ECは「越境」から「クロスボーダー」へ--中国GShopperイゴル・ユン氏に聞く

 飽和する日本市場の成長の停滞や、海外の日本製品への関心、いわゆるインバウンド需要への高まりなどを背景に、日本から海外に向けてオンラインで商品を販売する“越境EC”に注目が集まっている。これまでは、国内でどうすれば競合に勝てるかを考えてきたメーカーや小売企業は、海外でどのように勝負すればよいかが問われているのだ。今後、グローバル化が加速するEC市場は、どう変わっていくのだろうか。

 中国でグローバルECプラットフォーム「GShopper」を展開する、GShopperの創業者でCEOのイゴル・ユン氏に話を聞いた。GShopperはこれまで、B5MSoft(バンウマイ社)として中国国内向けのECビジネスと中国市場向けの越境EC支援を展開。9月に商号変更し、アジア全域や北米・欧州市場も視野に入れたグローバルなECプラットフォームの展開を目指しているという。

GShopperの創業者・CEOであるイゴル・ユン氏
GShopperの創業者・CEOであるイゴル・ユン氏

 イゴル・ユン氏はこれまで起業家として、商品検索サイト「Become(ビカム)」やウェブ検索サイト「Wisenut(ワイズノット)」を立ち上げ、インターネット黎明期から数々の成功を収めてきたという経歴を持つ。

売り手と買い手の「良い関係作り」を目指す

――まずはGShopperのビジネスモデルについて教えてください。「バンウマイ(B5M:帮5买/現在のGShopper)」「バンウチャイ(B5C:帮5采」「バンハベイ(BHB)」などのビジネスを展開していますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。

 GShopperはクロスボーダーのEコマースを提供する商品検索プラットフォーム、B5Cは日本と韓国の商品を中国市場の小売事業者や消費者などに卸販売・小売するために提供されるプラットフォーム、BHBはBtoCプラットフォームとして中国のユーザーが日本や韓国の商品を購入できるサービスという違いがあります。GShopperは、我々の販売する商品以外にもさまざまなECサイトの情報を比較検索でき、BHBは我々が直接商品を販売するECサイトという性格の違いがあります。

 ビジネスモデルは販売手数料ではなく、日本で調達した商品を海外に出荷する段階で、我々の利益を上乗せする形で収益を得ています。日本のメーカーに商品卸価格以上の手数料は設けておらず、トランザクションが発生した段階で、私たちが利益を得られる仕組みを取っています。

 加えて、双方のメリットが見込まれる取引については、中国国内における独占販売権を得てビジネス展開することも可能で、中国市場における値崩れの防止や買い手に対する優位性を担保できるものと考えています。韓国ではすでに120社以上の取引先のうち10%程度は独占販売権によって取引をしていますが、中には売上を保証することでメーカーのリスクを抑える形での取引も行っています。

GShopperが運営する「バンウチャイ」のウェブサイト
GShopperが運営する「バンウチャイ」のウェブサイト

――日本のECプラットフォームでは、「売上補償」という概念はプラットフォーマーにリスクが高すぎるためあまり考えられません。そのリスクについてはどのように考えているのでしょうか。

 我々は、中国国内の大手から中小まで幅広いオンライン販売チャネル、またリアルの流通にもパイプを持っているという強みがあり、売上補償をしてもその商品を売り込む先を確保しています。そのため、メーカーに対して売上補償をしても大きなリスクにはならないと考えています。

 加えて、独占契約を結ぶためには、事前のマーケティングや潜在的ニーズの検証をしっかりと行うため、メーカーと我々が双方にメリットがあることを確認してから行うことで、リスクを最小限にしています。それでも商品の販売が想定を下回ってしまった場合には、我々の資金で商品を買い取り、売り手を探すこともしています。

――GShopperのビジネスは、オンラインのECプラットフォームだけでなく、リアルな在庫管理や物流の領域まで手掛けている点が特徴的ではないかと思います。そこで、どのようなイノベーションを生み出そうとしているのでしょうか。

 越境ECを利用する顧客は、自国では買えない商品を求め、それゆえに配送に時間が掛かることに対してある程度の理解をしています。すぐに商品が欲しい人は自国のAmazonなどを利用すればいいわけですよね。

 ただ、私たちはビッグデータ解析からトレンドを理解し、海外の顧客によく売れる商品を把握して、事前に買い上げて在庫を用意し、注文に対して素早く発送することができます。トレンドを把握し、売れ残りがないように商品を調達して顧客に提供できる環境を、ビッグデータとテクノロジによって確立している点が強みなのではないかと思います。

――日本では今後どのようにビジネスを拡大していくのでしょうか。

 日本には良い製品が非常に多くありますが、たとえば中国の消費者は日本の製品を「メイドインジャパンだから」という理由で購入し、その製品の本当の良さはあまり理解していないのではないかと思います。消費者にとって製品を理解するための情報が圧倒的に不足しているのです。

 中には、その製品が良いか悪いかは別として、大規模なプロモーションで製品を売りつけて高いマージンを得ているような事業者さえあるほどです。こうした実態は日本のメーカーにとっても、中国の消費者にとってもあまり良い状態とは言えないのではないかと思います。

 私たちが取引の透明性と適切な情報提供を、プラットフォームを通じて推進することで、中国の消費者はより製品を深く理解して購入することができ、日本のメーカーにとっては中国の消費者により自分たちの製品を知ってもらえるわけです。こうした売り手、買い手双方にとってハッピーな関係作りを目指していきたいと考えています。

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