企業のクラウド指向は高い。それだけにクラウド事業者に対する要求は、今後多様化する公算だ。先述のように、企業がクラウドの独自性・自在性を確保しつつも、運用業務を効率化したいというニーズに対しては、クラウドサービスやインフラ周りを一元的に管理する仕組みの提供も求められるだろう。
今回の調査項目「オンプレミスからクラウドへ移行するうえでの課題」でも、要求が多様化する現状が示された。複数回答だが「セキュリティの確保」を挙げた回答者が66.1%で最も多かった。次いで、「投資効果」が47.4%、「クラウドへの適合性・親和性」が34.0%だった。「特に課題だと感じる要素はない」は12.6%に留まる。ユーザー企業のほとんどが何らかの課題を抱えている状況だ。クラウド事業者は今後、インフラやアプリケーション、サービスの提供だけに留まらず、オンプレミスからクラウドへの移行、クラウド導入後のサポートといった幅広いサポートを意識する必要が高まるだろう。
なお会計、人事、営業支援、販売管理など、主要アプリケーション別の、システム構築の形態の状況については、すべてのアプリケーション分野で、将来に向けてクラウドへの移行が進む傾向が明確になった。現在は会計、人事、販売管理が7割、営業支援の2/3が非クラウド型で構築されているが、今後の計画ではクラウド型での構築を希望する企業が軒並み半数を超えている。「あくまで計画の話だが、今後は、非クラウドの比率は5割を切るとみられる。特に会計システムでは、プライベートクラウドの比率は倍増するだろう」(舘野氏)という。
既存システムをクラウド化する際、具体的にどのような手順で着手していくのかを尋ねた設問では、「物理環境にあるシステムを仮想統合したうえでクラウド化する」が22.4%で最多となり、「未統合の仮想システムを統合したうえでクラウド化する」は、13.5%。「仮想統合されているシステムをクラウド化する」が、6.6%で、合わせて40%以上が「仮想統合」という過程を経てから、クラウド化する方針であることがわかる。仮想化技術は、クラウド化を実現するステップの1つとしても引き続き重視されるものとみられる。しかし、これらのような手順を飛ばし、一気にクラウド化する“クラウド・ファースト派”も一定数存在している。「システム再構築によってクラウド化する」とした回答者は21.2%に上っている。これについて、舘野氏は「いきなりクラウド化という選択肢もないわけではない。一部の構築事例の影響もあるようだ。ただ、このような回答者の企業は、クラウドについての取り組み経験が浅い傾向がある。クラウド先進企業の多くは、いったん仮想化してから、クラウドへと向かっている」と語る。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手