岩佐氏は松下電器産業でネット家電の商品企画を担当していた。手がけた代表的商品およびネットサービスは、無線LAN搭載デジカメ「Lumix-TZ50」と付随する写真共有サービス「LumixClub PicMate」、YouTube対応テレビ「VIERA PZ850」とそのゲートウェイ「VIERA CAST Gateway Service」などだ。「パナソニックいろもの系担当」だったという。
そんな岩佐氏が「いまは家電の開発がすごく楽になっている」と言う。デジカメ、ビデオカメラ、ボイスレコーダーなど、作りたい商品が決まったら、それらの商品に必要なスペックのチップが載った基板「evaluation module」(EVM)を買ってきて、さらに好きな機能のチップを足したり、引いたりしていく。まるでレゴブロックの感覚だ。
開発に必要なボードやチップはすべてオンラインで注文できる環境が整っているという。PCで回路図を設計して、電子データをオンラインで送ると、それをボードにして発送してくれる業者がある。またCerevoに出資しているイノーヴァ1号投資事業有限責任組合の運営母体であるチップワンストップという会社はオンラインでチップを販売している。部品の番号を入力すると、米粒みたいなサイズのチップを1個から購入できる。
EVMにカメラモジュールをつけるとカメラになるし、カーナビを作るならタッチディスプレイのシステムとGPSのセンサーとモーションセンサーを全部つなげばいい。あとはシリアルでPCをつないでソフトウェアを書く。「当然、ソフトウェアを開発する知識とハードウェアを改造する知識が両方必要になりますが、それができれば、たとえばCerevoみたいに社員が数人しかいなくて、資金も数千万しかないような会社でも家電を開発できる」(岩佐氏)
あとは画面に表示されているカーソルなどのGUIを作成すればデジカメ用のソフトウェア開発は終わる。EVM購入から改造、ドライバー作成、GUIソフト作成までが、機器の低価格化や、オープンソースソフトウェアの利用で敷居が下がっているという。ボードを買って、チップを付ければ、ベンチャーでも独自性のあるハードウェアを作れるようになってきた。
「ハードウェア的に世界最薄を狙うのは難しいが、ソフトウェアで差別化した商品なら作れる。まさにアイデア勝負になってきた。PCはもう誰でも自作できるじゃないですか。あれにだんだん近づいてきてるかなという印象ですね」(岩佐氏)
デジカメのハードウェアは筐体のデザインや機構設計をする会社と提携し、中国で作っている。Cerevoは商品企画とソフトウェア開発を担当し、Cerevoが作ったボードを小型のハードウェアに収めるという作業は提携先の中国の工場が担当する。その2つを合わせるとCerevoカメラというオリジナル商品になる。
デジカメという分野における大手メーカーの強みはレンズやCMOSセンサーなどの物理部品、そして徹底した小型化だ。逆にいえば、小さくする必要がない製品に関しては、ベンチャー企業にも大いにチャンスがある。
「たとえばデジタルフォトフレームやChumbyみたいな商品はそもそも家に置いておくものなので、薄さが何ミリだろうが別にどうでもいい。それよりも便利な機能、おもしろい機能、あるいは低価格とか、そういう方向に進むので、大手メーカーは強みを活かせなくなる。マクロの視点から見ると、そういうトレンドになってきてますね」(岩佐氏)
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