所得配分で遊び暮らせる未来は来るか?--人工知能がもたらす脅威とユートピア - (page 2)

 さらに、汎用AIが登場するとほとんどの仕事がなくなる可能性があり、労働や雇用のあり方そのものを変える必要が出てくる。その大きな変化が井上氏が提唱する「第2の大分岐」であり、それに備えて今から汎用AIの研究開発に取り組むことが国の成長にも大きく影響を与えるだろうと指摘する。


井上氏が提唱する「第2の大分岐」は汎用AIの登場による第4次産業革命によって生じる可能性がある

 シンギュラリティの到来で多くの人が心配しているのが、AIに仕事を奪われるのではないかという点だろう。それに対して井上氏は「2045年にはAIのおかげで全人口の1割だけが働き、残りは所得配分で遊んで暮らせるようになるかもしれない」という大胆な意見を持っている。ほとんどの労働をロボットが行うようになれば、人々は労働から解放され、人生を充実させるためにしたいことをするだけでいいユートピアがやってくるかもしれないというのだ。

 もちろん本当に遊んで暮らせるようになるには、所得を再配分する仕組みが必要で、その点は、成人全員に株を配るクーポン型市場社会主義や国民全員に最低限の生活費を支給するベーシックインカムなどの解決案があるのではないかとしている。

 さらに、格差が生じないよう資本を独占されない仕組みや税収のあり方など議論すべき課題は山積みであり、シンギュラリティをユートピアにするには、技術的な課題と合わせて現実に起きる問題を見つめられる専門家がもっと関わることが大事であるという。

 AI研究には幅広い分野からの意見や議論が必要であり、井上氏は、前回のシンギュラリティサロンに登壇した高橋恒一氏とともに「AI社会論研究会」 というAIが社会にもたらす影響についてさまざまな議論を行う勉強会を開催している。いずれにしても、人工知能がこれから進化していくのは間違いなく、できるだけ多くの人が自分たちの問題として関わり、議論してほしいと井上氏は語っている。

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