――PC、スマホがアイトラッカーと最も相性の良いデバイスになりますか。
この2つはとてもエキサイティングな分野で、アイトラッカーの機能が重要な役割をはたします。同じくらい期待しているのがVRヘッドセットで、「HTC Vive」に搭載予定です。このジャンルはアイトラッカーが今後のキーになる技術だと確信しています。
実際、アイトラッカーを搭載すると、バーチャルの世界で出会ったキャラクターと目を合わせられるようになります。これが実現するとバーチャルの世界が一気にリアルに近づく。例えば、モニタ越しに見ていたゲームのキャラクターと同じ目線でコミュニケーションが取れますし、アバターを使ってバーチャルの世界で友人と会話する場合でも、実際に会っているような感覚を味わえます。
おそらくアイトラッカーは、VRヘッドセットに組み込むデバイスとしては最も効果的で直感的なものであると考えています。また、テクノロジの面でいえば、ユーザー視線の中心部のみを高解像度で描画する「Foveated Rendering」に対応することで、ハードウェアに求められるスペックを軽減しています。
もう1つ大きな可能性を持つのが自動車分野への導入です。車がドライバを認識することで、得られるメリットは非常に大きいです。疲れている、眠そうなどのドライバーの状態を把握することで、休憩を促すなど安全性の向上にもつながります。
自動運転は現在期待されている技術の1つですが、今後10~20年は半自動運転の時代が続くと予想されます。その時に車に搭載されているAIとアイトラッカーを組み合わせることで、車にとって必要不可欠な技術を提供できると考えています。
――既存のインターフェースを一変させるような潜在能力を秘めているアイトラッカーですが、まだ搭載機器はわずかです。広げていく施策は。
将来的にはおそらくすべてのユーザーが、各デバイスへのアイトラッカーの搭載を希望する時代がくると思っています。ただ時間はかかるでしょう。
2017年にもなっているのに、デバイスはまだユーザーを認知、理解することができず、眠っている状態です。個人的には、この状況を変える時が来ていると思っています。そのために必要なのは“発見と体験”でしょう。多くの人にアイトラッカーを知ってもらい実際に試してもらう。これが第一です。
トビーテクノロジーは、現在、福祉分野を手がけるtobii dynavox、企業のマーケティング活動や学術分野を担うtobii pro、コンピュータ関連の方々とつながりの深いtobii techと3つの事業で運営しています。
すべてのディビジョンで認知度の向上を目指していますが、デバイスへの導入に限っては、まずtobii techでPC、スマートフォン、VRヘッドセットメーカーなどと、共同関係を築くことが大切です。
それ以外の施策としては、直接ユーザーとコミュニケーションを取る方法を見つけていきたいと考えています。例えば、アイトラッカーを搭載したPCを購入しても、ユーザーはそこにトビーのテクノロジが入っていることに気が付きません。ユーザーに驚きの体験を提供しつつ、それがアイトラッカーによるものだとわかってもらうためには、導入してくださっているメーカーと密なコミュニケーションを取るための努力を常にしています。
一方で、よりダイレクトにユーザーとコミュニケーションを取れる場としてソーシャルメディアにも注目しています。SNSをうまく活用できれば、アイトラッカーのチャンスをさらに広げることができるでしょう。
――2001年の創業時にこれだけ多くの機器に搭載される可能性を考えていましたか。
ほとんど予想していました。当時のビジネスプランにもPCに内蔵させたいということは書いてあります。ただ、当時の技術では、ここまで小さく作るこもできませんでしたし、かなりのコストが必要でした。
アイトラッカー自体は、LED(赤外線)、カメラと画像処理技術、ソフトウェアがあれば作ることができ、実はそれほど複雑な機器ではありません。何が難しいのかというと、どんな人でもきちんと検知できるアイトラッカーを作ることです。
瞳の色、メガネ、コンタクトの有無など、人それぞれ瞳の状態は異なりますし、自然光の中にいるのか、それとも電球の下にいるのかと使用シーンも違います。千差万別の条件でも、常にきちんと眼球を検知し、正確さを維持することが難しいのです。
ここ数年は、この条件に加えてコンパクトさ、消費電力の少なさも求められるようになってきました。私たちは優れたアイトラッカーを作り上げるために必要な要素を「オプティカルシステム(光学技術)」「イメージプロセッシング(画像処理技術)」「ユーザーエクスペリエンス」だと考えていて、これらを「マジックトライアングル」と呼んでいます。
アイトラッカーはトビーだけが作れる装置ではなく、競合他社も存在しますが、学術、マーケティング、医療などどの分野においても最も優れたマジックトライアングルを作れているのがトビーだと考えています。だからこそ、アイトラッカーのリーディングカンパニーとしての立場を維持できているのです。
――すべての機器にアイトラッカーを導入する目標はいつごろ達成できそうですか。
私自身は、すべての機器にアイトラッカーを搭載した未来が訪れることを強く確信しています。その未来の実現までに、3年かかるのか4年かかるのか、もっと時間が必要なのはわかりません。ただ、2016年にアイトラッカーを組み込んだPC、スマートフォンが立て続けに発売され、1年以内には、VRヘッドセットに組み込まれる予定となっていて、なかなかいいスタートが切れたと思っています。達成時期は現時点で明言できませんが、アイトラッカーの搭載が標準になる未来がくることはわかっています。
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