サムスンはこの点では先進的で、Micro-USB端子の充電アダプタを接続できる充電用ドングルが付属しており、このドングル自体が350mAhのバッテリとして使用できるようになっている。Gear Sのバッテリ残量が少なくなったら、このバッテリパックをはめ込んで、充電することができるわけだ。バッテリを取り付けたまま腕に着けることはできないが、コンセントを探す必要はない。この機能はないよりもあった方がいいし、付属品だという点もありがたい。
もちろん、1回の充電でもっと長時間持つのであればその方がいい。しかし、Gear Sの一番の問題点はバッテリではない。
多くの人には、そもそもスマートウォッチを買うだけの動機がない。サムスンのGear Sを購入した場合、サムスンのスマートフォンでしか使えない、孤立したGearアプリのエコシステムを利用せざるを得なくなるだけでなく、専用のSIMカードを手に入れ、オプションのデータ通信プランまで契約する必要がある。スマートウォッチが独自に通信するために、毎月10ドルずつ払えるかと言えば、難しいだろう。また、Gear Sはそもそもスマートウォッチを欲しいと思わせるレベルに達していない。常時接続されている割には、それほど「スマート」だとは言えないからだ。確かに優れた点もあるが、スマートフォンとスマートウォッチを組み合わせたフルコースのメニューに期待されるほどのすごさはない。
サムスンが作ったこのハードウェアが印象的であることは間違いないし、Gear Sが小型ガジェットとして素晴らしいデザインを持っていることを考えれば、これは非常に残念だ。Gear Sは実際、かなり行きすぎた冒険的すぎるテクノロジだ。その目標はAndroid Wearのスマートウォッチよりも野心的であり、従来のウォッチでは不可能なことができる。大きすぎることを気にしなければ、デザインもそれなりに魅力的だ。これまでに世に出たGearシリーズのデバイスの中では、最高のものだろう。しかし現時点で、この価格のGear Sは十分ではない。そして、今後数カ月間で、Android Wearのスマートウォッチにできることはさらに多くなるはずだ。サムスンのスマートフォンを持っている人も、Android Wearのスマートウォッチに投資する方が賢いだろう。
Gear Sは必要不可欠なものではないし、いくつかの機能はうまく動かず、便利なアプリも少なすぎる。そして、そのアプリのエコシステムが、2015年にAppleやGoogleが作り上げるものに対抗できるかどうかも疑問だ。ただし、少なくともサムスンが新たな挑戦を試み、新しいアイデアを模索していることは評価すべきだろう。Gear Sは完成度の高い人気商品というよりは、ウェアラブルの「コンセプトカー」と言うべきデバイスで、手首に付けるウェアラブルデバイスとして、いくつかの新たな境地を開拓している。それ以上の存在になれるかどうかは、サムスンがいつ7つ目のスマートウォッチを世に出せるかにかかっているのだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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