Microsoftの物語は、もはや「Windows」を中心に回ってはいない。実際、Microsoftが重視しているのはクラウド(「Azure」)であり、「Office」であり、「Dynamics」から「Skype for Business」「HoloLens」といった企業向けソフトウェアだ。Windowsって何、というくらいなのだが、それでもMicrosoftは「Windows 10 Creators Update」を発表した。もっと重要なのは、「Windows 10 S」だ。Windows 10 Sは、ARM版PC向けに設計されており、Microsoftにとっては、1つの飛躍だ。「Snapdragon」プロセッサを展開するQualcommは、この参入機会を大歓迎している。
QualcommとMicrosoftは、ASUSとHPをパートナーとして、Windows 10 S搭載のハードウェアを発表した。最大の売り文句は、長いバッテリ持続時間と、LTEによる常時接続である。Microsoftにとって、Windows 10 SはPCの未来であり、セキュリティの高いモデル、メインストリームのエミュレーションということになるのかもしれない。となると、次の問題はWindows 10 Sデバイスが売れるかどうかということになってくる。
2017年で最も喜ばしかったトレンドの1つは、モノ作りに対する情熱が続いていることだ。「Raspberry Pi」の販売数が1500万台に達した。開発元が、1000台も売れれば上等だと考えていたことを考えると、驚異的な数字である。PCが進化してきた根幹にあるのは、機械いじりとモノ作りへの情熱だった(Steve Jobs氏のガレージで生まれた「Apple I」を思い出してほしい)。PCが密閉された筐体に収まり、自己責任で触らなければならなくなった時代の、はるか前の話だ。
Raspberry Piなどのデバイスと、無数に出現した模倣品が、長らくハードウェアから失われていたエネルギーと創造性を取り戻してくれた。シンプルで楽しいのはもちろんだが、それだけではない。大手IT企業がごう慢になり、遠い存在になっていく中で、Raspberry Piのようなデバイスはテクノロジを再び民主化する支えになる。
次の世代が、シングルボードコンピュータをいじることで、ハードウェアとソフトウェアのエンジニアリングを深く理解し、いつも使っているデジタルサービスを支えているものを理解するようになれば、いっそう賢いユーザー、しかも要求の厳しいユーザーが生まれることになるだろう。
トレンドということを語るなら、2017年最大の話題が人工知能(AI)だということに異論の余地はない。AIは事実上どこにでも存在し、ほぼあらゆるものに組み込まれていることになっている。だが、クラウドやビッグデータのような過去のトレンドと同様、最近「AI」と呼ばれている多くのものについては、疑ってかからねばならない。その多くは、かつて「アルゴリズム」とか「コーディング」、あるいは「数学」と呼ばれていたものにすぎないからだ。
北京とパリは、最新のスタートアップが集まる新たな2拠点だ。ベンチャーキャピタルやアクセラレーター、企業家に話を聞くと、スタートアップのほぼ半数は、AI系の企業だという。食料品の配達サービスだろうと、自撮りに革命を起こそうとしている携帯ドローンだろうと、売りはとにかくAIである。資金を調達するのに、それが最も効果的だからだ。
こうした点を踏まえて、企業は2020年までに500億ドル(約6兆円)近くをAIに投資することになる、とアナリストは予測している。一方、他の分野に対する投資額の予測は、ビッグデータ解析が2000億ドル(約23兆円)、モノのインターネット(IoT)にいたっては1兆3000億ドル(約147兆円)に及ぶ。つまり、AIは最も重要で、IoTでも特に影響力の大きい(そして、多くの他分野とも接点がある)分野かもしれないが、企業やIT部門が最もお金をかける分野とは限らないということだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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