ネットが埋もれた事実掘り起こす可能性示した「亀田戦」 - (page 2)

 確かに、10月14日以前に確認できたこの動画をインターネット上で見る限り、放送事業者が絶対の正確性をもって伝えられる映像(音声)とは言いがたく、取り扱いに際して慎重になる気持ちは理解できる。しかし、すでに一般紙までもが発言内容をとりあげ、挑戦者サイドが弁明するまでに至った段階において、そこまで慎重になる必要はないようにも思えるし、人々の関心も高い。

 折角の貴重な映像資産を出し惜しみしている間に、多くの人が「決定的瞬間」を閲覧している(中継自体を視聴しなかった人も含め)。最も影響力のある報道機関として、また、リアルタイム、一斉同報を最大の特徴とする放送事業者の対応としては、少々鈍かったといわざるを得ない。

YouTube問題と同じく無視できない

 一方、ネット上に著作権侵害にあたる映像が当たり前のように投稿されているという、一連の「YouTube問題」は無視できない重要な課題だろう。しかし、見方を変えれば、このケースは「放送・通信の融合」がうまくはまった例とも言える。放送事業者で一斉送信された映像の一部について、社会的に問題視すべきある部分を、通信を通じて放送事業者以外の人たちが協力し合うことで補完。そして、場面を見逃した視聴者にまで映像が届くとともに、これらを受けさらに放送が周知を図る(他局や新聞では本件を取り上げている)という流れだ。

 繰り返し言うが、著作権侵害にあたるYouTube問題は、国家レベルで推進を促している「放送・通信の融合」の負の一面であり、このまま容認し続けられる問題ではなかろう。しかし、今回のようにたまたま放送時に一部の視聴者が発見した社会的に重大と思われる問題点について、その証拠になり得る映像をネット上に掲載し、それがきっかけとなって社会に周知されるという補完関係を発揮できる一面もある。ここで示された放送と通信双方の補完関係における可能性の一面は、同じく無視できない事例として放送および通信事業は受け止めておくべきだろう。

 確かに、この問題には映像を加工して事実と反する情報をあたかも事実のように流してしまうことにもなりかねないという危険性はある。しかし、その危険性を考慮しても、放送と通信双方の補完関係により、これまで明るみにされなかった事実を掘り起こす可能性を秘めており、また、その可能性の有益さに人々は気づき、望んでいるのではないだろうか。

 TBS広報への確認時、「常識的に公開」とした広報担当者に対して「実際、2006年末の格闘技中継において違反行為の決定的瞬間映像(A選手が体に違反塗布物を塗っていたシーン)が公開されていないが」と問いかけたところ、「そうした事実は把握していない」と回答した。また、今回のケースにおける当該シーン公開予定についても「放送事故などのケースに収まるわけではなく、広報部としては把握していない」とした。

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