それを実現するために同社では、興味深い、独自の“ルール”を導入している。それは、役職や肩書きを自分で考え、公称できる制度だ。例えば、「エディタ」と呼ばれるコミュニティサービスの中心的開発者、石井泰輔氏の名刺には、「準匠」との肩書きが添えられている。
「入社時に、『役職は自分で決めて』といわれたので、“匠を目指す”という意味を込めて『準匠』としました。自分で名乗った以上、何としても“匠”を目指そう、という気になるし、名刺交換の際も、必ずといっていいほど聞かれるから、自分という人間を知ってもらういいキッカケにもなっています。もっとも、日々進歩する技術を完全に極めるのは不可能ですから、“準”の取れる日は永遠にこないでしょうけど(笑)」
この制度は、社内の、特にシステムグループのフラットで自由な雰囲気の象徴的存在だ。同社では、出社・退社時刻は特に決められておらず、タイムスケジュールは個々人に委ねられている。プロセスは問わず、ベストパフォーマンスを発揮することだけが求められるわけだ。逆にいえば、同社の社員たるには、自己管理能力と任務を着実に遂行する固い意志、やる気が不可欠の要素となる。
「以前は完全な“SI屋”でしたが、自分で考えたモノを自由に作れる同社の雰囲気に惹かれて入社しました。私は、自宅の方が開発がはかどるので、サイト管理や打ち合わせなどを会社で済ませ、午後は早めに帰宅して集中する、というパターンが多いですね」
そう語る高橋啓氏の現在の肩書きは、「クリエイティブデベロッパー」。自分で考え、自分で事業を作り上げたい、という願いが込められているという。
社員への信頼をベースに与えられる自由。社員の側からも、それに応えたい、という気持ちを強く感じる。オフィスの件といい、社員のモチベーションを高める同社の方針は、実に巧みだ。
「創業期と比べ、システムグループ各員が、中長期的な視点で事業展開を見通せるようになり、それと並行して、業務のスピードも格段にアップしました」と西田氏は述べるが、そうした成長には、それなりの理由があったわけだ。
氾濫する情報から、特定の切り口でコンテンツを収集、精査し、コンシューマーに提供する技術の需要は高まる一方だ。西田氏は、同社の現状をこう分析する。「対マーケティングの視野を持っている人材はある程度揃っているものの、ラボにこもってとことん開発にのめり込めるエンジニアは不足しています。弊社にとって、両者は不可欠ですから、今後、募集に力を入れたいですね」
作りたいモノがあるのに、それを実践できない、あるいは伝え切れていない技術者は多い。自由な開発環境で、かつコミュニケーション能力の高いエンジニアの集う同社なら、そうした “職人中の職人”タイプのエンジニアの能力を、これまで以上に引き出すことができるだろう。
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