授賞式に続いて、受賞企業によるディスカッションが実施された。
最優秀賞を獲得したスマートドライブは、自動車業界という一見クローズドな業界に参入している。なぜ自動車業界だったのか。北川氏は「閉じられているが故にオープンなプラットフォームが存在していなかった」ことを理由に挙げ、「自社でやることはあっても横断的にやることはない」ことから、プラットフォームの可能性を感じていると話す。
一方で、「スピードがすごいと褒めていただくが、個人的にはまだこんなものかと思っている」と、まだまだ満足はいっていない様子。「来年は攻める態勢が整ってきたので、できるだけ多くのデータを収集したい」とさらなる飛躍を狙う。
loTを引っさげて既存の業界に参入したのは、フォトシンスも同じ。スマートフォンを鍵にするという発想が普及すると鍵の概念を変える可能性すらあり、自宅だけでなくホテル業界や不動産業界にも広がっていくことが予想される。河瀬氏は「鍵はこれまで命や財産を守るためのものだったが、ネットにつながることで人間の管理もできるのではないか」と将来を予測する。
鍵と同じく、日常生活に密着した分野である通信業界に参入したソラコム。2カ月前にリリースされた「SORACOM Air」は、すでに新機能を5回も追加するほどスピーディなアップデートを繰り返しており、ユーザーからの要望にできるだけ応えているという。現在の社員は13人で、うち8人がエンジニア。「ソフトウェアエンジニアの技術力は人によって100倍、1000倍の差がある」と玉川氏は持論を展開し、「人材は絶対に妥協せず、平均より上の人を採り続ける」ことがスタートアップでは重要だと述べた。
東京ではなく筑波で起業したFULLER。地方だけにやはり「人材採用は大丈夫なのか?」と聞かれることが多いというが、「筑波でスタートアップはレアな存在」であるため、ライバルが少なく人材面での問題はないという。いわば「ブルーオーシャン戦略」なのだそうだ。さらに渋谷氏は「ネットがあればどこでも暮らせる」ことを強調し、「満員電車でストレスをかけられることなく、世界一働きやすい環境を作る」ことをミッションにしていると述べた。
カラーズの経沢香保子氏は、次の一年を全国展開を実現するための年として考えているという。そのために「高く旗を掲げる」ことを心がけており、ブログなどを通じて理想を発信することでよい人材を集めている。キッズラインの特徴はITとベビーシッターを組み合わせたこと。すでにベビーシッター事業はノウハウを持った老舗が多数存在するが、ITを使うことでシェアの拡大を狙う。「リクルートやクックパッドが入ってきたら嫌だなと思う」と笑いながらも、「ベビーシッター事業は“命を預かる”ものであるため、躊躇(ちゅうちょ)しているのでは」と予想している。
気になるグローバル展開についても聞いた。各企業によって考え方はさまざまだが、どの企業も今後の展開についてしっかりと計画を立て、グローバル展開を見据えているようだ。
スマートドライブは「世界に進出したいというよりは、日本で閉じている理由がない」と自信を見せる。ただし、文化や言語の違いは大きいとのことで、「わかりやすさ」を大事にサービスを作りこんでいく必要性を感じているという。
逆にガラパゴス化しているのが「鍵」である。フォトシンスも海外進出は考えているものの、日本の鍵業界は2社が9割のシェアを持っており、出て行くのも入ってくるのも難しい面があるという。一方で、ドアに端末を後付けすればよいという部分は初めてのテクノロジであり、そこに商機を見出しているようだ。
ソラコムも、グローバルで戦う必要性を強く感じているという。その理由は「同じ製造原価であっても世界にいけば優秀なエンジニアを囲い込めるので差がつく」から。もっとも、国ごとにキャリアの事情は異なるため、交渉力をつけた上で一つひとつ地道にやっていくしかないと語った。
現在は仕込みの段階であるというのはFULLER。韓国や台湾、米国に進出する準備はすでに整いつつあるという。日本はアプリマーケットとして優秀で、売り上げが伸びる国。世界からもマーケットが注目されているため、それは強みになるという。課題は海外展開による営業コストとのことだ。
カラーズの海外展開方針は明確で、経沢氏は「3年後以降」ときっぱり。まずは地方進出に力を入れる。日本で成功した後は、ベビーシッターが一般化している米国へ進出したいと展望を語った。
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