一方、佐々木氏が失敗談として明かしたのは、Google時代に米国に渡った時のエピソードだ。「当時、リソースを分散させて働いていたら、結果がなかなか出ずに苦労していた。でもその時、1つのことに100%力を注ぐように言われて、徹底的に1つのことに集中するようにしたら劇的に変わった。日本人はどうしても精神論で割と何でもやろうとあれこれ手を出してしまいがちなところがあるが、大切なことは1つに集中することだとその時に学んだ」と話す。
また、自らの最近の最大の失敗事例として挙げたのは自社サービスのリリース時期だ。「会計の繁忙期はだいたい1~3月なのに、リリースしたのはそれが終わった3月。議論に時間を費やし過ぎてしまい、間に合わなくなった。でも今は経験上、アウトプットして世の中の反応や結果を見ながらチューニングしていけばいいと思うようになった。スタートアップはとにかく事業を進めていくことが必要」と佐々木氏。
そして次にテーマとして語られたのが、起業家に必要なリスク対応力。中でも“胆力”について問われた2人は、過去を振り返りながらそれぞれ次のように答えた。
「自分はたとえ失敗してもそれが1つの先陣になればと考えるので、小さな失敗はあまりくよくよすることはない。死なない限りは敗とはあまり思わない。命に関わることには臆病だけど、それ以外はあまり怖くない」(佐々木氏)
「自分にとっての“胆力”はすべてを捨てること。36歳で1回目に事業に失敗したことで、人の役に立つということがうれしいんだと初めてわかった。人々に100%貢献する気持ちがないと事業は成功しない。でもそれが最初に失敗した29歳の時にはお金や地位とかに目がくらんでわかっていなかった」(吉田氏)
一方、胆力の反面、経営者には臆病さや繊細さが求められるものだ。壇上の2人の企業家もやはり胆力とは反対の顔を持つ。そして、それを表すものとして語られた2人のエピソードはそれぞれ現在の事業内容や経営者としての姿勢にもつながっているようだ。
佐々木氏が耐えられないこととして明かしたのが“数字の間違い”。「データの間違いが苦手なので、人が入力するのを見ているだけでも間違うんじゃないかと不安になってしまう。だからそれをなんとかしたいというのが今のビジネスにもつながっている」と佐々木氏。
吉田氏は「人を見る目がない」と自らを一刀両断。「採用の決定は今は役員の合議制で決めている。でもこれが見事に私がいいと言った人を他の役員はノーと言う。だからもう不得手なものには手を出さない。人に任せるということにしている」と、知られざる弱点を打ち明け、そこから得た学びを語った。
そして最後に語られたテーマは“リスクとの付き合い方”と“失敗力の磨き方”。この問いに対して吉田氏は「起業する最初の事業は1つに絞ること」と助言する。その理由は「失敗しないと人は学ばない。しかし、2つ以上のことを同時に始めてしまうと、100%リソースを集中していたら成功していたはずと考えてしまいがち。それで失敗を失敗と取らなくて学ばなくなってしまう。だから最初は1つに絞ることが大切」と説明した。
また、佐々木氏が説いたのは“価値をつくれる失敗の仕方”。「失敗してそれが生きるような力がつけば、その1つ1つがつながってそれが資産になって次に生きる」と話し、セッションを総括した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス