なぜオバマ大統領のネット選挙術は成功したか、そして残された課題とは - (page 2)

志村一隆(情報通信総合研究所)2009年02月17日 08時00分

インターネットの脱・集権構造に対応した権力コンセプトが必要に

 草の根的な活動に効果的なインターネットによって誕生したオバマ政権だが、一度政権についてしまうと、やはり権力を発揮し、支配的な性格を帯びてくるのだろうか。

 作家で元Fortune誌の Managing Editorである Eric Pooley氏は、「インターネットはもはやひとつのチャネルではなく、アイデアを共同で構築していく巨大なツールである。インターネットなら、掲示板や検索を通じて、支持者が『中絶』『税金』など自分に興味あるテーマにすぐアクセスして意見を書き込むこともできる。候補者、支持者双方にとって、意見形成の透明性、双方向性が確保できる」と語る。

 しかし、そうした透明性、双方向性は権力者に新たな課題をもたらす。Pooley氏は、「今回のオバマ陣営が利用したインターネットは、脱・中央集権という構造をもつ。しかし、権力は、本来コントロールパワーを発揮する性格を持つものだ。今後、政治権力としてパワーを持つことになるオバマ陣営が、集権的性格を強めるのか、脱・集権的性格を残していくのか、注目される。いずれにせよ、インターネット時代にあった新たな政府のコンセプトが必要だろう」とインターネットを多用して選ばれた政府が抱える新たな権力のパワーバランスの課題について指摘した。

オバマ選挙から学べたこと

 セッションの最後、「オバマ選挙から学んだことはなにか?」という問いがあった。Engage LLCの Patrick Ruffini氏は、「オバマ大統領は、ニッチメディアをマスメディアのように利用した。1300万のメールアドレスを集めただけでなく、YouTubeに動画をアップロードしたり、Facebookに意見を掲載し続けたりした。ニッチメディアだったインターネットメディアでも、大量のメールアドレスやYouTube動画を利用することで、マスメディア並みの影響力があることがわかり、大規模な予算を掛けなくても、選挙に勝てることを証明した」と結論付けていた。


筆者略歴
志村一隆
1991年早稲田大学卒業、WOWOW入社。2001年ケータイWOWOW設立、代表取締役就任。2007年より情報通信総合研究所で、海外メディア、インターネット市場動向の研究に従事。2000年エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号取得。水墨画家としても活躍中。

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