新規、リピーター別のサイト内解析が重要に--CVR向上のための方程式 - (page 2)

山野勉(株式会社オプト)2010年01月29日 13時00分
100127_opt4.jpg新規・リピーター別 訪問回数推移

 このグラフはあるサイトの新規ユーザーとリピーター数の日ごとの推移を表している。新規ユーザー数は一定の数で推移しているのに対して、リピーター数は10月を境に減少しているのがわかる。新規ユーザーの来訪数に対するリピーターへの転換率が低下している現象である。

 実はこのサイト、10月にリニューアルを実施したのだが、その結果、新規ユーザーに対する魅力的なコンテンツ(またはユーザービリティ)が欠け、リピーターへの転換率が下がってしまったのである。

100127_opt5.jpg新規・リピーター別 CVR推移

 上のグラフは同じサイトでの新規ユーザーとリピーターのCVRの推移を示したもの。リピーターのCVRは一定の割合で推移しているが、新規ユーザーのCVRは10月に低下傾向にあることが見て取れる。これら2つのグラフから読み取れる、このサイトで起こっている現象をまとめると下記になる。

  • 「新規ユーザーのCVR低下(=新規ユーザーのモチベーションの低下)→リピーターへの転換率の低下→リピーター数の減少⇒リピーターのコンバージョン数減少」

 ではこのサイトを改善するにはまず何をすべきか? それは、新規ユーザーのサイト内の動向から新規ユーザーのニーズを把握すること、もしくはユーザビリティのネックとなっているページを洗い出して改善することである。

 この事例から、新規ユーザーをリピーター化させるため、またリピーターをコンバージョンに導くために、新規、リピーター別にサイト内解析を行うべきであることがおわかりいただけると思う。では新規、リピーターではどれだけ嗜好が異なるか、さらにいくつかの事例を基に考察する。

100127_opt6.jpg各ページ 訪問数 新規率散布図

 上の図はあるECサイトにおける各ページの訪問数と新規率の散布図である。散布図内の点がページを表しており、点がグラフ上部に位置すればするほど新規ユーザーが閲覧している割合が高くなる事を意味している。この散布図から読み取れる通り、新規、リピーターの閲覧嗜好には異なった傾向が顕著に見られる。

 特に青丸で囲んでいるページは新規ユーザーにニーズがあるページであり、赤丸部はリピーターにニーズがあるページであることが伺える。このように、新規、リピーター別の嗜好にあったページ(コンテンツ)とは何かを把握することは、コンテンツ戦略を立てる上で重要なデータとなる。自社サイトの現状を把握した上で、まず新規、リピーターのどちらの嗜好を満足させるか選択するといいだろう。

100127_opt7.jpg各ページ 新規・リピーター別 離脱率

 このグラフは新規、リピーター別に各ページの離脱率を表している。見ての通り、ページによって新規、リピーターで離脱率が大きく異なっていることがわかる。

 私の経験上、これは決して特定のサイトにのみ顕著にあらわれる傾向ではなく、ほぼすべてのサイトで見られる傾向である。新規、リピーター別のサイト内解析ができていない方がいらっしゃったら、2つの図を用いて、自社サイトを分析することをお勧めする。今までなかった視点で考察できるはずである。

 さらに分析を深めるのであれば、ページごとの新規、リピーター別の「満足度」を把握する必要がある。いかに新規ユーザーを多く集めているページ(コンテンツ)であろうとも、「新規ユーザーを満足させている」とは限らない。

 そこで「満足度」のバロメーターとして活用できる指標がページごとの「訪問数、離脱率、滞在時間、CVR」である。訪問数、離脱率、滞在時間については説明を割愛する。CVRは「そのページを見て問い合わせや購入などの何らかの成約(コンバージョン)に至ったユーザーの、ページの訪問数に対する割合」である。

 例えば、Aページの訪問数が100人として、その内10人が何らかのコンバージョンに達した場合、ページのCVRは10%になる。つまり、そのページがどれだけコンバージョンに寄与したかを把握することができるのだが、その指標と訪問数、離脱率、滞在時間を掛け合わせて満足度を図るのである。

まとめ

 今回は2つの代表的なCVR向上に関わる方程式について取り上げた。

  • CVR向上の要素=市場・競合×誘導戦略×サイト内戦略×CRM

 上記すべての項目は深く関わっており、一貫した分析が重要である。特にユーザー嗜好に合わせたサイトを目指すのならば、ユーザーモチベーションに合わせたサイト内分析を目指してほしい。その入口となる方程式が

  • CVR向上の要素=新規ユーザー誘導×リピーター誘導×リピーター定着

 である。新規ユーザーを誘導してリピーターに転換させ、サイトに定着させるサイクルを構築するからこそ、継続的なサイト成長が見込まれる。

筆者略歴
山野勉
法政大学土木工学科(現:都市環境デザイン工学科)卒。熱流体に対するコンクリートの熱応力に関する研究を行う。在学中は空手部に在籍し、全日本理工学系大学空手道選手権において史上初の組手4連覇を成す。その傍ら、個人塾の講師兼経営に携わる。

2006年4月、新入社員として株式会社オプトに入社。2006年10月、サイト内解析業務を任され、以後1年間、一人でノウハウゼロの状態から知識を積み重ね、こつこつとレポートを作成。累積レポート数は1000件に至る。現在は5人のチーム体制となり、チームリーダーとして日々分析手法の開発に勤しむ毎日である。

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