アップルが示した価値観--WWDCで披露した2本のビデオとそのメッセージ - (page 2)

Dan Farber (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2013年06月17日 07時30分

 このビデオの最初の部分は、サムスンやほかのモバイル端末の競合他社を狙い撃ちにしたものだ。Appleは、そうしたメーカーがデザインを中心に置いていないと強く主張している。これはつまり、そうしたメーカーの製品が劣っているという意味だ。彼らはAppleとは違い、ハードウェアやソフトウェア、エコシステムを完全にコントロールしていない。基調講演の中で、Cook氏は何度も、「iPhone」が販売数で競合製品を上回っているわけではないことを指摘しつつ、利益の面はもちろん、ウェブ利用や顧客満足度でははるかに優れた結果を得ているという調査結果を引用している。

 このビデオは、Appleがここ数カ月、重要な新しいハードウェアを発表していないことへのあからさまな弁明でもある。実際、Appleが新しいスマートフォンを世に出してから8カ月以上が経過しており、「iPad mini」のデビューからも7カ月以上たっている。カリフォルニア州クパチーノにあるAppleのキャンパスに点在する秘密の仕事場で、同社のエンジニアが完ぺきなものを作ろうとひそかに苦労している間、サムスンやHTCといったメーカーは、数多くのモバイル端末を発売し、良い評価を得ている。

 Appleは確かに、アップデートされた2種類のMacBook Airを発表するとともに、人目を引く円筒形のMac Proを少しだけ紹介した。このMac Proについて、マーケティング責任者のPhil Schiller氏は聴衆に向かって、「これ以上のイノベーションなどできるものか」と言った。しかし、マスマーケットや、形勢を一変させるような新しいスマートフォン、タブレット、テレビ、腕時計やメガネなどは登場せず、ちらりと紹介されることもなかった。

今後登場のiOS 7は、新しいカラーパレット、再デザインされたアイコン、透過性、独特な機能レイヤなどJony Ive氏の感性が反映されている。
今後登場のiOS 7は、新しいカラーパレット、再デザインされたアイコン、透過性、独特な機能レイヤなどJony Ive氏の感性が反映されている。
提供:Apple

 ビデオの次の部分では、完ぺきを目指すAppleの意欲についてさらに詳しく触れており、完ぺきであることは、核となる部分のために複雑になる場合があり、通常は作業の繰り返しに長い時間を必要とするという点にまで迫っている。Cook氏は、「われわれは製品にフォーカスし、最高の製品を作る必要がある。それをきちんと行って、人々の生活を豊かにする優れた製品を作れば、そのほかのことは自然とついてくるだろう」と語った。別の言い方をすれば、カメのようなわれわれに我慢してほしいということだ。われわれの使命は困難なもので、途方もない努力とフォーカスを必要とするが、ユーザーはその見返りを受ける、というのである。

 Appleはデザイン主導の企業として数十年間続いてきている。それは同社のDNAの一部だ。Appleは人々に何がほしいかを尋ねることはしない。むしろ、人々に何を感じてもらいたいかを自らに問いかけるようだ。Appleは意図を直観で理解した上で、ユーザーがカレンダーの項目、通知、パネルやアイコンのコントロール、ハードウェアのケースを目にしたときにどんな感情を経験すべきかを決めようとしているのだろうか。もっとはっきり言えば、Appleは、楽しみや驚き、愛情、つながりという感情を生み出す製品を設計することで、人々をそのブランドに傾かせたり、あるいは熱中させたりしようとしているのだろうか。iPadのためにどんな市場調査を行ったのかと聞かれたJobs氏が、「していない。自分の欲しいものを知るのは消費者の仕事ではない」と答えたのは有名な話だ。Appleの価値観を明確に表現するためにJobs氏が取る方法は、「われわれがまず問いかけるのは、人々に何を感じてほしいか、ということ」というよりも、もう少し直接的だ。

 Tim Cook氏は、J.D. Powersの消費者満足度調査で過去9年間首位であることをアピールした。
Tim Cook氏は、J.D. Powersの消費者満足度調査で過去9年間首位であることをアピールした。
提供:James Martin/CNET

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