保守的な環境を打開することがカギ--東海地区でのネット広告の現状と今後

Webマーケティングガイド2008年01月30日 13時00分

 みなさん、「名古屋」という土地をイメージしてください。何を思い浮かべますでしょうか。観光名所で言えば名古屋城・金の鯱や愛知万博、企業であれば世界のトヨタ、食の名物は味噌カツや手羽先、ひつまぶしなど。最近では53年ぶりに日本一に輝いたプロ野球の中日ドラゴンズでしょうか。

 名古屋でネット広告の営業をする前に、多くの方から「名古屋は保守的な街」「名古屋で営業が成功したらどこの地でも仕事ができる、それくらい厳しい」と言われ、その代わり「一度信頼を勝ち取れば継続的にお付き合いができる」ということでした。

 新しいモノに対して興味はあるが、なかなかすぐには足を踏み入れない文化があるのでしょう。こういう堅実さが強い傾向があるので、愛知には無借金経営企業が多いことにもつながっていると思います。(Wilipediaによれば、無借金経営企業の一つに名古屋式経営があり、「石橋を叩いても渡らない」とも比喩されるほど、殊更に冒険を嫌う慎重な経営を指すようです。参照:「無借金経営/Wikipedia」

 我々の取り扱うインターネット広告はここ10年で飛躍的に成長しましたが、名古屋をはじめとする東海市場でのインターネット広告はまだまだこれからという感じです。私の感覚ですが、ようやく5年前の東京、3年前の大阪に近づいてきたような気がします。東海市場でネット広告の営業をする立場としては、今後の市場成長の可能性に大きく胸を膨らましています。

 媒体別シェアで考えると、やはり費用対効果の高いアフィリエイトやリスティング広告といった、広告主からするとリスクの少ないメニューで試験的に出稿するケースが多いと思います。上記でも述べたように、保守的な感覚をもつ土地柄だけに、時間をかけて低予算で費用対効果が見込みやすい出稿をし、「ネット広告はいける!」と納得されるような感じです。

 こういうお考えをもった広告主は決して少なくありません。ただし、中にはネット広告黎明期から興味を示し、今ではあらゆる媒体を駆使しプロモーション展開を行っている企業も存在しますが、その母数はやはり少ないようです。

 地域性ということでは、東海市場の企業特色にも触れておく必要もあるでしょう。愛知県はモノづくりの街としても有名で、2000年現在で県内総生産では全国の6.6%を占め第3位、製造業出荷額では愛知県が全国の11.4%と、東京・大阪の各6%大きく上回る実績となっています。もちろん、トヨタ自動車の影響も強いのですが、娯楽機器、陶磁器製品、鉄鋼など全国トップシェア産業が集中しており、BtoCではなくBtoBの企業が以上規模の多くを占めているという特徴があります。

 ネット広告を出稿する上では、PDCAサイクルを実行し、より高い費用対効果で販売促進を行っていくということが重要となってきます。ただし、上記のようなBtoB企業へは費用対効果のみの追及ではなく、別視点からの提案も必要になるでしょう。たとえば、新商品の告知やキャンペーン、人材採用などがこれにあたります。

 このように地域性(BtoB企業が多い)にフォーカスし、東海地区ならではのネット広告の提案ができるかが市場拡大にむけての課題だと考えられます。これらは、東海地区でネット広告を営業し、市場の新規開拓を行う我々の使命であると言えるでしょう。今後の東海市場でのネット広告代理店の成長は、この部分がカギになってくるかもしれません。

 また、ネット広告とは切っても切り離せない関係にあるのがウェブサイト制作です。ネット広告市場が未熟なだけに、ウェブサイト制作に長けているブレーンさんが少ないのも事実です。

 現状、紙媒体が根強い東海市場では、制作会社も「まだ紙でいける」と考えているケースが多く、どうしても印刷会社の数が多く、ウェブサイト制作に特化した企業が他地区に比べて少なく、東京や大阪の制作会社に頼るケースが多くあります。

 個人的には、東海でのネット広告市場に伸びしろを感じているのですが、更なる飛躍のためには、質の高いクオリティを提供できる制作・デザイン会社さんの協力も不可欠だと思います。特に、保守的な街なので、遠隔操作ではなく、直に対面して提案してくれる制作会社が求められると思います。

 日本のど真ん中である名古屋をはじめとする東海地区。好景気で、名古屋駅前近くには高層ビルが3カ月に1度の割合で建てられており、ますますの発展が期待されます。数年後には、リニアモーターカーの誕生で東京からの所要時間はわずか1時間。つまり、近い将来に東海地区は首都圏化してしまいます。

 そうなれば、東海地区の観光スポットが関東圏での広告展開(ネット広告に限らず)をしたり、東京のデパートなどがバーゲンセールの広告を東海地区で展開することも可能となるでしょう。東海地区の盛り上がることは、ひいてはインターネット広告市場全体の規模拡大にも寄与するのではないでしょうか。

上河原 圭二(セプテーニ)

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