当面は労働者の供給過剰状態が続くため、初任給の低下が予想される。これに伴い、賢い雇用者は経験豊富な主要従業員を引き留めることを目的として、マネージャー職に就いていない従業員に対するキャリアの選択肢を幅広く用意するとともに、昇進の段階をより細かく設定して昇進の機会を増やすだろう。その結果、従業員は雇用の安定を重視するようになり、それによってIT労働市場における転職が減り、人材の定着率が上昇するはずである。
ゼネラリストというタイプがいなくなるわけではないものの、テクノロジが複雑化し、その数もどんどん増加し続けていくことで、ITの専門分野に特化した技術者により多くの機会がもたらされることになるだろう。こういった状況は、医療分野ですでに起こっている。特殊な病気にかかっている病人は、金銭的に許される限り、最高の技術を持った専門医に担当してもらいたいと願うはずだ。
金融サービスや、防衛関係の請負業者、医療サービスプロバイダーなどの業界では、業務知識のあるIT要員が求められている。こういったIT要員に対する要求は、業界ごとにツールや技術、専門用語などさまざまであるため、特定の業界に特化した教育や経験を有しているIT要員は仕事を得やすくなるはずだ。
筆者がHughes Aircraft Companyに勤務していた際、最も充実感を味わったのは、他部門に派遣されてプロジェクト管理を行っていた時であった。自らのスキルや才能が活用され、目新しく刺激的なことに従事することができたためである。また、会社側も社内の既存リソースを用いて自社のニーズを満足させることができただけではなく、仕事に対する従業員の満足度と経験を向上させるというメリットを享受できたというわけだ。
幸いなことに、筆者のマネージャーは他部門への要員派遣に難色を示さずにいてくれた。しかし多くの場合において、組織図や組織階層構造のおかげで従業員のシェアリングが阻まれるようになっているのは残念なことである。従業員を部門間で融通し合う仕組みがあれば、より高い柔軟性がもたらされるとともに、従業員の才能と企業ニーズとの「ベストマッチ」が実現できるようになる。また、関連会社間で従業員の才能やスキルのシェアリングを行うという、さらに積極的な従業員シェアリングもあり得る。1人のマネージャー、あるいは1つの部門が1人の従業員を独占するという時代は終わりを告げようとしているのである。
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