は同大学でCenter for Accessibility and Inclusion Research(アクセシビリティーおよびインクルージョン研究センター)の運営に携わっている。同氏が注力しているのは、障害者にも使える技術の設計だ。
Shinohara氏は電子メールの中で、次のように述べている。「幸い、スマートフォンアプリを視覚障害のあるユーザーにも利用できるようにする必要性について認識が高まりつつある、と言ってもいいだろう。だが、現在のスマートフォン技術でそうしたユーザーが利用できる機能を設計し、実装する方法については、まだ知識が不足している」
とはいえ、Kidkulさんはこれらの技術の成果も感じている。Kidkulさん自身、スマートフォンやデスクトップコンピューター、さらには視覚障害者向けメディアプレーヤー「Victor Reader Stream」や点字ディスプレイなどの補助デバイスの使い方を教えている。Kidkulさんによると、スマートフォンは、全盲者や視覚障害者がさまざまな場面で強いつながりや自立心を感じられるようにするという点で、大きな進歩を遂げているという。交通機関を含むさまざまな場所、友人や家族と連絡を取り合う場面、さまざまなものを購入したり識別したりする場面でそのように感じられるのだという。
「私はこれらのアプリの多くを自分で使用しているが、ここBraille Instituteの技術指導者として、テクノロジーは全盲者と視覚障害者の生活を一変させてきたと断言できる。私たちはスマートフォンを使って、晴眼者とほぼ同じことができる」(Kidkulさん)
しかし、改善の余地があるというShinohara氏の考えには、Kidkulさんも同意している。Kidkulさんによると、デバイス自体のアクセシビリティー機能を向上させ、アプリにアクセシビリティー要素を組み入れることに関して、開発者をもっと教育する必要があるという。例えば、ボタンや画像にラベルが付与されていないせいで、音声読み上げ機能の「VoiceOver」や「TalkBack」がそれらを識別できないことがよくある。さらに、Kidkulさんによると、地図は視覚的な要素が大きく関わっているため、改善の余地がある分野だという。
必要なのは、技術設計の考え方を根本から変えることである、とShinohara氏は言う。全盲者と視覚障害者だけを対象にアプリを設計するのではなく、アクセシビリティーを最初から開発プロセスに組み込む必要がある。
「適切な要素を作るということに注意を払っていれば、技術的には、ほぼすべてのアプリは全盲者と視覚障害者が使用できるものになる」(Kidkulさん)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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