鈴木裕氏や当時の関係者やライターらが語った「バーチャファイター」の成り立ちと未来 - (page 2)

コンパネにボタンを敷き詰める“直感的な操作”の発想術

 鈴木氏は、間口を広げるために当時の対戦格闘ゲームで多かったボタン数をパンチ、キック、ガードの3ボタンと少なめに設定。さらに幅広い年齢の人にテストプレイをさせ、その入力傾向のリサーチも行って、多少でたらめでも基本技が出るようにコマンドも設定していったという。初めてプレイするプレイヤーが、俗に“ガチャプレイ”と呼ばれるような、よくわからないけど適当にレバーを動かしボタンを押しても、適度に技が出て数回に1回はまぐれで勝てるようにして楽しさを感じてもらうように敷居を下げる考えを持っていたと語った。

佐藤氏は、雑誌記事やムック本などを披露ししながら当時のことを振り返っていた、
佐藤氏は、雑誌記事やムック本などを披露ししながら当時のことを振り返っていた

 もっとも、その敷居を下げる構想のなかではボタン数を少なくするほかに、コントロールパネル1面にボタンを敷き詰めるぐらいに増やすことも考えたという。タッチパネルは無数のボタンが敷き詰められているとイメージし、スマートフォンのスワイプのような操作にたとえて、右から左になぞるように押したり、手のひら全体でボタンを押す個数の差で技を変えるなど、直感的な操作で楽しめるような案を考えていたという。この案はコスト面の問題で実現には至らなかったが、鈴木氏の独創的な発想術を垣間見るエピソードだった。

 この発想の意図はプレイヤーの気持ちをくんで、できるだけ情報量を少なく技に反映させることだという。多くのプレイヤーが経験するであろう「この場面でこの技が出せたら勝てるのに、操作がおぼつかなくて技が出ず負けてしまう」という状態を減らし、究極的には頭で考えたことがそのまま反映される“判断の勝負”にしたかったというのも根底にあるようだった。センサーなどの発達により入力方式が変わればゲームも変わるとの見解も示し、佐藤氏もスマホの普及やPCでタッチパネルが使われている現状により「入力デバイスは短期間で変わるので、とっぴな話ではない」と同意。最近のアーケードゲームも多様化している現状を反映してか、羽田氏も「最近の若い子は、ジョイスティックとボタンの入力方法に触れてないので、固執しつづける必要なない」と語った。

「バーチャの鉄人」として活躍した羽田氏は、鉄人認定証を披露
「バーチャの鉄人」として活躍した羽田氏は、鉄人認定証を披露

 最後にバーチャファイターがリリースされて20周年を迎えたことに触れ、最後に登壇者が思うこの先の20年について語られた。羽田氏は、ゲームセンターで遊べるゲームは、その場でしか遊べない特別感があり、ゲームセンターはそうありつづけてほしいという願望を示した。ただ、モバイルゲームの隆盛やゲームに限らない“楽しみを味わう”ことが多様化し、ゲームとの距離感が難しく、ゲームとの付き合い方が問われているとも語っていた。

 佐藤氏は昔以上にゲームをやっている状態で、特にFPSやTPSをよく遊び、スマートフォンのゲームでも遊ぶという。「ネットワークを介して楽しむタイトルも増え、不特定多数の誰かと遊ぶという出会い頭の面白さがあると感じて、すごく楽しいです」と語る。そんな佐藤氏にとってゲームは生活の中に入り込んでいるものであり、最近スマートフォン向けゲームが隆盛となっているが「なにかあるたびにわざわざ“スマホで”って付けなくてもいいんじゃないかと。スマホだからゲームが終わると言われているけど、それは違うんじゃないかと思っています」という。

 寺田氏はゲーマーではないものの、仕事としては「探偵 神宮寺三郎」シリーズなどのイラストも手がけ、今でも昔手がけたイラストを気に入ってくれているファンが存在することから、常にゲームとともにあったと振り返る。「そのなかでもバーチャファイターは起点であって、自分の名前も出してもらって今の自分があるというぐらい大事なタイトル」と語り、この先もゲームに関わっていきたいとしている。

 鈴木氏は、今のゲームは映像面でも音楽面でもクオリティが上がり、映画的な表現ができるようになった。さらにインタラクティブ性もあり、エンターテイメントで必要な要素はゲームのなかに含まれているという。さらにネットワークの技術や普及により、人と人を結びつける力も強くなっていると語る。「ゲーム屋さんはエンターテイメント要素をほとんど扱ってきたので、ゲームの既成概念に縛られずに考えられると、新しいエンターテイメントを生み出せるのでは」とし、ホログラムを活用したゲームの実現性も語るなど、未来の可能性も考えているようだった。「話題性のある派手なことだったらいいよね。たとえば曇り空はスクリーン代わりになりそうだから、そこにレーザーで絵を描いたり投影させたら楽しいよね」(鈴木氏)。

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