無視できない点――その筆頭は、周知の通り、これがクラウドの存在を前提につくられているOSであるという点だ。
「iOS生まれの機能の移植」とされるもの――「メモ」「リマインダー」といったアプリも「通知」のような機能も、すべてiCloudがなくてはほぼあり得ない。また、細かいことをいえば、特定のアプリのなかにファイルが収まるようになって、iPhoneやiPadで作りかけた文書の続きを、そのままMacで作業して完成させられるようにもなっているが、これもiCloudの同期機能があってのことである(同期サービスの点だけとれば、Dropboxなど一部で先行すらしているサービスもあるが、それらとMountain Lionのこの機能に対応するアプリとの違いは、とくにモバイル端末側で使い込んでいくうちに、かなり大きくなっていくのではという予感がある)。
いずれにしても、そうした形で端末の違いに関係なく、いつ、どこからでも同じ作業を続けられるようになると、そこから離れがたくなることは目に見えている。「そこ」とはアップルのプラットフォームのことであり、そのなかでMacはもはや、iPhoneという「金の卵を産むメンドリ」や、iPadという「Windows PCビジネスの潜在的破壊者」などの引き立て役でしかないのだが、そうした主役たち=事業上の「城郭」(castle)をがっちりと守る「堀割」(moat)として、さらに威力を増している。
Mac OS Xには、映画のスターウォーズとちょっと似たところがある。その比喩を使えば、Mountain Lion(ver. 10.8)は「第三部の中編」ということになる。MacのOSが、Lion(ver. 10.7)でiOSの操作性などを取り込みはじめ、Mountain Lionはそのブラッシュアップ版ともいえ、次の10.9ではさらにこれに磨きがかかることになるのだろう。
そこで、実はいま本当に気になっているのは、(あえてこう書くが)Mac OS Xが「ver. 11」になる再来年のことであったりするのだけれど、これについては今のところはまだ時期尚早、気長に待つしか手がなさそうだ。
それにつけても。最近、アップルが2000年前後に取り組んだMac OS Xへの移行がどれほど大変なことだったか、そしてそれを成功させたことがどれほどすごいことだったか、といった思いが浮かぶことが多い。ベテランのMacユーザーの方には「何をいまさら」という話だろうが、昨今「ノキアやRIMが、新OSへの切替でたいそう難儀している」といった話を見聞きするたびに、改めてその大変さ(技術的な面だけでなく、事業の面でも)や、後に及ぶ影響の大きさを考えさせられる。
筋のいい技術を土台にしていたから、結果的に十年以上も大きな作り替えをせずに今までやってこれた。そればかりか、時々の新たな要素を付け加えつづけることで、今でも立派に最新鋭の装いを保ち続けている。iOSという「子供」は立派に成人したけれども、自分も「まだまだ現役」「これからもうひと花咲かせて……」みたいな感じもして、誠に喜ばしい次第である。
最後に。
原稿執筆にあたって参照したネタ元(英語記事)などの情報元をあげておく。レビュー記事については、いずれも「褒めた」内容のものばかりだが。
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